自転車の交通違反の青切符による取り締まり、2026年4月に施行へ

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コラム

2025/5/26

警察庁は、道路交通法施行令の一部を改正する政令案を、2025年4月24日に公表しました。改正案には、自転車をはじめとする軽車両の交通違反に対し、交通反則通告制度(いわゆる青切符)による取り締まりを、2026年4月に施行する方針であることが示されました。

対象となる違反行為と反則金

対象となる主な違反行為を図表1、2iに示します。反則金は、既に自動車等の反則行為とされている違反行為については原動機付自転車と同一の額に、軽車両固有の違反行為については罰則が同程度である原動機付自転車の違反に対する額を参考に規定されています。

図表1 既に自動車等の反則行為とされている違反行為

図表2 軽車両に固有の違反行為

交通反則通告制度とはii

 交通反則通告制度とは、運転者がした一定の道路交通法違反(反則行為)について、その内容と反則金の納付を通告する制度です。警察官から反則告知を受けた運転者は、「交通反則告知書」と「納付書」が渡されます。「交通反則告知書」の色が青色であることから、「青切符」と呼ばれています。運転者は、一定期間内に反則金を納めなければ、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けることになります。現在の本制度の対象は、自動車と原動機付自転車(特定小型原動機付自転車を含む。)であり、自転車を含む軽車両は対象外となっています。

自転車を含む軽車両が対象となる背景

 自転車を含む軽車両が、交通反則通告制度の対象となる背景を二つ取り上げます。
 一つは、交通事故全体の件数が減少傾向にある中で、自転車関連の交通事故が増加傾向にあることです。図表3は、近年の自転車関連事故の件数と、全事故に占める自転車関連事故の割合の推移を示しています。これによると、自転車関連事故の割合は2017年から増加し、高止まりしていることが分かります。

図表3 自転車関連事故件数等の推移iii

 もう一つは、自転車が当事者となった死傷事故件数の約70%には、自転車側に何らかの法令違反が認められ、その割合が増加傾向にあることです。図表4は、近年の自転車関連の死傷事故において、自転車側になんらかの法令違反が認められた割合の推移を示しています。これによると、2021年から増加傾向に転じ、直近の2024年は2020年から5.6ポイント増加しています。

図表4 自転車関連事故で自転車側に何らかの法令違反があった割合iv

今後の動向と事業者に求められる対応

 以上の改正案について、警察庁は2025425日から2025524日まで意見募集(パブリックコメント)を行い、集まった意見を踏まえて改正内容を確定する見込みです。自転車を業務利用する事業者や、自転車通勤を認めている事業者、業務遂行のために自転車の運転が欠かせない業務委託先を持つ事業者は、運転者に対するルールの周知や安全教育の徹底が必要です。そのためには、改正案の施行に合わせ、安全教育計画の作成、必要な教材の準備や教育の担い手の確保、法令順守度合いや教育内容の浸透度合いをチェックし、取組効果を検証する仕組みや体制の構築が急がれます。

  

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 i 引用:e-govパブリックコメントHP 「道路交通法施行令の一部を改正する政令案等の概要」
 https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000292134
ii 出所:警視庁HP 「交通反則通告制度」 
 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/torishimari/tetsuzuki/tsukoku.html
iii 出所:警察庁 「令和6年中の交通事故の発生状況」 表1-2および表3-7-1を基に弊社作成
 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040249642&fileKind=4
iv  出所:警察庁 「令和6年中の交通事故の発生状況」 表3-7-2を基に弊社作成
 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040249642&fileKind=4

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執筆コンサルタントプロフィール

川上 啓一
運輸・モビリティ本部 主席研究員

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