人権への取組が企業評価につながる時代へ

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2019/12/23

 企業のESGの取組を投資判断に組み込むESG投資は近年一段と注目を集めています。そして、企業のESGの取組への評価にも大きな関心が寄せられています。企業の気候変動に対する取組(Enviromentの領域)を分析・評価するものとして、国際NGOであるCDP※1によるCDP気候変動レポート等が広く知られるようになっていますが、企業の人権に対する取組(Socialの領域)の評価にも高い関心が集まっています。

 「企業人権ベンチマーク(CHRB:Corporate Human Rights Benchmark)」は、英国の保険大手アビバ・インベスターズなどの機関投資家とNGOが設立した国際的なイニシアティブであり、2017年の試行に続いて2018年から企業の人権への取組を評価・採点し、その結果を公表しています。2019年11月15日に2019年の評価結果が公表され、今回は農業、アパレル、資源採取およびICT関連製造業を対象として時価総額上位企業の中から合計200社の企業が評価されました※2。日本企業も合計18社(2018年は2社)が評価されています。日本企業の評価結果の平均点は世界平均より低く、人権への対応が遅れている傾向が示されました。企業の人権に対する取組が可視化されるようになることで、今後、このような評価結果が投資判断に組み込まれる可能性も考えられます。

 日本企業において、人権問題への対応はこれまで、あまり身近なテーマとして取り上げられてきませんでしたが、海外の取引先における強制労働や児童労働等の他、長時間労働やハラスメントによる人権侵害等、直接的にも間接的にも無関係な問題ではありません。企業の人権に対する取組が企業評価に影響をもたらす今日、自社の企業活動における人権問題について、改めて調査するとともに、サプライチェーンを含めてしっかりと管理していくことが求められます。併せて、内外に向けて自社の人権に対する取組姿勢を明示し、説明責任を果たしていくことが重要になってきます。

 

※1 CDP:2000年に英国で設立したNGOであり、投資家・企業・都市・国家・地域が環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している。現在は「気候変動」「ウォーター(水)」「フォレスト(森林)」の3つを活動領域とし、質問書に回答した企業を評価している。

 

※2 2019年の評価結果は企業人権ベンチマーク(CHRB)のHPに公開されている。

https://www.corporatebenchmark.org/

執筆コンサルタントプロフィール

坪井 千香子
製品安全・環境本部 CSR・環境ユニット エキスパートコンサルタント

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