防災チェックシートを活用した防災管理自立支援研修の開催 ~ディーラー店舗の従業員へ向けた実施事例のご紹介~
- 火災・爆発
- 自然災害
2024/9/10
昨今、"事故を起こさないように現場の従業員の防災レベルを高めたい"、"納入先から防災取り組みを求められているが、どのように教育すればよいか分からない"等のお悩みを持つお客様が増加しています。そのようなお客様の課題を解決するために、弊社では防災知識の習得を目的とした対話型の座学を実施後、受講者主体で施設の防災リスクを確認する現場トレーニングを行う「防災管理自立支援研修」を提供しています。(基本メニューの詳細内容はリンクよりご確認ください。)
本コラムでは、NTPグループのNTP名古屋トヨペット株式会社様向けに実施した事例を基に、従業員向け防災教育のポイントについて考えたいと思います。
1.研修の概要とスケジュール
今回の研修は、ディーラー店舗のマネジメント者である店長によって、高度な日常の防災活動が行われる体制を構築することを目的として開催致しました。本研修の実施概要とスケジュールは以下の通りです。

2.防災チェックシートの作成
本研修では、NTPグループ様で以前より使用されていた5S活動用のチェックシートに、弊社の着眼点を追加した独自の「防災チェックシート」を作成し、使用しました。本チェックシートは、自然災害(水災、風災、地震)、火災・爆発を対象リスクとし、約80項目のチェックポイントで構成されており、各リスクに対する『あるべき姿』を記載しています。チェックポイントの一例は、以下の通りです。『あるべき姿』を可能な限り明確化することで、受講者の方の各リスクに対する良否の判断が容易になり、かつ、整合が取れるようになります。


3.現地研修
〇防災知識向上セミナー
セミナーの冒頭では、ディーラー店舗での災害事例の紹介等を通じて、本研修の目的とNTPグループ様の想い(意義)をお伝えしました。これはどのような研修でも共通することですが、目的や課題意識が不明確なまま進めると、ただ研修を実施しただけで終わってしまいます。
また、弊社のお客様の中でも、責任者の方が自主点検チェックシート等を作成して、各担当者に配布した後、各担当者がチェックシートに沿って、チェックしているケースを多く拝見します。一方で、チェックシートの内容が十分に理解されないまま、誤ったチェック結果になっているケースが多いのも事実です。
この理由として、チェックシートの作成者と各担当者の防災レベルや知識にギャップがあることが挙げられます。
本セミナーの中では、今回作成した「防災チェックシート」の各チェックポイントについて、"どのようなリスクがあり、なぜそのチェックポイントを確認する必要があるのか"について重点的に説明しました。
防災教育等でチェックシートを活用する場合は、チェックシートの記載内容だけでは伝わり切らない点や注意すべき点を中心に説明を行うことで、チェックシートの作成者と受講者の間にある、『ギャップ』を埋めることがポイントとなります。

〇防災力向上実地トレーニング
実地トレーニングでは、防災チェックシートを見ながら、受講者の方と一緒に現地巡回を行い、セミナーで学んだ各チェックポイントのあるべき姿と現状とのギャップを具体的に確認しました。字面のみで理解するのではなく、現地現物で理解することで、あるべき姿をより具体的に理解することが出来ます。主な現地巡回箇所の例は、表3の通りです。


〇煙避難体験AR【1】による疑似避難体験
また、本研修ではオプションとして、煙避難体験ARを活用し、火災時に煙が充満した中での疑似避難を体験頂きました。受講者の方からは、"災害時には避難経路が不明でパニックに陥ることが体験できた"、"避難経路上に物を置かないこと等日常の5Sが重要であると実感した"等のお声を頂きました。


〇振り返り
振り返りでは、本研修を通して得た学びを、各受講者の方から2分程度で共有頂くとともに、講師である弊社コンサルタントが気付いた良い事例や改善点について解説しました。研修で学んだ内容を振り返りながら発表することで、知識やスキルを学ぶ必要性や理解が不足している部分が見えやすくなり、研修内容のより深い理解や定着率の向上につながります。

4.最後に
本コラムでは、実際の研修事例を基に、従業員向け防災教育のポイントについて考えてきました。皆様のご参考になれば幸甚です。
防災管理自立支援研修は、今回ご紹介したディーラー店舗の領域に制限されず、多様な業種、分野で、提供が可能となっています。詳細は、HP上部の「お問い合わせフォーム」からお問い合わせください。
(ご参考)
以下はNTPホールディングス株式会社様から頂いたご意見【2】です。
・チェックシートを活用し役割分担を決め、店舗全体で防災に取り組む体制づくりに努めたい
・現場で見て学んだことを自店舗へ持ち帰り、即時展開して店舗メンバーと共に改善に着手したい
・危険物の適切な管理方法、関連する法令まで学ぶことができ、大変有意義であった
・廃電池の廃棄場所などリスクが高いと学んだ箇所は、注意深く日常確認していきたい
・自動火災報知設備受信盤など設備の重要性を認識していなかったので、最優先で確認したい
※本研修は、"お客さまや地域社会に、感動や喜びを実感していただけるたくさんの「素敵」をお届けしたい"というNTPグループの強い想いと"お客様や社会の「いざ」をお守りする"という東京海上グループのパーパスに基づき、ディーラー店舗領域の災害を減らすという社会課題の解決のために実現したものです。NTP ホールディングス株式会社の監査室の皆様には、本研修の開催に向けて会場の設営、司会進行等積極的にご協力賜り、誠に感謝申し上げます。
【1】特許第6043408号のライセンスを受けた製品です
【2】 NTPグループ様によって集計されたアンケートや研修当日のお声に基づいています
執筆コンサルタントプロフィール
- 川端 隼人
- 企業財産本部 研究員