最低限知っておきたい感震器の知識【工場・大型施設】
- 自然災害
顧客・従業員の生命や建物・設備を地震から守るため、多くの施設に設置されているのが感震器(感震装置)です。感震器とは、地震の揺れを感知して電気やガス等の供給を遮断する装置であり、地震後の火災や漏電等、二次災害を防ぐ役割を果たしています。
一般家庭においても感震器は設置されますが、とりわけ工場や大型施設(高層ビル、ショッピングモール等)では、設備の用途や構内のレイアウトに応じて、適切な場所に適切な感震器を設置する必要があります。
感震器の設置場所や種類が適切でないと、必要な時に電気やガス等が遮断されないリスク、誤作動による設備の停止リスク等が大きくなります。
本コラムでは、感震器を設置すべき場所、感震器の種類・特徴および選定のポイントについてご紹介します。貴社が守りたいものに合わせた適切な感震器の選定にお役立てください。
【感震器の設置場所】
感震器の設置場所は「地震時、二次被害が発生する可能性のある場所」です。特に大地震時は避難により初期対応ができず、被害が大きくなる傾向があります。以下に二次被害の例を挙げます。
・ガス炉を使用している工場で被災。炉の火は止まったが、ガスが遮断されず漏洩し続け、電気設備の火花から引火し、火災が発生した。
・地震時の停電から復旧した際、倒れていたストーブに通電した。ストーブは可燃物の上に倒れており、引火し火災が発生した。
こういった二次被害を防ぐため、感震器を設置する場所の候補は以下のような箇所となります。
① 電気設備:電気の供給を遮断し、漏電を防止します。感震ブレーカーの設置が有効です。
② ユーティリティ:ボイラ等燃料を使用するユーティリティでは、燃料漏洩による火災を防止する役割を果たします。設備メーカーにより感震器が設置されている場合があります。
③ 危険物を使用する設備:危険物の供給を遮断し、漏洩を防止します。
④ 可燃性ガスを使用する設備:ガスの供給を遮断し、漏洩を防止します。都市ガスをご使用の場合、ガス供給元のマイコンメーターには、ガス会社により感震器が設置されていますが、供給先にも設置することで、更なるリスク低減が期待できます。なお、LPガス等都市ガス以外のガス配管は、法律による設置義務がありませんので、感震器は自主的に設置する必要があります。
⑤ エレベーター:建築基準法施行令第百二十九条により、設置が義務付けられています。
また、一箇所の感震器では被害防止が十分でない場合、供給元(一次側)と供給先(二次側)で二重に感震器を設置することも考えられます。例えばガスの供給元と供給先の装置が遠いケースでは、供給元を止めても配管内に残ったガスが供給先の装置に流れてしまうため、装置側でも供給を止めることが望ましいです。
【感震器の選定】
前章では感震器を設置すべき場所について述べました。では、どのような感震器を設置すればよいのでしょうか。本章では感震器選定時に重要な、センサーの種類についてご紹介します。設置場所の条件(電気が通っているか、振動が多いか)、求められる信頼性(確実性)、誤作動に対する許容度、設置の予算等により、設備の特徴に合った感震器をご設置ください。
〇がメリットとなりうる特徴、×がデメリットとなりうる特徴です。
感震器のセンサーには機械式、電気式の二種類があります。
機械式センサー 落球式、振り子式、磁力式等、機械的なセンサーが反応した際に感震器が作動します。価格の幅が広いのが特徴です。安価に設置したい場合や、屋外タンクや屋外ボンベ等、通電していない箇所で作動させたい場合に採用されることが多いです。 |
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〇 |
電気が通っていないエリア、または停電中も動作する |
安価に設置することができる |
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× |
センサーの種類によって検出しにくい方向がある ※落球式は落球でセンサーが反応するため、直下型地震を検知しにくくなります。また、振り子式は設置方向以外の揺れが検出しにくいなどの特徴があります。 |
自分で設置する場合は、設置ミスによる動作不良や誤作動リスクが高まる |
電気式センサー |
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〇
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3軸加速度センサーを採用したタイプでは、縦揺れ、横揺れでも検知が可能 |
感震器が作動するレベルを設定可能 |
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誤作動リスクが高い場所に採用可能 ※2 out of 3と呼ばれる1軸あたり3つのセンサーを搭載し、2つが反応した場合に遮断する型式のものがあります。この型式は誤作動が少なく、動作停止による損害の大きい業種でも検討可能です。 |
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初期微動に対応可能 |
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× |
停電中や電気の通っていない場所で動作しない |
電気工事が必要 |
【設置時の注意点】
・設置場所
誤作動防止のため、扉から離れた堅固な柱・床面・壁面等、振動の少ない場所に設置することをお勧めします。不意の接触を防ぐカバーも販売されています。
また、感震器には固有の共振周波数があり、これが設置場所の共振周波数と一致した場合は誤作動が増える恐れがあります。その際は設置場所を移動させるか、メーカーに相談することをお勧めします。
・定期点検の実施
感震器は定期点検が必要です。点検頻度と点検項目については、法律により規定が多岐にわたります。メーカーにご相談の上、定期点検を実施してください。
また、本体の作動試験に加え、感震器が作動してから設備を停止させる、インターロックの試験も重要です。法律での要求がない箇所においてもインターロック試験を実施することをお勧めします。
感震器は地震発生時の二次災害防止に大きな役割を果たします。適切な感震器を選定することで、貴社の地震対策がより良いものとなります。
本コラムが、貴社の安全活動・防災活動の一助となれば幸いです。
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執筆コンサルタントプロフィール
- 奥田 莞司
- 企業財産リスク第一ユニット 主任研究員