ライドシェアが2024年4月に条件付きで解禁されます

  • 交通リスク

2024/1/16

 2023年12月20日の第3回デジタル行財政改革会議※1において、日本政府はデジタル行財政改革中間とりまとめを公表し、第二種運転免許を持たない一般ドライバーが有償で顧客を送迎するライドシェアを2024年4月から条件付きで解禁する方針を明らかにしました。

 ライドシェアは、一般ドライバーが自家用車を使い、有償の旅客運送を行うサービスを指します。インバウンドによる海外観光客の増加やタクシー運転者の減少等の影響で、地域や時間帯によってはタクシーが不足する状況が発生していました。このような背景から、公共的かつ柔軟な移動手段として利用できるタクシーが不足し、その移動手段の供給を目的に、デジタル行財政改革会議においてライドシェアの議論が本格化し、条件付きではあるものの解禁時期が明確になるまでに至りました。

 一方で、現行制度では、タクシー事業の許可をもたない法人または個人による有償の送迎をいわゆる「白タク」行為として原則禁止しています※2。タクシー事業を許可制とすることで、免許や教育を含め運転者に高い技能を求めることができ、過当競争が抑制され、一定のサービスレベルが確保できるという点で、タクシー利用者及びタクシー会社双方にメリットがありました。ライドシェア解禁により、これまでのサービスレベルをどれだけ保つことができるかが、日本でライドシェアが定着できるかの分かれ目になるかもしれません。

 2024年4月のライドシェア条件付き解禁時は、タクシー会社が事業の一環として地域の自家用車とドライバーを活用して行うこととされています。タクシー配車アプリのデータを活用し、タクシーが不足している地域や期間、時間帯に限定して、ライドシェアが実施される条件付きの運用となります。また、タクシー会社がドライバーの教育や運行管理、車両整備管理等の安全確保を行い、運賃もタクシーと同じになるとみられ、運送責任もタクシー会社が負うとされています。タクシー会社にはドライバーに対し出発前の点呼や指導監督が義務付けられており、タクシー利用者側から見ると、安全面等において、現行のタクシーサービスと同様のレベルが確保されると想定されます。

 一方で、タクシー会社はライドシェアの運転者となる一般ドライバーへの影響も考慮する必要があります。旅客運送事業者には、交通事故の記録のみならず苦情に関する記録保存も法令で定められており※3、日本特有でもあるタクシー乗降時のドア対応等、接遇にも配慮した運送をドライバーに求めてきました。加えて、通常は乗客の素性がわからないまま同乗して運送を行うため、トラブル等によりドライバーに危険が及ぶ場合の対策も検討しなければなりません。このため、接遇面での啓発やドライバーの身を守る車両設備の導入等、運転を担うドライバーへの配慮も必要です。

 今後、ライドシェアは国土交通省において2024年3月までに詳細の制度設計を行い、4月から一部地域で実施する方針となっています。加えて、タクシー事業者以外がライドシェア事業を行うための法令制度について、2024年6月に向けて議論するとされています。業務効率化と安全性の維持・向上の両立を図り、ライドシェアによりドライバー不足を改善しつつ、ドライバーが働きやすい一形態として認知され、有効な制度として活用されることを期待します。

※1  https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi3/gijishidai3.html

※2 道路運送法第4条において「一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。」とされており、法人、個人を問わず無許可でタクシー事業を営むことを認めていません。

※3 旅客自動車運送事業運輸規則第3条において、タクシー事業者に苦情があった場合は、苦情の内容やその原因究明の結果等について、記録及び保存することが義務付けられています。

【参考】
弊社にてタクシー等の運送事業者向けに提供している点呼、教育関連のサービス例
運行管理支援AIロボット:https://www.tokio-dr.jp/transportmanagement_robotics/
WebstadR 指導・監督指針対応パッケージ:https://www.tokio-dr.jp/webstadr/

執筆コンサルタントプロフィール

田畑 要輔
運輸・モビリティ本部 上級主任研究員

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