ICT運行管理による運送業のミライ

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2022/8/23

 「2023年1月」は10年後の運送業のミライの姿を変えるターニングポイントかもしれません。これまで常識と考えていた仕事が、「あるコト」によってその姿を変え、運送業のコスト・人員配置・教育体制等を変えるきっかけになる可能性があります。

 2018年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)が成立、2019年の労働基準法の改正により時間外労働の上限規制が新たに設けられました。トラック・バス・タクシーのような自動車運転業務については、改正労働基準法施行の5年後(2024年4月以降)、臨時的特別な事情がある場合で年間960時間の時間外労働の上限規制が適用されることになりました。運送業における2024年問題と呼ばれています。一方で、この960時間の規制は自動車運転業務に主として従事する方(ドライバー)が対象であり、運行管理者等の運転業務が主ではない方は、全産業と同様に年間720時間の時間外労働上限規制となっています。長時間労働が常態化していた運送業界においては、ドライバーとともに管理者等の労働時間改善への取り組みが一層求められます。

 こうした状況も踏まえて、国土交通省では運行管理高度化検討会を設置し、運行管理業務の効率化を目指した各種検討を進めています。トピックの1つとして、情報通信技術(ICT)を用いて運行管理業務を無人化・省人化する取り組みが挙げられています。その中心的な役割を果たすのが、運送業における点呼業務※2を高度化する「遠隔点呼」と「自動点呼」です。

 遠隔点呼は、これまで優良性を認められた一部の営業所に認められたIT点呼※3の対象を拡大し、実施要領※4に記載されている要件を満たす機器を使用すれば、同一事業者の営業所等間や100%株式保有のグループ会社間において、ICT機器を使用した他営業所の運転者への点呼が可能となります。

 また、自動点呼は、これまで運行管理者等のヒトが実施していた点呼を、機器(ロボット)が一部または全てを代替するものです。2023年1月に予定されている終業時点呼の条件付き自動点呼解禁に向け、国土交通省令の改正内容や具体的な要領が2022年10月に国土交通省から周知予定です。深夜帯等で点呼待ちをしていた運行管理者等が、その業務から解放されるかもしれません。また、ロボット・ICT機器が得意とする抜け漏れのない記録保存により、法令遵守に関する信頼性が向上することも考えられます。

 ICTをうまく活用することで、ヒトは相互の感情理解を要する安全指導やコーチング、ロボットは偏りない情報提供やルールの周知等、それぞれが得意とする領域で職場内でのコミュニケーションを活性化させ、運送業の根幹である安全への取り組みが一層強化されることも考えられます。業務の効率化とともに安全最優先を両立できる運送事業者が、ミライを担う存在になるのではないでしょうか。

 

※1 公益社団法人全日本トラック協会『トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン(解説書)』を参考に弊社作成

※2 貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条、旅客自動車運送事業運輸規則第24条における点呼

※3 国土交通省が指定した機器を用いて、同一事業者の営業所-車庫間等で点呼が実施できる仕組み。一定の要件を満たす優良な営業所において実施が可能。

※4 遠隔点呼実施要領について(令和3年12月27日 国自安第137号、国自旅第393号、国自貨第91号)

※5 令和3年度第3回「運行管理高度化検討会」資料3より一部抜粋

 

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執筆コンサルタントプロフィール

田畑 要輔
運輸・モビリティ本部 主任研究員

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