災害救助法と災害時の企業に対する支援措置について

Tokio dR-EYE

2026/1/6

目次

  1. はじめに
  2. 自然災害の頻発化・激甚化
  3. 災害救助法の概要
  4. 災害時の企業に対する支援
  5. まとめ

災害救助法と災害時の企業に対する支援措置について - Tokio-dR EYEPDF

執筆コンサルタント

片田江 雄介
ビジネスリスク本部 主任研究員
専門分野:BCP

自然災害による被害が発生した際、被災者は災害救助法の適用により食料品や飲料水の供与や住宅の応急修理といった支援を受けることができるが、被災企業に対する支援は用意されていない。一方で災害救助法の適用をきっかけとして、様々な企業や団体が自主的な判断のもと、被災企業に対する支援措置を図っている。

本稿では、災害救助法の制度概要、適用基準や支援内容を解説し、災害救助法が適用された際に行われる可能性のある被災企業に対する支援策について紹介する。

1.はじめに

地震や台風等の自然災害により、大きな被害が発生、または発生が見込まれるとき、都道府県は各市町村に対して災害救助法の適用を決定する。過去は1年間に災害救助法の適用を受ける市町村数が30以下に留まることが多かったが、近年は増加傾向にあり年間100市町村を超えることが珍しくなく、特に2022年には延べ459もの市町村が災害救助法の適用を受けている。

2.自然災害の頻発化・激甚化

災害救助法の適用が増えている理由はいくつかあるが、背景の一つとして近年、自然災害が頻発化・激甚化していることが挙げられる。国土交通省の水害統計調査によると、2019年の水害被害額は約21,800億円と、年間被害額としては1961年以降過去最大となっている。また、年による被害額の差はあるものの、2004年以降の20年間を見ると直近10年間に被害額上位7年が集中するなど、自然災害による被害が増加傾向であることが分かる。

災害救助法は地震や台風等の災害が発生した際、または災害の発生が見込まれる際に、被災者の保護と社会秩序の保全を図ることを目的としており、災害救助法が適用されると被災者に対する保護措置として避難所の設置や食品、飲料水の提供等が講じられる。

2004年以降の10年間では、災害救助法の適用を受けた自治体数が延べ632市町村であるのに対して、2014年以降の10年間では1,596市町村と約2.5倍に増加している。2011年は東日本大震災が発生した年であるため、前後の年と比較すると適用数が非常に多くなっているが、近年は巨大地震の発生がなくとも適用が多くなっている(図表1)。

図表1 国内水害被害額と災害救助法が適用された市町村数の推移
出典:内閣府(https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_c15.pdf)、e-stat 水害統計調査(https://www.e-stat.go.jp/statistics/00600590)をもとに弊社作成

3.災害救助法の概要

災害救助法は、災害による被災者を救助、保護することを目的とした法律であり、都道府県知事が市町村単位で適用を決定することができる。

適用にあたっての基準は、大きく3つに分類される。

(1) 災害が発生し、住家被害が生じた場合(1~3号基準)
(2) 災害が発生し、生命・身体への危害またはそのおそれが生じた場合(4号基準)
(3) 災害が発生するおそれがある場合(おそれ適用)

「1~3号基準」は、災害の発生による住家被害が基準値に達していることが確認できなければ災害救助法を適用することができず、災害時の迅速な適用が困難な場合がある。そのため、詳細な被害状況が確認できなくとも、住家被害が1件でも発生していることを確認できれば適用できる「4号基準」に基づく適用事例が多く、近年は災害発生前の段階から適用できる「おそれ適用」による事例も増加している。 

災害救助法が適用されると、救助の実施主体が市町村から都道府県へ移り、市町村は都道府県から事務委任を受けた救助の実施主体となる。救助等に要した費用についても市町村の費用負担はなく、都道府県が最大50%を負担し、残りは国が負担することとなる。

図表2 災害救助法適用前後における各自治体の役割
出典:内閣府(https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_b2.pdf

災害救助法の救助項目は14項目にわたり、災害による被害に応じて救助が実施されている。

図表3 災害救助法の救助項目
救助項目 救助の概要
1. 避難所の設置 災害発生直後の避難生活の拠点として提供を行う。
2. 応急仮設住宅の供与 災害により住家が全壊するなど、住むところがなくなった場合に応急仮設住宅への入居を支援する。
3. 炊き出しその他による食品の給与 災害により食品の調達や調理等ができない場合に避難所で炊き出しや食料品の給与を行う。
4. 飲料水の給与 災害により飲料水を調達できない場合に避難所で飲料水の給与を行う。
5. 被服、寝具その他生活必需品の給与・貸与 住家の被害により被服、寝具その他生活必需品を失い、日常生活を送ることが困難な場合に生活必需品の給与・貸与を行う。
6. 医療・助産 災害により医療・助産を受けることができない被災者に対して診察、薬の提供、分娩の介助等を行う。
7. 被災者の救出 災害により命の危険、怪我の恐れがある被災者の捜索、救助を行う。
8. 福祉サービスの提供 災害による被害を受け、避難生活で配慮が必要な高齢者、障害者、乳幼児に対して提供を行う。

9. 住宅の応急修理
 (住家の被害の拡大を防止するための緊急の修理、
    日常生活に必要な最低限度の部分の修理)

災害による被害を受けた住家に対して、被害の拡大防止を目的とした応急処置や日常生活を送るための必要最小限の応急処置を行う。
10. 学用品の給与 災害による住家被害により学用品を調達できない学生に対して学用品の給与を行う。
11. 埋葬 遺族がいない、又は遺族が埋葬を行うことが困難な場合に埋葬を行う。
12. 死体の捜索 災害による被害を受け、死亡していることが推定される人の捜索を行う。
13. 死体の処理 遺体に対する洗浄、縫合、消毒等の処置を行う。
14. 障害物の除去 半壊、床上浸水した住家の内部または周辺にある土石等の障害物を自力で除去できない場合に支援を行う。

出典:内閣府(https://www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_b2.pdf)より弊社編集

救助期間は救助項目により異なっており、例えば「避難所の設置」は、一般基準では「通常災害発生日から7日以内」となっているが、東日本大震災の際には約9か月間続くなど、その時々の状況に応じた弾力的な運用がされている。

4.災害時の企業に対する支援

様々な形で支援を行う災害救助法だが、救助の対象は被災した個人となっており、被災した企業を対象とした救助項目は設けられていない。

しかし、災害が発生し、災害救助法が適用されたことをきっかけとして、行政機関や民間団体が被災した企業に対する支援を行うことがある。この支援は法律に基づくものではないため、災害救助法が適用された際に必ず実施されるわけではないが、被災による自社の損害を軽減し、復旧に向けた支援を受けることができる。

以下より、過去の事例をもとにした支援措置の例を紹介する。

(1) 経済産業省

  • 特別相談窓口の設置
  • 日本政策金融公庫や商工会議所等に特別相談窓口を設置する。
  • 災害復旧貸付等の実施
  • 災害による被害・影響を受けた中小企業・小規模事業者を対象に、日本政策金融公庫および商工組合中央金庫が運転資金、設備資金を融資する災害復旧貸付等を実施する。
    • セーフティネット保証4号の適用
    • 災害の影響により売上高等が減少している中小企業・小規模事業者を対象として、信用保証協会が一般保証とは別枠の限度額で融資額100%を保証するセーフティネット保証4号を適用する。
  • 既往債務の返済条件緩和等の対応
  • 日本政策金融公庫や商工組合中央金庫等に対して、災害による被害を受けた中小企業・小規模事業者の実情に応じた既往債務の条件変更等に応じるよう要請する。
  • 小規模企業共済災害時貸付の適用
  • 災害による被害を受けた小規模企業共済契約者に対し、中小企業基盤整備機構が原則として即日で低利で融資を行う災害時貸付を適用する。

(2) 銀行

  • 災害復旧に向けた融資の提供
  • 災害による被害を受けた企業を対象とした、災害復旧に向けた融資を提供する。

(3) 損害保険会社

  • 契約の継続手続きの猶予
  • 災害救助法の適用日から2か月後の末日までに満期となる保険契約を対象に、満期後でも災害救助法が適用された日から2か月後の末日までに継続手続きを行えば、契約が継続されたものとして取り扱う。
  • 保険料払込みの猶予
  • 災害救助法の適用日から2か月後の末日までに支払うべき保険料について、災害救助法の適用日から2か月後の末日を限度にその払込みを延期することができる。

(4) 生命保険会社

  • 保険料払込みの猶予
  • 保険料の支払い猶予期間を被災日から最長6か月間延長する。
  • 支払手続き事務の簡略化
  • 保険金の受け取り手続きにおいて、提出が必要な書類を一部省略するなど、簡易な手続きとする。

(5) 電力会社

  • 支払期日の1か月延長
  • 災害救助法の適用日以降となる数か月間の電気料金の支払期日を1か月延長する。
  • 不使用日の電気料金の減免
  • 被災日から一定期間までの間で、被災日以降継続して電気を使用しない場合、基本料金を1日ごとに一定割合で割引する。
  • 工事費負担金等相当額の免除
  • 被災地において、被災後一定期間経過後に再度電気の申し込みがされた場合、工事費負担金等相当額を免除する。
  • 被災により使用不可となった設備の基本料金の減免
  • 被災により電気設備が使用不可となった場合、電気設備が復旧するまでの間、当該電気設備分の基本料金を免除する。

(6) ガス会社

  • 支払期限日の延長
  • 災害救助法の適用日以降となるガス料金の支払期日を一定期間1か月延長する。
  • 不使用月の基本料金の免除
  • 被災日から一定期間までの間で、被災日以降継続してガスを使用しない場合、基本料金を免除する。

(7) 通信会社

【携帯電話関連】

  • 支払期限日の延長
  • 携帯電話等の使用料金の支払期限を1か月延長する。
    • 付属品の無償提供
    • 被災したことにより携帯電話の付属品を破損、故障、紛失等した際に電池パックやACアダプタ等を無償で提供する。
  • 購入時の特別割引の提供
  • 被災したことにより携帯電話を破損、故障、紛失等した際に、携帯電話機購入時の特別割引を実施する。
  • 手数料の無償化
  • 被災したことにより携帯電話を破損、故障、紛失等した際に、各手続きに伴う「契約事務手数料」等を無償化する。
  • 修理代金の減免
  • 被災したことにより携帯電話等を破損、故障等した際に、修理代金の一部減額や事務手数料の無料化等を実施する。
  • データ復旧サービスの減免
  • 被災したことにより携帯電話を破損、故障等した際に、データ復旧サービスの料金を減免して提供する。

-

【インターネット・固定電話関連】

  • 支払期限日の延長
  • インターネット利用料金の支払期限を1か月延長する。
  • 基本料金の減免
  • 災害に伴う避難等によりサービスの利用ができなかった場合に、サービス基本料金を減免する。
  • 移転工事費の減免
  • 被災により仮住居に転居する際のインターネットサービス利用のための移転工事料金を減免する。

(8) 各種メーカー(PC、複合機等)

  • 特別価格での修理
  • 災害により被災した商品を特別価格で修理する。

上述のとおり、これらの支援策は法律に基づくものではなく、社会貢献活動として各企業・団体の自主的な判断によって実施されるため、それぞれ支援措置を受けるための適用条件が設けられているほか、同じ業界であっても支援措置の実施の有無が分かれることや、支援措置の内容が異なることがある。また、同じ災害であっても業界によって支援措置の実施の有無が異なる可能性があることに注意が必要である。自社の取引先・契約先がこのような支援策を実施しているかは各社のホームページへアクセスし、お知らせ欄等で確認するとよい。

5.まとめ

本稿では、災害救助法の制度概要と、災害救助法が適用された際の民間企業に対する支援措置について紹介した。支援措置の適用により、各種支払の延期や減免等の猶予を受けることができる。

災害による被害を受けた際、事業継続に向けて必要な運転資金が増えることが見込まれる。BCPの観点から、自社がどのような支援措置を受けることができるのか確認し、有事の際に適切に対応ができるよう事前に準備することが望ましい。本稿が事業継続に向けた取り組みの参考となれば幸いである。

関連サービスページ

参考情報

執筆コンサルタント

片田江 雄介
ビジネスリスク本部 主任研究員
専門分野:BCP

PDFファイルダウンロード

災害救助法と災害時の企業に対する支援措置についてPDF

Tokio dR-EYEトップへ戻る