BELSって何?~取り組む理由と申請方法~

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コラム

2025/4/4

本コラムでは、建築物省エネルギー性能の向上および不動産市場における適切な情報提供に資する制度の一つである、BELS(ベルス)について解説します。

昨今、パリ協定や2050年カーボンニュートラル等の目標実現に向けて環境負荷低減建築物が注目されています。 これは省エネルギー性能向上の重要度が増しているためであり、その背景として以下の3点が挙げられます。

  • 住宅・建築物は、国土交通省の統計における、日本のCO2排出量全体の3割を占める、割合の大きな分野である
  • 東日本大震災において、電力需給の逼迫に直面した
  • 国際情勢の変化におけるエネルギー価格の不安定化に伴うエネルギー・セキュリティの観点から、エネルギー自給の必要性と合わせてエネルギー消費量の削減が強く認識された

 さらに、ブランディングの面でも、2021年6月に金融庁と東京証券取引所により上場企業の非財務部門の開示が求められるようになりました。これに伴い、不動産賃貸業やCRE(Corporate Real Estate:企業不動産)、投資用不動産といった建築物の省エネルギー認証取得にも投資家の目が向くようになりました。BELSは、この代表的な認証の一つです。

図1 ※1

 BELSは、2013年に国土交通省よりガイドラインが発行され2014年に運用が始まった制度で、建築物省エネルギー性能表示制度(Building Energy-efficiency Labeling System)を指します。評価対象となる建築物は新築・既存を問わず、エネルギー消費性能を可視化して認証・等級を取得することで、所有者、利用者、投資家などに環境性能を表示することができるようになりました。

 この評価には、2015年に制定された建築物エネルギー消費性能の向上に関する法律(以下、建築物省エネ法)に基づく省エネ基準(建築物エネルギー消費性能基準によって規定)に準じた方法が採用されており、法令に基づいた届出書類等を活用して認証を受けることができます。2016年には建築物のエネルギー消費性能の表示に関する指針(平成28年国土交通省告示第489号)も公布され、建築物の販売または賃貸を行う事業者に努力義務を課しました。さらに、これまでは一定の規模・用途に限定されていた適合義務の範囲が建築物省エネ法の改正によって拡大し、2025年度以降に建築物を新築する際は建築物省エネ法によって規定された省エネ基準への適合が義務化されます(詳しくは『建築物省エネ法の改正~要点まとめ~』をご覧ください)。これによって、今後の新築の建築物は建築許可を受ける仕様でBELSの認証も受けることができます。

■評価方法

図2 申請・評価の流れ ※2

 BELSの認証取得は、上記図2の流れで行います。建築物の用途によって手法が異なり、非住宅用途(標準入力法、モデル建物法)、住宅用途から選択します。これらは建築物省エネ法における省エネルギー基準省令に規定されています。

 具体的な評価用の申請書は、図面等から必要な情報を収集・入力し、開口部、断熱仕様、設備仕様や個数といった評価項目を基に、建築物のBEI(Building Energy-Index)と呼ばれる建築物の省エネルギー性能を算出して、第三者機関からの認証および性能に基づいた等級を取得します。

【評価手法】

■非住宅用途 / 標準入力法
 対象建築物の詳細情報を入力し、室単位で床面積や設置設備機器等の情報を用いて評価を行う手法。精緻な評価が可能。

■非住宅用途 / モデル建物法(通常版・小規模版)
 標準入力法を簡略化したプログラム。同一用途の仮定モデルを想定してBEIを算出する方法で、評価対象建築物の詳細情報の入力項目が減るため、省力化が可能。評価精度は標準入力法より大まかになるものの、モデル化して想定して計算することから詳細が未決定の設計段階等を含めて評価が可能。

■住戸・住棟 / 住宅用プログラム(+標準入力法)
 共用部(非住宅の標準入力法と同様の手法)、住戸(住宅用プログラム)を併用する手法。住戸部分は室タイプごとに評価を行う、外皮性能基準の入力を行うといった追加項目がある。非住宅用途と比較して住戸タイプ別の多様な評価が必要となるため、住戸・住棟にモデル建物法は適用できない。

図3 評価手法イメージ図 ※3

【表示項目の概要】

ア. エネルギー消費性能(再生エネルギー考慮有あるいは無での多段階評価)
イ. 断熱性能(外皮性能)の多段階評価
ウ. 再エネ設備の有無
エ. 目安光熱費
オ. ZEB水準またはZEH水準
カ. 「ZEBマーク」に関する表示

設計一次エネルギー:対象建物の省エネ性能      
   基準一次エネルギー:同程度の建物の省エネ性能

 BEIは、国が定める省エネ基準からどの程度消費エネルギーを削減できているかを見る指標であり、BEIが低いほど比較対象より省エネルギー性能が高く(=省エネ性能ラベルにおける★も多く)、一定基準を満たした場合にZEB(ゼブ=net Zero Energy Building)、ZEH(ゼッチ=net Zero Energy House)といった呼称も用いられます(ZEB、ZEH等については別のコラムで掲載)。

■認証の取得・等級の表示

図4 省エネ性能ラベル(非住宅・再エネ設備あり・ZEB) ※4

 申請書類を提出し、第三者機関から評価書が発行されると、評価結果に合わせて図4の省エネ性能ラベルが発行され、対象建築物に表示することができます。なお、このラベルは2024年4月に表示制度が改正され、「住戸」、「住棟」、「非住宅」、「複合建築物」の用途ごとに再生エネルギー設備有無やZEB・ZEH水準等の仕様に合わせて14の様式となりました。

 省エネルギー性能の高い建築物とすることで、環境負荷の低減、経済性や利用者の住環境の向上といった効果が見込めます。また、建築物の環境認証を取得することで、利用者への省エネルギーの喚起、投資家への社会貢献アピール、テナント誘致のための営業ツールとしての利用といった効果も見込めます。 弊社では、BELS認証の代行業務(図2の「申請者」の代行業務)も実施しております。必要な資料をご提供いただくことで、性能評価、認証機関への提出および質疑対応を代行いたします。お問い合わせは東京海上ディーアール・不動産リスクソリューション本部・ESGユニットまで

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※1 住宅性能評価・表示協会「表示制度(BELS)チラシ一般消費者向け」より抜粋より引用
※2 住宅性能評価・表示協会「表示制度(BELS)チラシ事業者向け」より抜粋より引用
※3 国土交通省国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人建築研究所
「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)モデル建物法入力マニュアル」より抜粋
※4 国土交通省「建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度 事業者向け概要資料 第1版(2023年9月)」より引用

リンク
国土交通省:報道発表資料:建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の開始について - 国土交通省
住宅性能評価・表示協会:BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)について | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会

執筆コンサルタントプロフィール

小川 裕史郎
不動産リスクソリューション本部 主任研究員

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