令和8年度診療報酬改定に伴う医療機関のBCP策定等に関する要件の整理と対応について

  • 事業継続 / BCP

コラム

2026/5/21

 令和8年6月1日に施行される診療報酬改定において、一部の施設基準や加算の要件に業務継続計画(以降、BCP)の策定等が新たに盛り込まれることとなりました。
 本稿では、追加されたBCPの策定等に関する要件を整理し、該当医療機関が実施すべき内容について解説します。

1.BCPの策定等の各要件について

 本章では、令和861日施行の診療報酬改定においてBCPの策定等が要件として追加された機能強化加算の届出を行っている保険医療機関、在宅療養支援診療所・病院の届出を行っている保険医療機関、救急外来医学管理料の届出をする保険医療機関のそれぞれについて、追加された要件の具体的な内容と経過措置を解説します。

①機能強化加算に関する施設基準の要件への追加
 かかりつけ医機能に係る体制整備を推進する観点から、機能強化加算(初診時に算定できる80点の加算)の施設基準に、BCPの策定等に関する要件が新たに追加されました。
 「保医発03057号 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」1において示されている施設基準のBCPの策定等の要件は以下のとおりです。

「医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き」等を参考に、医療機関の実情に応じて、災害等の発生時において、当該保険医療機関において患者に対する医療の提供を継続的に実施することを目指すこと、非常時の体制で早期の業務再開を図ること及び患者と職員の安全を確保すること等を目的とした計画(業務継続計画)を策定し、当該計画に従い必要な措置を講じること。また、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うこと。

 これにより、該当医療機関は、
·    BCPの策定
·    策定したBCPに従い必要な措置の実施
·    定期的なBCPの見直しと必要に応じた修正
が必要になります。
 また、BCPの策定の際は、
·    医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き2
等を参考に策定する必要があります。

 なお、令和8331日時点において現に機能強化加算の届出を行っている保険医療機関については、令和9531日までの間は、上記BCP要件を満たしているものとみなす経過措置が設けられています。そのため、令和9531日までにBCPの策定が必要となります。

②在宅療養支援診療所・病院の施設基準の要件への追加
 在宅療養支援診療所および在宅療養支援病院について、災害時における在宅患者への診療体制を確保する観点から、施設基準の要件が見直されました。
 「保医発03058号 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」3において示されている施設基準のBCPの策定等の要件は以下のとおりです。

「BCP策定の手引き」(厚生労働省在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業専門家委員会作成)等を参考に、当該保険医療機関の実情に応じて、災害等の発生時において、当該保険医療機関において在宅医療の提供を行う患者に対する医療の提供を継続的に実施することを目指すこと、非常時の体制で早期の業務再開を図ること及び患者と職員の安全を確保すること等を目的とした計画(以下この項において「業務継続計画」という。)を策定し、当該計画に従い必要な措置を講じること。また、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うこと。

 これにより、該当医療機関は、
·    BCPの策定
·    策定したBCPに従い必要な措置の実施
·    定期的なBCPの見直しと必要に応じた修正
が必要になります。
 また、BCPの策定の際は、
·    「BCP策定の手引き」(厚生労働省在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業専門家委員会作成)4
等を参考に策定する必要があります。
 なお、令和8年3月31日時点において現に在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院の届出を行っている保険医療機関については、令和9年5月31日までの間は、上記BCP要件を満たしているものとみなす経過措置が設けられています。そのため、令和9年5月31日までにBCPの策定が必要となります。

③救急外来医学管理料(新設)の要件
 救急医療機関における、夜間休日を含めた応需体制の構築及び地域の救急医療に関する取り組み等の現状から、院内トリアージ実施料及び夜間休日救急搬送医学管理料等が見直しされ、救急外来医学管理料が新設されました。
 「保医発0305第8号 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」において示されている救急外来医学管理料のうち、「救急搬送医学管理料1(800点)及び2(600点)、夜間休日救急医学管理料1(600点)及び2(400点)、救急外来医学管理料の注3に掲げる救急外来緊急検査対応加算1 (300点)及び2(200点)5」に関する施設基準のBCPの策定等の要件は以下のとおりです。

業務継続計画(BCP)を策定し、当該BCPに基づいた災害訓練を年1回以上実施していること。

 これにより、該当医療機関は、
·    BCPの策定
·    BCPに基づいた災害訓練の年1回以上の実施
が必要になります。
 また、BCPの策定の際に参考とすべき手引き等は指定されていません。
 なお、当該要件については、経過措置が設けられていないため、令和8年531日までにBCPの策定と訓練の実施が必要となります。

 上記をまとめると、以下の表のとおりとなります。

要件が追加等された
施設基準
必要なBCPの策定等
の要件
参考とすべき手引き等 経過措置
機能強化加算に関する施設基準

BCPの策定
・策定したBCPに従い必要な措置の実施
・定期的なBCPの見直しと必要に応じた修正

医療機関(災害拠点病院以外)における災害対応のためのBCP作成の手引き

あり

(令和9年5月31日まで)

在宅療養支援診療所・病院の施設基準

「BCP策定の手引き」(厚生労働省在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業専門家委員会作成)

救急搬送医学管理料1及び2
夜間休日救急医学管理料1及び2
救急外来医学管理料の注3に掲げる救急外来緊急検査対応加算1及び2に関する施設基準

BCPの策定
BCPに基づいた災害訓練の年1回以上の実施

なし

(令和8年5月31日まで)

     出典:当社作成

2.該当医療機関が対応すべきこと

 本章では、1章で解説した各要件を踏まえ、該当医療機関が具体的に取り組むべき対応について解説します。

①    BCPの策定
 BCPの策定にあたっては、各施設基準の要件にて参照することとしている手引きを参考にしながら、各医療機関の実情に応じた計画を作成することが求められます。BCPに記載すべき主な内容は以下のとおりです。
·    BCPの目的・基本方針
·    想定される災害と被災想定
·    災害時の対応体制
·    災害時に優先すべき業務と、資源に制約がある場合の対応方法
·    事前対策
·    BCPの運用
 これらの項目については、医療機関の規模や診療機能、地域の特性を踏まえた具体的な内容を盛り込むことが重要です。

②    策定した業務継続計画に従い必要な措置の実施
 BCPは策定するだけでなく、計画に記載した事前対策を実際に実施することが求められます。具体的な取り組みの例は以下のとおりです。
·    全職員がBCPの内容と自身の役割を理解できるよう、研修や説明会を実施すること
·    BCPで定めた備蓄品を適切に確保し、定期的に管理・更新すること
·    停電時においても医療提供が継続できるよう、非常用電源を設置すること
·    電子カルテ等のシステムについて定期的にバックアップを取得するとともに、紙媒体による代替手段を検討すること
·    近隣医療機関や行政との連携体制をあらかじめ構築しておくこと
 これらの取り組みについては、BCPに記載した内容と整合性を保ちながら、着実に実施していくことが重要です。

③    定期的なBCPの見直しと必要に応じた修正
 BCPは一度策定して完成するものではなく、医療機関の状況変化や教育・訓練・実災害での気づきや課題を反映しながら、継続的に改善していくことが重要です。見直しの際に確認すべき主な内容は以下のとおりです。
·    見直しの時期と担当者をあらかじめ定め、継続的な運用が確保されているか
·    組織体制や施設・設備の変更が反映されているか
·    備蓄品の状況・連絡先リスト・被災想定が最新の状態となっているか
·    国や自治体の指針・ガイドラインの改訂や診療報酬改定等により追加された新たな要件が反映されているか
 これらの項目については、少なくとも年1回以上の見直しを実施し、必要に応じてBCPの内容を修正することが重要です。

④    BCPに基づいた災害訓練の年1回以上の実施
 BCPに基づいた災害訓練を年1回以上実施することで、計画の実効性を検証するとともに、職員の対応能力を高めることが求められます。訓練において設定すべき主な内容は以下のとおりです。
·    訓練の目的と想定シナリオ
·    初動対応・避難誘導等の対応手順
·    トリアージの対応手順
·    関係機関への連絡・情報共有
·    ライフライン途絶時の代替手順による業務継続
·    訓練終了後の振り返りと、BCPへの反映
 これらの項目については、医療機関の規模や診療機能、地域の特性を踏まえた具体的な内容を設定することが重要です。また、近隣医療機関等と合同で訓練を実施することで、地域との連携体制の強化にも繋がります。

3.    おわりに

 BCPの策定は、単なる要件の充足にとどまらず、災害等の緊急事態においても患者への医療提供を継続し、地域医療を守るための重要な取り組みです。該当医療機関においては、必要な対応を速やかに進めるとともに、定期的な見直しや訓練を通じてBCPの実効性を高め、平時からの備えを着実に積み重ねていくことが必要です。
 本稿が、診療報酬改定におけるBCPの策定等に関する要件の理解と、該当医療機関における必要な対応を進めるうえでの一助となれば幸いです。

関連サービスページ

1 厚生労働省「保医発0305第7号 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」, https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698339.pdf,(最終閲覧日:2026/04/28).
2 厚生労働省「医療施設の災害対応のための事業継続計画(BCP)」, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/kenkyu_00001.html, (最終閲覧日:2026/04/28).
3 厚生労働省「保医発0305第8号 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」, https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697759.pdf, (最終閲覧日:2026/04/28).
4 厚生労働省「令和7年度在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業」, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72091.html, (最終閲覧日:2026/04/28).
5 救急外来医学管理料の注3に掲げる救急外来緊急検査対応加算1 (300点)または2(200点)は以下のとおり。(厚生労働省「1.個別改定項目について(令和8年2月13日)」, https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf, (最終閲覧日:2026/04/28)より以下引用)
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、当該患者に対して、診療に基づき検査、画像診断、処置又は注射を実施する必要性を認め、区分番号D006に掲げる出血・凝固検査、区分番号D007に掲げる血液化学検査、区分番号D011に掲げる免疫血液学的検査、区分番号D018に掲げる細菌培養同定検査、区分番号E200に掲げるコンピューター断層撮影(CT撮影)、区分番号E202に掲げる磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)、第6部第1節第1款注射実施料(区分番号G000に掲げる皮内、皮下及び筋肉内注射並びに区分番号G001に掲げる静脈内注射を除く。)又は第9部第1節処置料(J063に掲げる留置カテーテル設置、区分番号J119に掲げる消炎鎮痛等処置及び区分番号J119ー2に掲げる腰部又は胸部固定帯固定を除く。)を算定する場合は、当該基準に係る区分に従い、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
イ 救急外来緊急検査対応加算1 300点
ロ 救急外来緊急検査対応加算2 200点

執筆コンサルタントプロフィール

木勢 さくら
ビジネスリスク本部 主任研究員

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