気候変動で高まる森林火災リスク
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2026/2/24
近年、世界各地で森林火災が頻発しており、企業活動や地域社会に深刻な影響を及ぼしています。2025年には、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス近郊や地中海沿岸の各地域で大規模な森林火災が発生したほか、国内でも岩手県大船渡市、愛媛県今治市で林野火災が発生しました。さらに韓国でも大規模な森林火災が同時発生するなど、各地で大きな被害が報告されています。こうした森林火災の増加の要因の一つとして気候変動による影響が指摘されており、今後さらに森林火災の頻度は増加していくと考えられています。
2025年の森林火災事例
2025年に発生した森林火災による被害の例を以下に示します。
- 2025年1月7日以降にアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した森林火災では、約16,000棟の建物が焼失し、合計で31人の死者が出ました[1]。焼失面積は約23,000haと推定され、被害額は2,000~3,000億ドルにも上るとされており、2018年に同州で発生したキャンプ火災以来の、甚大な被害をもたらした森林火災となりました[2,3]。
- 夏場には地中海沿岸の広い地域で森林火災が断続的に発生し、これによりスペインで393,079ha、ポルトガルで278,917ha、トルコで154,053haなど、広範囲の森林が消失しました[4]。
- 韓国では3月21日に大規模な森林火災が同時発生し、48,000ha以上が焼失、30人が死亡、4,000棟以上の建造物が焼失する甚大な被害をもたらしました[5]。
- 日本でも、2月26日に岩手県大船渡市で林野火災が発生しました。同市では過去60年間で最大規模の約2,900haが焼失したと推定されており、221棟の建物が被害を受けました[6]。これらの被害を受けて、国が復旧にかかる費用を支援する「激甚災害」に指定されています[7]。また、3月23日には愛媛県今治市でも県史上最大級の山火事が発生し、約442haが焼失し22棟の建物被害が発生しました[8]。
森林火災発生に影響する気象条件
森林火災の発生と拡大には、気温、湿度、降水量、風速などの気象条件が関係しています。高温・低湿度・低降水量の状態が続くと、土壌や草木の乾燥が進むことで発火しやすくなります。さらに、強風は火の粉を遠くまで運ぶことで火災の拡大を助長します。上述の2025年に発生した各森林火災事例についても、降水量が少なく土壌が非常に乾燥した状態であったことが報告されています。
これらの条件を総合的に評価する指標の一つとして、「火災気象指数(FWI:Fire Weather Index)」があります。FWIは気温、湿度、風速、降水量といった気象要素から、森林火災の燃料となる草木の乾燥度合いによる延焼のしやすさや、風による延焼拡大のしやすさを計算し、森林火災リスクを定量化する指標であり、火災リスクの評価や予測に活用されています[9]。

図1 2025年1月8日のロサンゼルス近郊におけるFWI(WWAより)
例として、図1はWWA(World Weather Attribution)によって解析された2025年1月8日のロサンゼルス近郊におけるFWIです[10]。FWIは20~30以上から森林火災リスクが高く、50以上の場合には危険度が非常に高いことを示しており[11]、火災発生時のロサンゼルス近郊は気象条件的に見ても発火・延焼しやすい状況にあったことが分かります。
森林火災と気候変動
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書[12]では、一部地域では森林火災の増加が人為起源の気候変動に起因していることが示されています。WRI(World Resources Institute、世界資源研究所)によると、年間に森林火災によって焼失した森林の面積が、この20年間で2倍以上増加しています[13]。

図2 2001年から2024年の火災と他の要因による森林消失面積。
茶色が火災による森林の消失面積、黄色が他の要因による消失面積、黒線は火災による消失面積の3年移動平均を示す(WRIより)
気候変動は以下のメカニズムで森林火災リスクを高めているとされています。
- 干ばつと熱波の増加:気候変動により降雨パターンが変化し、一部地域において雨が降らない期間が長期化・頻発化することで干ばつが発生しやすくなっています。また、異常な高温が長期間続く熱波の発生頻度も同様に増加傾向にあり、高温・低湿度・低降水量の状態が継続しやすくなります。これにより、森林火災の燃料となる草木の乾燥が進みやすくなり、発火・延焼のリスクが増加します。(気候変動による熱波への影響については、弊社コラム「温暖化で増加する熱波による世界各地での被害 ~ 熱波に関連する事業リスク」も合わせてご参照ください。)
- 火災シーズンの長期化:冬季の気温上昇による積雪量減少で、従来は雪に覆われていた森林も乾燥しやすくなり、火災リスクの高い期間(火災シーズン)が長引くと想定されています。北米西部や地中海沿岸では既に火災シーズンが延びているとも考えられており、1月のロサンゼルス近郊の森林火災の原因の一つとされています。
国連環境計画の報告によると、気候変動への対策を講じなければ2050年には世界の森林火災の頻度が約30%増加する可能性があるとされています[14]。気温上昇を一定程度抑えることができた場合でも、地域によっては森林火災リスクが顕著に高まると予測されており、企業の気候変動対策や適応計画において森林火災リスクへの対応が重要となっています。
企業への影響と対策
森林火災は企業活動に多面的な影響をもたらします。直接的な物的被害として施設の焼失・損壊リスクがあるほか、避難指示やインフラ寸断による事業中断、計画停電による操業停止、物流網の遮断、従業員の健康被害など、業種を問わず広範な経済活動に悪影響が生じます。
企業はこうした森林火災リスクに対し、ハード・ソフト両面から対策を講じる必要があります。ハード面では施設周囲の防火帯確保や建物の耐火構造化、ソフト面ではリスクアセスメントの実施やBCPへの森林火災シナリオの組み込みが重要です。
もちろん、すべての対策を実施することが現実的でない場合もあります。そのため、自社の事業特性や立地条件に応じて優先度の高い対策から段階的に実施し、同時に適切な保険でリスクを移転することも重要な戦略です。自社拠点の森林火災リスクを正確に把握することは、効果的な対策立案だけでなく、適切な保険選択やリスク移転戦略の構築にも直結します。
森林火災リスク定量化サービスのご案内
気候変動の進行により、これまで森林火災リスクが低いと考えられていた地域でも将来的にリスクが高まる可能性があります。弊社では、各地の現在・将来における森林火災リスクをFWIのような指標を用いて定量化し診断するサービスを提供しておりますので、ご興味のある方は関連サービスページをご覧ください。
脚注
執筆コンサルタントプロフィール
- 富岡 拓海
- 企業財産本部 研究員
