物流関連2法が改正されました ―物流の2024年問題への対策の法制化―

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コラム

2024/6/3

物流関連2法(※1)の一部を改正する法律案が2024年4月26日に成立、同年5月15日に公布されました。今回の改正により、物流事業者(トラック事業者等)、荷主企業には物流効率化の取り組みが課され、一定規模以上の荷主企業は所定の対応が必要となり、違反した際は罰則が科されるようになりました。また、運送事業者には、役務の附帯業務内容を含めて契約書面が必須、協力会社へ下請けに出す場合は、2次下請けまでとする努力義務を課すこと等が盛り込まれました。

法改正の背景として、物流停滞が懸念される2024年問題があります。対策を講じなければ、輸送力は2024年度に約14%、2030年度には約34%不足するとの推計(※2)もあり、物流の担い手の確保等が喫緊の課題となっています。政府は、再配達を削減するような荷主・消費者の行動変容を促す取り組み、トラックGメンによる指導体制の強化や適正な運賃の収受、荷待時間短縮や多重下請構造是正等の商習慣の見直しを行い、運送事業者のみならず、荷主企業や一般消費者を含めて取り組みが必要であることを示しました(※3)。これらを法制化することで実効性を高めて対応すべく、物流関連2法の改正に至っています。

新物効法(※1)は、物流業界全体を効率化するための取り組みを、物流事業者、荷主の双方へ求めています。例として、パレットを用いた荷役時間の短縮、複数企業が協力して運送する共同配送等があげられます。また、一定規模以上の事業者(以下、『特定事業者』といいます。)には所管大臣による命令、罰則を含めた対処が可能になるなど、2024年問題への強い危機感と解決に向けた意思が感じ取れます。新物効法の主な改正ポイントは以下の通りです。

 1.貨物自動車運送事業者等(※4)、荷主(※5)は物流効率化へ取り組むこと(努力義務)
 2.特定事業者は中長期計画の作成、定期報告をすること(義務)
 3.取り組みが著しく不十分であるときは、荷主事業所管大臣が勧告、公表、命令を行うことができる
 4.特定事業者の荷主は、物流統括管理者を選任すること(義務)
 5.罰則として、特定事業者が命令に従わなかった場合等、100万円以下の罰金

また、新貨物事業法(※1)では、商習慣として暗黙的に行われてきた運送の附帯業務(積み下ろし等)、運送業界の構造的な問題である多重下請構造に言及しています。口頭約束で附帯業務を含めた業務内容を決めており、対価もあいまいなまま契約をしていた場合は注意が必要です。下請けは2次までにすることが努力義務になり、協力会社を含めて取引体制を見直す必要が出てきます。加えて、近年事故が増加している軽自動車等による貨物軽自動車運送事業に対して、管理者選任や定期講習が課されるなど、安全面の体制が不足していた場合は、改善が必要です。新貨物事業法の主な改正ポイントは以下のとおりです。

 1.運送契約において、役務内容や対価等(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む)について記載した書面を交付する(義務)
 2.運送事業者が運送を下請けに出す場合は、運送費用の概算額を把握した上で申し込む、運賃が概算額を下回る場合は、荷主へ交渉を申し出る、2次下請けまでに制限する(努力義務)
 3.下請けに出す輸送重量が一定規模以上の事業者は、管理規程を作成し、責任者を選任する(義務)
 4.元請事業者は、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿を作成する(義務)
 5.貨物軽自動車運送事業者は、事故報告や管理者選任等を行う(義務)

なお、これら法律は公布の日から原則1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行となっています(※6)。関係する荷主企業、運送事業者の皆様は、動向に注意が必要です。
国土において道路は血管、輸送/交通は血液に例えられます。血液が適切に体中を巡らなければ、酸素や栄養の供給、老廃物の回収ができずに健康な体は維持することができません。また、血液自体も健全である必要があります。物流に置き換えれば、輸送が滞り、物資が適切に届かなければ、企業活動や日常生活には大きな支障が生じるでしょう。その輸送主体が健全でなければ、いずれ負の影響が全体に広がっていくかもしれません。国民生活・経済を支える社会インフラとしての物流が、2024年問題に直面した中、法改正を踏まえて課題を乗り越え、健全に発展することを期待します。


※1 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(改正後は「物資の流通の効率化に関する法律」(本コラムでは『新物効法』といいます。))、貨物自動車運送事業法(本コラムでは『新貨物事業法』といいます。)。
※2 国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会最終取りまとめ」(2023年8月)
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000023.html
※3 物流革新に向けた政策パッケージ及び物流革新緊急パッケージ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/kettei.html
※4 新物効法で、一般貨物自動車運送事業者、特定貨物自動車運送事業者、貨物軽自動車運送事業者、特定第二種貨物利用運送事業者と定義されています。
※5 元請トラック事業者、利用運送事業者には、荷主に協力する努力義務が課されています。また、倉庫業者、連鎖化事業者(いわゆる、フランチャイズチェーン)の本部にも荷主に準ずる義務が課されています。
※6 新物効法において、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行う流通業務総合効率化事務に係る「出資」の業務追加は2024年6月1日から施行となります。また、新貨物事業法において、地方実施機関による荷主の違反原因行為の国土交通大臣への通知は2024年8月1日から施行となります。

 

 

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執筆コンサルタントプロフィール

田畑 要輔
運輸・モビリティ第二ユニット 上級主任研究員

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