自然の状態(State of Nature)指標のフレームワークと測定ガイダンスが公表されました

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コラム

2026/10/26

2026年10月、Nature Positive Initiative(以下、「NPI」)が自然の状態(State of Nature)指標のフレームワーク※1と測定ガイダンス※2を公表しました。本コラムでは、フレームワークが公表された背景と、具体的な測定指標・基準や測定方法について解説します。

1.フレームワーク公表の背景

2022年12月、生物多様性条約締約国会議(COP15)にて「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年ミッションとして「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとること」、すなわちネイチャーポジティブが掲げられました。このネイチャーポジティブに向けて、企業においてはTaskforce on Nature-related Financial Disclosures(以下、「TNFD」)が策定したTNFD提言※3に沿った自然関連課題(依存・インパクト・リスク・機会)の評価・開示が進んでいます。自然関連課題の評価にあたっては、地域ごとの自然の状態の把握や、自然回復に対する取組の効果の測定を実施する必要がありますが、これまで自然の状態を測定するための統一された指標は存在せず、世界では600以上の様々な指標が採用されている状況でした。このような状況を踏まえ、NPIは自然の状態指標として4つの中核的指標を設定しました。これにより、一貫性・比較可能性のある形で自然の状態を測定できるようになり、自然関連課題の評価における信頼性の向上が期待されます。

2.4つの中核的指標とメトリクス

自然の状態指標は「生態系の範囲」、「生態系の状態」、「種の絶滅リスク」、「種の個体群」の4項目からなります(図1)。また各指標に関して、企業が直接的に管理をする「サイト」とサイトの周辺地域である「ランドスケープ・シースケープ」の2つの範囲を評価することが求められています。

図1 4つの中核的指標

出所:NPIの測定ガイダンス※2を基に弊社翻訳・一部改変

これらの指標について、NPIは具体的な測定基準(メトリクス)を定めています(図2)。このうち、ランドスケープ・シースケープにおける種の個体群は、可能な限り測定することが求められているものの、現状必要なデータが十分に整っておらず測定が難しい可能性が認識されています。

図2 各指標の測定基準

(灰色箇所は、可能な限り測定することが求められているものの、現状必要なデータが十分に整っておらず測定が難しい可能性が認識されている測定基準)
出所:NPIの測定ガイダンス※2を基に弊社翻訳・一部改変

3.測定方法

自然の状態を測定する際の準備として、①評価範囲の設定、②ベースラインの設定、③粒度レベルの選択、④データの収集、⑤生態系ベースマップの準備、⑥測定する種の優先順位付けの6つのステップがあります。

特に重要なステップは③粒度レベルの選択です。NPIは、自然の状態を測定する上で、3つの粒度レベル(準備段階、中程度、高度)を用意しています。それぞれのレベルにおいて必要なデータや要件があり、データの入手可能性等を踏まえて粒度レベルを選択する必要があります。将来的には粒度を高めていくことが求められており、準備段階の粒度レベルを採用する期間は理想的には最長2年とされています。サイトレベルでは中程度以上の粒度において、ランドスケープ・シースケープでは高度の粒度において現地検証が求められており、現地でデータを取得する必要性が高まっていることが考えられます。

6つのステップによる準備完了後は、各指標の測定基準について計算を行います。例えばサイトにおける生態系の範囲については、以下(図3)の式で算出され、生態系タイプの詳細度等によって粒度レベルが変化します。これらの計算には地理情報システム(GIS)の使用が必要であり、企業によっては新しい取組が必要になる可能性が想定されます。

図3 サイトにおける「生態系の範囲」指標値の算出式

出所:NPIの測定ガイダンス※2を基に弊社翻訳・一部改変

4.おわりに

TNFDは、2026年10月にTNFD提言およびLEAPガイダンスの改訂版※3、※6を公表しました。これらの資料では自然の状態指標に関する内容が更新され、グローバル中核開示指標として「生態系の範囲」、「生態系の状態」、「種の絶滅リスク」に関する具体的な測定基準が追加されました。企業は今後、TNFD提言に沿った評価・開示を実施する上で、自然の状態の把握が必須になることが想定される一方で、専門性の高いデータの収集やGISの活用等、ご担当者の負担も増えていくことが考えられます。東京海上ディーアールでは、自然の状態の把握を含む、企業のネイチャーポジティブに向けた取組に対するご支援を実施しています。

脚注

※1 Nature Positive Initiative, 2026, “State of Nature Indicators and Metrics”
https://www.naturepositive.org/app/uploads/2026/09/State-of-Nature-Indicators-and-Metrics-Framework.pdf
※2 Nature Positive Initiative, 2026, “Initial Measurement Guidance: State of Nature Metrics”
https://www.naturepositive.org/app/uploads/2026/09/Initial-Measurement-Guidance-v1.pdf
※3 TNFD, 2026, “Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures”
https://tnfd.global/wp-content/uploads/2023/08/Recommendations-of-the-TNFD_October-2026_WEB.pdf?v=1791830875
※4 対象地域がどのような種類の生態系に属するかを示した分類
※5 生態系の健全性を区分したランク
※6 TNFD, 2026, “Guidance on the identification and assessment of nature-related issues: The LEAP approach”
https://tnfd.global/wp-content/uploads/2023/08/TNFD-LEAP-Guidance-v2.0_WEB.pdf?v=1791832175
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執筆コンサルタントプロフィール

宇田川 理奈
ビジネスリスク本部 主任研究員

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