令和6年8月8日16時43分頃の日向灘の地震と南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について

  • 自然災害

コラム

2024/8/13

 2024年8月8日16時43分頃、日向灘を震源とするマグニチュード7.1(最大震度6弱)の大きな地震が発生しました。本コラムでは、この地震の概要や被害について、8/9 15時時点の情報をまとめます。

1.地震の概要
 2024年8月8日16時43分頃、日向灘を震源とするマグニチュード7.1(最大震度6弱)の大きな地震が発生しました。この地震により、九州地方の広い範囲で震度4以上の揺れに見舞われました(図1)。また、この地震の震源は、想定南海トラフ震源域の西端に位置しており(図2)、南海トラフ地震との関連性も心配されます。この地震の概況について、下表(表1)にまとめます。

a 長周期地震動階級は、高層ビル等の固有周期が長い物体に被害を与えうる、揺れの大きさの指標です。長周期地震動階級3は、一般的に立っていることが困難になるとされており、家具が移動・転倒する恐れがあるレベルの地震動です。

2.被害の概況
 本コラム執筆時点(8月9日15時00分)で参照できた被害状況は、以下のとおりです。なお、被害に関する情報は、伝達されるまでに時間を要する場合があるため、引き続き各所の発信を注視する必要があります。

 

3.南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について
 今回の地震は、南海トラフ地震の想定震源域の西端付近を震源としており(上記図2)、これを受けて気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表しました。南海トラフ沿いで発生する大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっており、今後7日間は、特に強い揺れや高い津波を生じる大規模地震に注意が必要です(ただし、7日以内に必ず強い地震が発生するというわけではない点は留意が必要です)。なお、臨時情報の運用は2019年から開始されましたが、発表は今回が初めてです。
 今回の「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」では、この地震が南海トラフ地震の想定震源域内における、陸のプレートとフィリピン海プレートの境界の一部が、ずれ動いたことによって発生したと評価されました。過去の世界中の大規模地震の統計データを解析すると、マグニチュード7以上の地震が発生した後に、マグニチュード8クラス以上の大規模地震が発生する確率は数百回に1回程度で、通常時に比べて数倍高くなっていることになります(気象庁HPviiより引用)。南海トラフ地震には様々なシナリオが考えられており、一部の領域だけに留まる場合もあれば、南海トラフ全域に及ぶ恐れもあります。仮に最大規模の地震が発生した場合は、関東以西の広い範囲で強い揺れや、太平洋沿岸で高い津波が想定されています。今後の政府や自治体等からの呼びかけに十分注意し、防災対応を取ってください。


【解説:南海トラフ地震臨時情報とは】
 現在の科学では、地震の発生を予知(「いつ」「どこで」「どの程度の規模」の地震が発生するかを予測)することはできません。そこで、現在分かっている範囲の情報を活用し、地震が起こる可能性を踏まえた検討・対応を進めることが重要です。内閣府や気象庁では、これまでにも日本国内で巨大地震が発生した場合の想定・対応について事前に検討を進めてきました。その中でも、気象庁が発表する「南海トラフ地震臨時情報」は、南海トラフ沿いで発生する巨大地震の発生可能性が疑われる場合に発表される情報です。情報発表条件は以下のように設定されています(気象庁HPviiiより引用)。
・    南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するかどうか調査を開始した場合、または調査を継続している場合
・    観測された異常な現象の調査結果を発表する場合

 気象庁では、南海トラフ地震臨時情報を発表後、有識者を中心とした「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の臨時会合を開催し、今後の対応について検討を行い、臨時情報を発表します(図3)。

 

4.日向灘で過去に発生した地震
 日向灘は、これまでも比較的大きな地震が活発に発生している地域です。下表に過去に発生したマグニチュード7以上の地震を示します。直近では40年前の1984年にマグニチュード7.1の地震が発生しており、津波やがけ崩れ等が観測されています。また、日向灘を震源とするマグニチュード6クラスの地震は、1996年1月から2024年8月7日までに計4回発生しています。このうち、直近の地震は2022年1月22日のマグニチュード6.6(最大震度5強・大分県と宮崎県)です。これより、今後も今回の地震に起因する地震活動に加えて、さらに大きな地震が周辺の領域で発生する可能性を考慮しておかなければいけません。

i 気象庁「推計震度分布」(2024年8月8日16時55分発表)、https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#8/33.011/128.199/&contents=estimated_intensity_map
ii 防災科学技術研究所「地震ハザードステーション J-SHIS」、https://www.j-shis.bosai.go.jp/
iii 気象庁「令和6年8月8日16時43分頃の日向灘の地震について」(2024年8月8日17時45分発表)、https://www.jma.go.jp/jma/press/2408/08b/202408081745.html
iv 国土交通省「宮崎県日向灘を震源とする地震による被害状況等について(第1報:2024年8月8日18時00分現在~第5報:2024年8月9日14時00分現在)」、https://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_240808.html
v 日南市、https://www.city.nichinan.lg.jp/index.html(最終アクセス:2024年8月8日11時00分)
vi 国土交通省「防災ポータル」、https://www.mlit.go.jp/river/bousai/bousai-portal/(最終アクセス:2024年8月8日11時00分)
vii 気象庁「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について」(2024年8月8日19時45分発表)、https://www.jma.go.jp/jma/press/2408/08e/NT_202408081945sv.pdf
viii 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件」、https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/info_criterion.html
ix 内閣府「南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!」、https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/rinji/index3.html
x 地震調査研究推進本部「日向灘」、https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kaiko/k27_hyuganada/

 

この記事に関連するサービスはこちら別ウィンドウで開きます

執筆コンサルタントプロフィール

山本 龍典 主任研究員、高橋 幸宏 研究員、小野 祐輝 研究員
企業財産本部

コラムトップへ戻る