建築物省エネ法の改正 ~要点まとめ~
- 不動産リスク
2025/4/4
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が近年改正され、より省エネ性能の高い建物が求められています。改正された内容の中で変化の大きなものについて解説します。
① 2024年4月施行 大規模非住宅建物の省エネ基準の引き上げ
2024年4月から延床面積が2,000㎡以上の非住宅建物について、省エネ基準値(BEI:Building Energy Index)が15~25%強化されました(増改築を行う建物については、増改築後に既存部分と増改築部分の合計延床面積が2,000㎡を超える場合に対象となります)。これにより、建物を新築・増改築する場合、これまで以上に省エネ性能の高い仕様が求められることとなります。
令和6年9月 国土交通省
『建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料P.63より図のみ抜粋 ※1
(BEIの概要は『BELSって何?~取り組む理由と申請方法~』をご覧ください)
② 2025年4月施行 省エネ適合義務対象の拡大
2025年4月から省エネ適合義務の対象が拡大されます。具体的には、これまでは中・大規模の非住宅建物について課されていた省エネ基準への適合義務が小規模非住宅および住宅にも拡大され、ほぼ全ての住宅・非住宅建物について、新築および増改築を行う際に省エネ基準への適合が必須となります。確認申請時に省エネ基準への適合(適合性判定)も合わせて審査されるため、省エネ適合通知書が無いと確認済証が交付されなくなりました。
国土交通省HP「令和4年度改正建築物省エネ法の概要」より図のみ抜粋 ※2
2025年4月に施行する内容については注意点と影響をまとめましたので、以下をご覧ください。
★注意点②-1 確認申請・着工スケジュールと対象建物
省エネ法適合義務の対象となる建物は、『2025年4月以降に着工する』建築物です。
3月末までに確認申請が完了していても、4月以降に着工する建物は新基準が対象となりますので、注意が必要です。
北海道建設部住宅局建築指導課HP
「改正建築基準法の施工に係る各取扱いについて」より図のみ抜粋 ※3
★注意点②-2 除外される建物
基本的には全ての建物が対象となると記載しましたが、以下については除外されます。
- 10㎡以下の建築物
- 居室を有しない、または、高い開放性を有することにより空調設備を設ける必要がない建物(例えば、車庫、駐輪場など)
★注意点②-3 増改築を実施する場合
10㎡を超える増改築を実施する場合は、増改築を行う部分について省エネ基準への適合が求められます(2025年3月までに増改築を実施する場合は、増改築部分を含めた建物全体の省エネ基準適合が求められていましたが、2025年4月以降は増築部分のみの適合で問題ないと変更が行われました)。
令和6年9月 国土交通省
『建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料P.61より図のみ抜粋 ※1
法改正の影響
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これまで届出義務や適合努力義務だった建物について、省エネ適合性判定を実施する必要が生じることから、建築主の費用負担が増大します。
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省エネ適合性判定が実施される建物が急増することにより、審査に要する時間が増える恐れがあります。
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設計者や施工者はこれまで以上に省エネ基準についての知識やスキルを求められることになります。
【参考文献】
※1 住宅:改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料とQ&A - 国土交通省
※2 住宅:令和4年度改正建築物省エネ法の概要 - 国土交通省
※3 改正建築基準法の施行に係る各取扱いについて(令和7年4月1日施行分) - 北海道建設部住宅局建築指導課
執筆コンサルタントプロフィール
- 川島 正博
- 不動産リスクソリューション本部 主席研究員