令和4年台風第14号の特徴と災害への備え
2022/9/21
令和4年台風第14号(アジア名称:ナンマドル(Nanmadol))は、2022年9月18日夜、鹿児島市付近に上陸しました。上陸時の中心気圧は935hPa(速報値)と、1951年以降の台風上陸記録の中では4番目の低さとなりました 。※1
本コラムではこの台風の特徴や被害の様相をまとめると共に、今後同様の災害に向けて考えられる企業の対策について紹介します。なお、本コラムは9月20日時点の情報に基づきます。
1.台風の概要
台風14号は2022年9月14日小笠原近海で発生し、18日19時ごろに「大型」で「非常に強い」勢力で鹿児島市付近に上陸しました。大分県佐伯市では、最大瞬間風速50.4m/s、佐賀県唐津市では44.1m/sを記録し、いずれも観測史上最大となりました。その後は徐々に勢力を弱めながら九州西側の陸上を北上し、19日午前に進路を北東に転じて速度を上げつつ再上陸を繰り返しました。このとき、暴風域の直径は500kmに及びんでいます。その後、20日午前に三陸沖で温帯低気圧に変わりました(図 1) 。※2
台風の中心が九州西側から中国地方の日本海側を進んだことから、主に九州の東側や中国地方の太平洋側が強雨・強風の中心となり、これらの地域の多くでは24時間の降雨が5年~100年に1度の降雨量となりました(図 2)。これに伴って17日には鹿児島県に暴風、波浪、高潮特別警報が発表されたほか、18日には宮崎県で大雨特別警報が発令されました。


2.被害の様相
国土交通省(20日12:00時点)によると、今回の台風によって太田川(広島県)や複数の都道府県管理河川で氾濫が生じました※4。消防庁(20日14:00時点)によると、死者・行方不明者3名、負傷者134名、住家の一部損壊90件、床上浸水3件、床下浸水17件となっています ※5また、九州地方(19日0:00時点)では一時約34万戸で停電が生じました※6。
令和元年東日本台風のような甚大な被害は20日時点で報告されていませんが、被害情報は報告に時間を要する場合もあるため、継続的な情報把握が求められます。
3.災害への備え
今回の台風では、近年水害に見舞われた箇所とは異なる地域が被害の中心となりました。このように、これまで被災経験のなかった地域であっても今後災害に見舞われる可能性は否定できません。こうした可能性に向けて、我々は常時からどのような情報を参照し備えるべきでしょうか。
今回懸念された水害に関して言えば、まずは100~200年(計画規模)や1000年(想定最大規模)の降雨を想定したハザードマップ(浸水想定区域図)を基に、命を守る方法を検討することが必要となります。一方、今回は降雨量が上述の規模に至らなかったにも関わらず、多くの河川において氾濫が懸念される事態となりました。このような場合に向けて、国は新たに「水害リスクマップ(浸水頻度図)」と呼ばれる情報の公開を進めています※7 。例えば、今回大分県では多くの地域で10年~30年に1度の降雨量となりましたが(図 1)、県内を流れる大分川水系の水害リスクマップ(図 2)では、今回と同程度の降雨であっても場合によっては広い範囲で浸水が起こり得ることが示唆されています。今後はハザードマップなどに基づく「最悪の事態」を想定することと同時に、こうした新しい情報も踏まえて、ハザードマップほどの規模ではないがより起こりやすい災害を想定した備えを検討することも重要です。

※1 国立情報学研究所,デジタル台風:2022年台風14号(ナンマドル|NANMADOL),http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/news/2022/TC2214/
※2 気象庁,台風位置表 令和4年台風第14号(台風2214号),https://www.data.jma.go.jp/yoho/data/typhoon/T2214.pdf
※3 防災科学技術研究所,防災クロスビュー:令和4年台風第14号,https://xview.bosai.go.jp/view/index.html?appid=61ccfd0a06c343db8ada6564845a1016
※4 国土交通省,台風第14号による被害状況等について(第5報)
※5 消防庁,令和4年台風第14号による被害及び消防機関等の対応状況(第6報)
※6 九州電力送配電,台風などの非常災害による停電情報(テキスト版)(アクセス日:2022年9月19日),https://www.kyuden.co.jp/td_emergency/pc/kyusyu.html
※7 現在(2022年9月時点)水害リスクマップの公表は少数の河川に留まりますが、国は2022年度中に全国の一級水系で作成を完了させる予定であるため、今後各地で公表が急速に進むと予想されます。
※8 大分河川国道事務所,多段階の浸水想定図・水害リスクマップ,http://www.qsr.mlit.go.jp/oita/bousai/sinnsui_risuku/index.html
執筆コンサルタントプロフィール
- 安嶋 大稀、大垣内 るみ
- 企業財産本部