民法改正による損害賠償請求権の消滅時効の変更

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2019/11/1

2017年5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が、2020年4月から施行されます。この改正によって、損害賠償請求権の消滅時効期間が変更されます。

 具体的には、債務不履行に対する損害賠償請求権の消滅時効について、「権利行使できることを知った時(賠償請求権の発生を認識した時)から5年」という条件(短期消滅時効)が追加されたほか、人身傷害の場合は、「権利行使できるとき(履行期)から20年」に延ばされました。また、不法行為に対する損害賠償請求権について、「行為時から20年、損害・加害者を知った時から3年」というのは変わりませんが、後者が、人身傷害の場合は「損害・加害者を知った時から5年」に延びました。なお、本改正に併せて製造物責任法も改正され、その消滅時効が、製品の「引渡しから10年、損害・賠償義務者を知った時から3年」というのは変わりませんが、後者が、人身傷害の場合は「損害・賠償義務者を知った時から5年」となりました。民法改正後の損害賠償責任期間について下表に整理します。

 

 今回の改正により、総じて、人身傷害を発生させた場合の消滅時効期間が延びることとなります。被害者側にとっては権利保護が拡大され、加害者側にとっては賠償責任リスクが増すとも言えます。企業にとっては、自社の製品・サービスによる賠償責任リスクが増す一方、仕入先や外注先に対する求償の可能性が広がる側面もあります。自社の賠償責任リスク対策として、安全な製品やサービスを提供することは変わりませんが、製品や取引に関連する文書の保存期間を見直し・再整理することなどが求められます。

 今回の民法改正では、損害賠償責任に関して、上記の消滅時効期間だけでなく、法定利率も変更されます。本改正を契機に、自社の製品・サービスによる賠償責任リスクの評価・対策について、見直し・再整理をされてみてはいかがでしょうか。

執筆コンサルタントプロフィール

栁瀨 慶朗
製品安全・環境本部 エキスパートコンサルタント

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