育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法の改正ポイント②

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コラム

2024/12/20

 育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正され、2025年4月から段階的に施行されます。本コラムでは、改正のポイントを2回に分けてご紹介します。第1回は、一般事業主行動計画への数値目標設定、男性の育児休業取得状況の公表義務企業の拡大についてご説明しました(第1回はこちら)。第2回の本稿では、育児・介護休業法で企業に求められる仕事と育児の両立支援に関する措置についてご説明します。本改正により、就業規則の変更が必要になる場合もありますので、改めて自社の就業規則の見直しをお勧めします。

 

1~4は2025年4月1日施行

1.    子の看護休暇の見直し
 対象となる子の範囲が小学校3年生修了までに延長されるほか、感染症による学級閉鎖や入園式等も取得事由として認められるようになります。

改正内容 改正前

改正後

名称 子の看護休暇

子の看護休暇

対象となる子の範囲 小学校就学の始期に達するまで

小学校3年生修了まで

取得事由 病気・けが、予防接種・健康診断

左記に加え、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式を追加

労使協定の締結により除外できる労働者

(1) 引き続き雇用された期間が6か月未満

(2) 週の所定労働日数が2日以下

週の所定労働時間が2日以下(左記(1)を撤廃)

2.    所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
 改正育児・介護休業法の施行後は、小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定外労働時間を超えて労働させてはいけません。

改正内容 改正前

改正後

請求可能となる労働者の範囲の拡大

3歳に満たない子を養育する労働者

小学校就学前の子を養育する労働者

3.短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークを追加
 短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる具体的な業務があり、その業務に従事する労働者がいる場合にのみ、労使協定を締結し除外規定を設けた上で代替措置を講ずることができますが、その代替措置に、テレワークが追加になります。

改正内容 改正前

改正後

代替措置のメニューを追加

①     育児休業に関する制度に準ずる措置

②     始業時刻の変更等

左記①②に加え、

③     テレワーク 

4.育児のためのテレワーク導入
 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。

  

5,6は2025年10月1日施行

5.柔軟な働き方を実現するための措置
 事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの<選択して講ずべき措置>から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。措置の選択の際には、過半数組合等からの意見聴取の機会を設けることが求められています。
<選択して講ずべき措置>
①    始業時刻等の変更
②    テレワーク等(10日以上/月)
③    保育施設の設置運営等
④    就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
⑤    短時間勤務制度
 また、上記にて事業主が講じた措置について、3歳に満たない子を養育する労働者に対する個別の周知・意向確認が必要です。個別周知・意向確認は、子が3歳になるまでの適切な時期iに面談や書面交付等により行います。

 なお、労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。

6.仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮を事業主に義務付け
 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務付けられます。
●    意向聴取の方法は、面談や書面の交付等により行う必要があります。
●    労働者の意向に配慮する際は、例えば勤務時間帯・勤務地に係る配慮、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等について、自社の状況に応じて検討する必要があります。
 さらに、配慮に当たって、以下のような対応をすることも望ましいです。
 ・    子に障害がある場合で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を延長すること
 ・    ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数に配慮すること等

 本改正には、仕事と介護に関する措置も盛り込まれていますが、介護も含めたより詳細な内容は、厚生労働省のホームページをご覧ください。

 企業における仕事と育児の両立支援は、社員のワーク・ライフ・バランスの実現によるエンゲージメント向上や、女性活躍推進に寄与するものです。さらには、組織運営におけるリスクの軽減という重要な一面もあります。例えば、「男性は長期の育休を取らないから欠員が生じるリスクはない」といったアンコンシャスバイアスは、急な欠員に対応できない組織を作り出してしまいます。また、「育児中の女性には責任ある仕事は無理」といった過剰な配慮は、労働者のキャリア形成を阻害し、将来的には企業の人的資源の減少を招く可能性があります。職場全体で両立支援への理解を深めることにより、強い組織を作っていくことができます。
 法改正への対応に関して、企業のコンプライアンス遵守の姿勢が問われることはもちろんですが、両立支援を経営戦略ととらえ、ポジティブに取り組むことをお勧めします。

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i 令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和6年11月19日時点)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001325224.pdf
Q2-19~Q2-27

執筆コンサルタントプロフィール

柳川 美保
製品安全・環境本部 上級主任研究員、社会保険労務士、キャリアコンサルタント

コンサルタントの詳細

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