SSBJサステナビリティ開示基準の義務化は最短で2027年3月期の見通し。 適用対象の企業は、今から開示の準備を

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コラム

2024/6/7

 4月5日公開のコラム※1でお伝えした通り、サステナビリティ基準委員会(以下、「SSBJ」)による、サステナビリティ開示ユニバーサル基準及びサステナビリティ開示テーマ別基準の公開草案(一般開示基準案及び気候関連開示基準案(SSBJ基準案))が、2024年3月29日に公開されました※2
 今のところSSBJ基準案自体に強制力はありませんが、2025年3月末までを予定しているSSBJ基準案の最終化の動きと同時に、金融庁の金融審議会※3では、SSBJ基準の義務化に向けた検討が進められています。5月14日に開催された第2回の会合では、一部企業へのSSBJ基準義務化について、最短で2027年3月期というスケジュールが検討されています。

■ 時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業から徐々に適用対象の拡大を予定

 審議会では、プライム市場上場企業のうち、時価総額が大きい企業からSSBJ基準の義務化の適用対象を順次拡大することが検討されています。最短となるスケジュール案では、2027年3月期には、時価総額3兆円以上の企業が対象となり、翌2028年3月期には時価総額1兆円以上の企業へと対象が拡大されていく見通しです。最終的には2030年代を目途に、全てのプライム市場上場企業へ、適用を拡大することが提案されています。

■ 企業は義務化に先立ち、気候関連のリスク・機会の特定・評価・分析の準備を

 企業が長期にわたって持続可能な発展を継続していくためには、自社の重要課題(マテリアリティ)を特定し、気候変動が進む環境下において、それらがどのようなリスク・機会に遭遇し得るのかを考え、自社の戦略に反映していくことが重要となります。

  SSBJ基準およびそのベースとなっているISSB基準(国際サステナビリティ基準審議会によるIFRSサステナビリティ開示基準)は、企業が社会や環境から受ける財務的なインパクトを開示するシングル・マテリアリティの立場をとっています。

 マテリアリティが何であるかは、各企業で千差万別ですが、例えば製造業の場合には、気候変動下において、自社の製造拠点や事業が、気象災害リスクや原材料調達リスク等によってどのような影響を受け得るのか、それによる財務的な影響はどのくらいになるのかを評価・分析することが、開示に先立ち必要になります。

 推奨開示基準であったTCFDとは異なり、SSBJ基準では全ての要求事項に準拠することが原則的に求められることから、気候関連リスク・機会の特定・評価・分析を段階的に進めて開示に至るまでには、年単位の時間を要する場合もあります。このため、SSBJ基準義務化の適用対象となり得る企業においては、自社のサステナビリティ開示状況とSSBJ基準を照らし合わせることで追加対応が必要となる事項を特定するとともに、対応に時間を要する事項については開示に向けた準備を進めることが望まれます。

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※1 東京海上ディーアール株式会社 「サステナビリティ開示に関する基準草案の公開と対応について」、2024年4月5日
https://www.tokio-dr.jp/publication/column/110.html

※2 サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準の公開草案を公表」、2024年3月29日
https://www.ssb-j.jp/jp/domestic_standards/exposure_draft/y2024/2024-0329.html

※3 金融庁 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第2回)、2024年5月14日 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20240514.html

執筆コンサルタントプロフィール

坪井 淳子
企業財産本部 リスクソリューションユニット 主任研究員

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