求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が義務化されます
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2026/5/22
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」の改正法施行により、2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下「求職者等セクハラ」)の防止措置が、すべての事業主に義務付けられます。これを受け、厚生労働省は「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「求職者等セクハラ防止指針」)を公表しました1,2 。同指針は、求職者等セクハラの防止に向けて、事業主が適切かつ効果的な取組を実施するうえで必要な事項を定めたものです。
本稿では、求職者等セクハラ防止指針の内容をもとに、求職者等セクハラの概要と事業主に求められる措置について紹介します。
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■ 求職者等セクハラの概要
求職者等セクハラ防止指針によると、求職者等セクハラとは「事業主が雇用する労働者による『性的な言動』により求職者等による求職活動等が阻害されるもの」をいい、各用語について次のように説明しています。
● 求職者等:求職者(企業の求人に応募する者)のほか、事業主の実施する労働者の採用に資する活動への参加者3 や、教育実習、看護実習その他の実習の参加者も含まれます。
● 求職活動等:求職者が行う求職活動や、求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動4 を指します。これにはSNS等のオンラインを介したもの・オンライン上で行われるものも対象に含まれます。
また、「性的な言動」の例として、次のような発言・行為が示されています。
● 性的な内容の発言:性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること 等
● 性的な行動:性的な関係を強要すること、必要なく身体に触れること、わいせつな図画を配布すること 等
■ 求職者等セクハラ防止のために事業主が講ずべき措置等
「求職者等セクハラ防止指針」には、事業主が講ずべき措置および実施することが望ましい取組が示されています(表1、表2を参照)。各措置の例や企業の取組事例については厚生労働省のウェブサイト「あかるい職場応援団」に掲載されている資料5 もご参照ください。
| 義務項目 | 措置内容 |
| 事業主の方針等の明確化 及びその周知・啓発 |
①求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する |
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②求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を、労働者に周知・啓発する |
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③求職活動等に関するルール(※)をあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・啓発する |
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| 相談体制の整備 |
④相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する |
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⑤相談窓口担当者(※)が、適切に対応できるようにする |
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| 事後の迅速かつ適切な対応 |
⑥事実関係を迅速かつ正確に確認する |
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⑦被害者に対する配慮のための措置を行う |
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⑧行為者に対する措置を適正に行う |
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⑨再発防止に向けた措置を講ずる |
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そのほか併せて講ずべき措置 |
⑩相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者及び求職者等に周知する |
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⑪労働者が事実関係の確認等に協力したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する |
| 取組項目 | 取組内容 |
| 実施することが望ましい取組 |
✓ 大学等のキャリアセンター等の求職者等の関係者から求職者等に対するセクシュアルハラスメントに係る相談に関する情報提供があった場合に、連携し、適切な対応を行うこと |
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✓ 求職者等から、インターンシップの際など、顧客等による求職者等に対するセクシュアルハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めること |
求職者等セクハラは、従前より事業主に対策が義務付けられていた職場におけるハラスメント(パワーハラスメント等)とは異なる点があります。従来の職場におけるハラスメントでは、ハラスメントの行為者と被害者がともに同じ企業に所属していることを主に想定していました。しかし、求職者等セクハラでは、行為者は企業に所属している者である一方、被害者は企業に所属していない者(求職者等)です。この違いから、従来のハラスメント対策に加え、求職者等セクハラ特有の取組も求められます。例えば、上表で列挙した取組のうち、求職活動等に関するルールの明確化や相談窓口の設置、およびその内容を求職者等へ周知すること等がこれに該当します(表1の措置内容③④)。
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2026年4月2日発信の弊社コラム『カスタマーハラスメント対策が法的義務に~「カスタマーハラスメント防止指針」で企業に義務付けられる取組とは~』にて解説したカスタマーハラスメントに関する事業主の講ずべき措置同様、本稿にて紹介した措置は法的義務です。2026年10月1日の改正法施行日までに体制整備が不十分な場合、企業のコンプライアンス違反に該当する可能性があります。また、自社の従業員等による求職者等セクハラが発生した場合には、被害者から損害賠償を請求されるリスクや、事案がニュース等で報道されることによって会社のブランド価値が毀損されるリスクも生じます。
法令対応にとどまらず、求職者等が安心して求職活動等を行える環境の整備は、企業の持続的な人材確保や事業継続・拡大にもつながります。そのためにも、まずは求職者等セクハラ防止指針や改正法の内容を確認したうえで、自社に不足している部分について取組を進めていくことをお勧めします。
2026年4月2日発信の弊社コラム『カスタマーハラスメント対策が法的義務に ~カスタマーハラスメント防止指針』で企業に義務付けられる取組とは~』にて解説したカスタマーハラスメントに関する事業主の講ずべき措置同様、本稿にて紹介した措置は法的義務です。2026年10月1日の改正法施行日までに体制整備が不十分な場合、企業のコンプライアンス違反に該当する可能性があります。また、自社の従業員等による求職者等セクハラが発生した場合には、被害者から損害賠償を請求されるリスクや、事案がニュース等で報道されることによって会社のブランド価値が毀損されるリスクも生じます。
法令対応にとどまらず、求職者等が安心して求職活動等を行える環境の整備は、企業の持続的な人材確保や事業継続・拡大にもつながります。そのためにも、まずは求職者等セクハラ防止指針や改正法の内容を確認したうえで、自社に不足している部分について取組を進めていくことをお勧めします。
1 厚生労働省 「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第52号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf
2 厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(リーフレット 詳細版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662580.pdf
3 「事業主の実施する労働者の採用に資する活動への参加者」とは、事業主が行う就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問(事業主の雇用する労働者への訪問をいう)等に参加する者が該当します。
出所:厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年4月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf
4「求職者が行う求職活動や、求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動」には、企業の採用面接・就職説明会・インターンシップ等への参加、OB・OG訪問、教育実習・看護実習等の実習の受講等が該当します。
出所:脚注3と同じ
5 厚生労働省のHP(あかるい職場応援団)「就活ハラスメント対策研修」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/assets/pdf/kensyu_2026/4_syukatsu_hara.pdf
執筆コンサルタントプロフィール
- 飯野 晶
- 製品安全・環境本部 上級主任研究員
