違法設置エレベーター -国交省フォローアップ調査-

  • 不動産リスク

2024/4/2

 違法設置エレベーターについて、ご存じでしょうか。違法設置エレベーターとは、建築基準法に基づく確認・検査を受けずに設置されたエレベーター・リフトのことを言い、2022年の調査では全国に3,304台が把握されています。多くは古い工場や倉庫において、建物竣工後に無届で設置されたもので、ほとんどが建築基準法の技術基準に適合していません。これまで88件の事故報告(1)があり、うち死亡事故:36件、重症事故:35件となっており、通常の「適法設置」のエレベーターと比べ、極めて高い確率で重大事故が発生しています。国交省は各都道府県を通じて、違法設置エレベーターの設置状況の把握、調査、是正指導を進め、フォローアップ調査(2)として公表しています。

 国交省フォローアップ調査によると、建築基準法違反が見られなかったエレベーター()は全体の5%ほどで、ほとんどが建築基準法の技術基準を満たしていないことが確認されています。行政による継続的な指導により是正台数()は増えていますが、パトロールや通報により、新たな違法設置エレベーターが把握され、全体数も増えているため、是正率(/(+))は50%程度に留まっています。2022年の指導中 () 1,590台の内訳は、使用停止:819台、当面の安全対策を行い稼働中:434台、是正計画提出済:509台(重複あり)となっています。

出典:国交省 違法設置エレベーター フォローアップ調査資料をもとに弊社作成

 エレベーターの安全性の確認方法としては、毎年、法定点検がホームエレベーターを除く全ての乗用エレベーターに義務付けられており、点検が実施・報告されると「定期検査報告済証」が交付され、エレベーターかご内等に通常提示されます。法定点検未実施の場合は、資格者による点検を受ける必要があります。
 なお、違法設置されたエレベーターであることが判明した場合は、事故が発生する確率が非常に高く、所有者・管理者の責任において、速やかに安全対策を行った上、所轄行政(建築指導課設備担当等)に連絡し、法令基準に適合しているか調査を受ける必要があります。
 弊社で実施しているエンジニアリングレポート(ER)の調査では、エレベーターの確認手続き、点検、違法設置と疑われるエレベーターの把握、注意喚起を含めた建物全般の遵法性調査等、建物の状況をトータルに調べる適正評価を行っています。


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(1) 国土交通省 特定行政庁より報告を受けた昇降機等事故の概要 (2023年7月28日)
(2) 国土交通省 建築基準法違反の疑いのある建築物等に係るフォローアップ調査について (2024年3月26日)

執筆コンサルタントプロフィール

飯井 幸弘
不動産リスクソリューション本部 ユニットリーダー

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