WBAからソーシャル・ベンチマーク2024が発表されました

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コラム

2024/7/8

 2024年7月2日、SDGsへの企業の貢献を評価するための指標を開発するWorld Benchmarking Alliance(ワールド・ベンチマーキング・アライアンス。以下、WBA)※1がソーシャル・ベンチマーク2024※2の評価結果と企業のランキングを発表しました。ソーシャル・ベンチマーク2024では、人権、ディーセント・ワーク、倫理的行動の3分野について、18の評価指標(Core Social Indicator(CSI))を用いて、SDGsを達成するために最も影響力がある企業としてWBAが選定した2,000社(SDG2000)を対象に評価が行われています。2,000社には、80か国以上から、アパレル、自動車、金融、建設、資源採掘、食品、不動産、小売、輸送、インフラ等、様々なセクターの企業が選ばれています。

 20点満点評価における最高点は15.5点で、EDP、Glencore、Unilever、Yara Internationalの4社が獲得しています。日本企業の最高点は、ファーストリテイリング、花王、資生堂が獲得した12.5点で、味の素、アサヒグループホールディングスが11.5点でこれに続いています。なお、企業によって評価された時期に2021年から2024年までの開きがあり、ここ数年で取組みを進めた企業でも、評価された時期によって最新の取組結果が今回の評価とランキングに反映されていない可能性があります。

 全体の平均点は約4.5点でした。セクター別にみると、アパレル・フットウェア(6.5点)、ICT(5.9点)、小売(5.7点)等、消費者向けのセクターの平均点が高い傾向にあります。地域別の特徴としては、大洋州、欧州、北米に本社を置く企業が比較的高得点となっています。

 2,000社のうち約90%以上が10点未満、約30%以上の企業が2点未満であり、WBAは、多くの企業の取組みは不十分として、さらなる取組みを求めています。

図 ソーシャル・ベンチマーク2024対象企業のスコア分布

        出所:World Benchmarking Alliance 「Social Benchmark 2024 Insights Report」(2024年7月)より抜粋

  WBAはその他の主要な評価結果として、以下の内容を挙げています。

●     企業から影響を受ける、またはその可能性のあるステークホルダーとのエンゲージメントを行っている企業は、全ての指標で平均して優れたスコアを取得しているが、ステークホルダーとのエンゲージメントの事例を示している企業は、全体の9%のみである。
●     80%の企業が、人権デュー・ディリジェンスに関する3つの指標(人権リスクと影響の特定、評価、対応)において0点であり、満点の企業は6%に限られる。人権に係る規制のある国に拠点を置く企業は規制のない国に比べて平均で60%近く高いスコアを獲得している。
●     生活賃金と労働時間に関する指標の得点が低く、従業員に生活賃金を支払っている、または支払うことを約束している企業は4%、ILO(国際労働機関)の労働時間に関する基準を遵守している企業は3%にとどまる。
●    ロビー活動に関する方針を公表している企業は11%、ロビー活動の費用に関するデータを開示している企業は5%のみであり、透明性が欠如している。


 WBAでは、ソーシャル・ベンチマーク2024と並行して、採点ガイドライン(Scoring Guidelines)を公表しており、企業は各評価指標の採点方法について、より詳細な解説を得ることができるようになりました。次回の評価結果の発表は2年後の2026年に予定されています。企業によって実際に評価される時期は2026年よりも早い可能性がありますので、次回の評価までにスコアアップを目指す企業には、早めに取組みを進めることが望まれます。

※1:国連財団、イギリスの保険会社Aviva Investors、オランダのNGO Index Initiativeが、SDGsの達成に向けた企業の取組みを促進する目的で2018 年に設立。2019年にCHRB(Corporate Human Rights Benchmark)を吸収合併。SDGsへの企業の貢献を評価するための指標を開発しており、SDGsを達成するために主要な役割を担う世界の企業2,000社を評価対象としている(SDG2000)。7つの変革モデルをベースとした評価を実施し、社会的変革をその中心に据えるとともに、人権尊重を社会的変革の基礎とし、すべてのシステム変革の必要条件としている。
※2:ソーシャル・ベンチマーク2024のウェブページはこちら:
https://www.worldbenchmarkingalliance.org/research/2024-social-benchmark/ (最終閲覧日:2024年7月4日)

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執筆コンサルタントプロフィール

山田 真梨子
製品安全・環境本部 上級主任研究員

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