工場や倉庫における大雪対策まとめ
- 自然災害
2024/12/25

1. はじめに
2024-25シーズンの降雪量は日本海側で平年並みまたは多い確率が40%と気象庁から発表されました(1)。そのため毎年、雪が多く降る地域に工場、倉庫などの事業所がある企業では例年以上に注意が必要です。また、寺田寅彦の言葉に「天災は忘れたころにやってくる」とありますが、あまり雪が降らない地域だからと安心しているときにこそ、大雪が発生して甚大な被害になる可能性があるため、安心するのは禁物です。本コラムでは、大雪による過去の被害を振り返りながら、事業所における大雪対策や除雪時の注意点についてご紹介します。
2. 大雪による過去の被害
過去にさかのぼると2020-21シーズンは大雪により顕著な被害が発生しています。この年は12月の中頃から1月上旬にかけて、日本付近に断続的に強い寒気が流れ込んだ影響で、日本海側を中心に記録的な大雪となった所がありました。この年の大雪などによる人的被害は死者110名、負傷者1,705名、住家被害は全壊・半壊・一部損壊を合わせて1,273棟に及んでいます。なお、死者の大半は除雪作業中の事故です(2)。
2014年2月の大雪では積雪後に降雨が発生したことで多くの建屋の屋根や庇が倒壊しました。このことから、大スパン・緩勾配の屋根を持つ建築物は積雪後の降雨を見込んで割り増した積雪荷重で構造計算するように建築基準法に基づく告示が改正されました(3)。
※大雪による建屋被害としては屋根の倒壊以外に「すが漏れ」というものがあります。すが漏れとは、屋根の上部の温かい部分で雪が解け、それが再凍結することで排水の妨げとなり、雪解け水が壁や天井から漏れ出すことをいいます。
3. 大雪前の対策
先に挙げたように時として人命や建屋に大きな被害をもたらす大雪について、事前対策をご紹介します。点検関係については日常的な自主点検パトロールへ組み入れることをお勧めします。
① 除雪資材の点検
除雪機が正常に運転することを確認します。また、ショベルなどの除雪資材に腐食がなく正常に使用できることを確認します。
② 建物の点検
柱や梁、屋根、庇に亀裂などの損傷がないか、構内の建屋を確認します。
③ 排水管の点検
構内の重要設備に接続している配管や人の往来がよくある場所の付近における配管に亀裂がないかを確認します。また、雨どいに落ち葉などが詰まっていないかを確認し、詰まっている場合には清掃します。
④ 重要素材・製品の移動
テント倉庫など積雪に対して脆弱な建物(大スパン、緩勾配(15度以下)、屋根板がRC造またはSRC造でないもの)内に保管しているものの内、生産上重要な材料や水濡れ、荷重に弱い製品を移動します。
⑤ 滑雪型フッ素樹脂塗料の塗布
屋根にフッ素樹脂塗料を塗布します。滑雪型フッ素樹脂塗料を塗布することで屋根へ積もった雪の滑雪効果を高め、積雪を防止します。
4. 除雪時の注意点
① 除雪が必要か確認する
雪の重さは雪の種類(新雪なのかざらめ雪なのかなど)により大きく異なり、1㎥あたりで30~500kgと大きく幅があります。
防災科学技術研究所では「雪おろシグナル」というサイトを公開しており、降り積もった雪の重さと危険度がリアルタイムで地図上に可視化されるため、除雪が必要かどうかを確認できます。
② 除雪の際はハーネスを使用し落下防止対策を徹底する。
③ 雪や氷が降ってけがをする可能性のある場所はコーンなどを置くことで立入を禁止する。
工場や倉庫などの事業所を複数管理している企業では、こうした大雪シーズン前の点検や安全管理の強化を本社が一斉指示しても、危機意識が薄い事業所が確実に対策せず、結果として事故に繋がっているケースがよくあります。弊社では自社に関連する事業所全体の安全管理の監督や指示の徹底、被害報告の迅速化を支援するサービスを提供しておりますので、ご興味のある方はサービスページをご覧ください。
(1) 気象庁、全国の季節予報、全国3か月予報(12月~2月)、https://www.jma.go.jp/bosai/season/#term=3month [2024年12月6日閲覧]
(2) 内閣府、今冬期の大雪等による被害状況等について、令和3年5月14日
(3) 国土交通省住宅局建築指導課、積雪後に雨が降ることを考慮した積雪荷重の強化について(告示改正)、平成29年12月25日
執筆コンサルタントプロフィール
- 松本 虎衛門
- 企業財産本部 研究員