使用済太陽光パネルの再資源化制度創設に向けた動向

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コラム

2025/3/31

 2030年代後半以降、使用済太陽光パネルの大量廃棄が発生すると予想されています1。政府は、その対応として、使用済太陽光パネルの再資源化を促進し、最終処分量を削減することが重要であるとして1、有識者による審議会2を設置し、再資源化に関する制度構築についての検討を進めてきました。
 2024年12月に審議会で整理された制度の基本的な方向性をまとめた、「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」3(以下、「制度方針」という)が公表され、パブリックコメントが実施されました4

 以下では、制度方針のポイントを紹介します5

●    再資源化の義務付け
 広域的に使用済太陽光パネルを引き受け、一定以上の水準での再資源化が可能な中間処理業者を認定する制度を創設し、当該制度の認定を受けた事業者に対して、使用済太陽光パネルの引き取り・再資源化の実施を義務付けることが想定されています。また、認定を受けた事業者に使用済太陽光パネルが確実に引き渡されるように、関係する各主体に対して、図1に記載の事項を求めることが検討されています。

図1 再資源化制度における関係者の役割

出典:資料※1p.1, 20)、 ※3を基に弊社作成

●    制度の対象
 制度の対象として想定されているのが、制度開始以降に廃棄物として排出される太陽光発電設備です。これには制度開始時点で、既に設置が完了している太陽光発電設備も含まれます。また、FIT/FIP制度※6の対象設備であるかどうかは問われません。制度対象となる太陽光発電設備のうち、再資源化義務の対象は、太陽光パネルに限定し、他の構成部材については義務の対象から除外することが検討されています。なお、太陽光パネルの種類によっては、費用や技術の面から再資源化が困難なものもあり、そうした太陽光パネルについては、そもそも制度の対象から除外される可能性が示されています。

●    費用
 太陽光パネルの適正処理・確実な再資源化実施のために、①解体等費用と②再資源化費用の2つの費用に関する仕組みを導入することが検討されています。費用と仕組みの概要は以下のとおりです。

①    解体等費用
・    太陽光パネルを含む、太陽光発電設備全体の解体・撤去・収集運搬・中間処理・埋立処分等の適正処理を実施するための費用
・    費用負担者として、太陽光発電設備の所有者を想定
・    費用が確実に解体等に充当されるように、設備所有者が第三者機関へ費用を預託し、解体等を実施した際に費用を受領できる仕組みが検討されている(再エネ特措法※7に基づく廃棄等費用積立制度の対象者については再資源化制度による預託を求めず、住宅用太陽光発電設備の所有者については預託の義務付けまではしないことを検討)

② 再資源化費用
・ 太陽光パネルの再資源化に要する費用(現状では再資源化のコストが埋立処分よりも高いため、再資源化の義務化により新たに発生する)
・ 費用の負担者は、太陽光パネルの製造者を想定。ただし、海外の事業者によって製造された太陽光パネルについては、輸入業者の負担となる
・ 再資源化費用の支払い・交付には、第三者機関を介することが検討されている

図2 費用の流れのイメージ

出典:資料※1p.1, 18)、※3を基に弊社作成

 以上のように、再資源化制度が導入されれば、再資源化を実施する事業者だけでなく、太陽光発電設備の所有者や太陽光パネルの製造者・輸入業者等にも影響が生じる可能性があります。報道によると、政府は2025年の通常国会での関連法案提出を目指しており※8、今後の動向に注意が必要です。

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※1:経済産業省・環境省「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)参考資料」(中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ合同会議(第9回)参考資料2)(環境省HP)
https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000300371.pdf(最終閲覧日:2025年3月28日)

※2:中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ 合同会議。各回の資料、議事録等については、
環境省HP(https://www.env.go.jp/council/03recycle/yoshi03-16.html)、
経済産業省HP(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/solar_power_generation/index.html)に掲載(最終閲覧日:2025年3月19日)。

3:中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ「太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)」(中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ合同会議(第9回)資料1)(環境省HPhttps://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000272490.pdf (最終閲覧日:2025328日)。

420241218日から2025116日に実施(環境省「『太陽光発電設備のリサイクル制度のあり方について(案)』に対する意見募集に寄せられた御意見の概要及び御意見に対する考え方(案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/solar_power_generation/pdf/009_02_00.pdf(最終閲覧日2025328日))。20253月に審議会でパブリックコメントの結果を踏まえた審議が実施され、報告書が公表されました(環境省HP「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」https://www.env.go.jp/council/03recycle/yoshi03-16.html (最終閲覧日2025328日)。

5:資料※1、※3のほか、経済産業省・環境省「太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度の論点について」(中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ合同会議(第6回)資料1)(環境省HPhttps://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000279427.pdf 参照(最終閲覧日:2025319日)。

6FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、「国が定める価格で一定期間、電力会社が買い取る制度」であり、FIP制度は「電力市場で電力を売ることを原則とし、その際、変動する市場価格を踏まえた(中略)補助額」を再生可能エネルギー発電事業者に交付する制度(資源エネルギー庁「FIT制度が変わります。」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2021_fip.pdf
)。いずれも再生可能エネルギーの導入拡大を目的とした制度(最終閲覧日:2025319日)。

7:「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」

8NHK「太陽光パネル リサイクル義務化の素案 環境省などの専門家会議」(20241217日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241217/k10014669571000.html (最終閲覧日2025319日)

執筆コンサルタントプロフィール

府川 りくか
製品安全・環境本部 サステナビリティユニット 研究員

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