厚生労働省が職場におけるカスタマーハラスメント対策に関する指針(案)を公表

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コラム

2026/2/9

 近年、顧客等からの不当要求や、要求実現のための不当な言動といった「カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」とする)」が社会問題化しています。これを受けて、2025年6月4日には、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下、「労働施策総合推進法」とする)等の一部を改正する法律が国会にて可決・成立し、カスタマーハラスメント対策(以下、「カスハラ対策」とする)が同法に盛り込まれることとなりました。この改正労働施策総合推進法のうちカスハラ対策に関するものは、2026年10月1日に施行される予定とされています。
 同法は、カスハラ対策を事業主の「雇用管理上の措置義務」とすることを主な内容とするものですが、この度、厚生労働省より「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」(以下、「指針案」とする)※1として、事業主が具体的に講ずるべき措置等の指針案が発表されました。

【カスタマーハラスメントとは】

 指針案では、カスタマーハラスメントを「顧客、取引先、施設利用者等の言動で、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること」と定義しています。ここで重要なのは、顧客からの苦情すべてがカスハラではなく、「社会通念上許容される範囲を超えた」かどうかが判断基準となることです。
 カスハラに該当すると判断される具体的な言動は、性的要求やプライバシー侵害、契約内容を著しく超えるサービス要求、暴行・脅迫・土下座の強要、執拗な質問の繰り返し、長時間の居座り等が該当します。店舗での対面接客だけでなく、電話やSNS等インターネット上での行為も含まれます。

   

【事業主が講ずべき具体的措置】※1

指針案で事業主に対して示されているのは以下の事項です。

(1)    方針の明確化と周知・啓発
 事業主は、職場におけるカスハラに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければならない。

 ✓  職場におけるカスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
 ✓  職場におけるカスハラの内容及びあらかじめ定めた職場におけるカスハラへの対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知すること

(2)    相談体制の整備
  事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。

 ✓  相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
 ✓  相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
 ✓  被害者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるカスハラが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるカスハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること

(3)    迅速かつ適切な事後対応
 事業主は、職場におけるカスハラに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならない。

 ✓  事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること(必要に応じて他の事業主に事実関係の確認への協力を求めることも含む。)
 ✓  事実関係の確認の結果、職場におけるカスハラが確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
 ✓  改めて職場におけるカスハラに関する方針を周知・啓発し、必要な場合には、職場におけるカスハラの発生の原因や背景となった商品・サービス・接客等における問題や顧客等とのコミュニケーションの不足などの改善を図る等の再発防止に向けた措置を講ずること

(4)    抑止のための措置
 事業主は、職場におけるカスハラの抑止のための措置として、労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、当該方針において定めた対処を行うことができる体制を整備しなければならない。

(5)    プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
 事業主は、上記(1)から(4)までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければならない。

 ✓  相談への対応又は当該カスハラに係る事後の対応に当たっては、相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること
 ✓  労働者が職場におけるカスハラに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

指針案では、事業主が義務として行わなければならない上記(1)~(5)のほか、「職場におけるカスハラの原因や背景となる要因を解消するための取組」「必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること」等といった、事業主が行うことが望ましい取組内容も示されています。

 カスハラ対策を進めることは、自社の従業員を守り、モチベーションの向上や離職の防止に結びつく重要な取組です。まだ取組に踏み出せていない場合は、専門家等の助言を得たり、既に実践している企業の事例等を参考にしたりしながら、社内の体制構築に着手することが望まれます。

関連サービスページ

1 厚生労働省 労働政策審議会 雇用環境・均等分科会(第88回)資料3-4別紙「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」(20251210日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001608225.pdf

執筆コンサルタントプロフィール

丸茂 耕太
製品安全・環境本部 上級主任研究員

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