“窓先空地”が変わった?(東京都建築安全条例 第19条改正)

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コラム

2026/10/30

東京都内に計画される共同住宅にとって、無視できない重要な規定である東京都建築安全条例(以下「都安条例」という)第19条が改正されました(施行:令和7年4月1日)。

 本コラムでは、いわゆる“窓先空地”(都安条例第19条)の見直し内容(改正概要)をご紹介します。

1.従来の第19条(窓先空地)とは?

従来の都安条例第19条は、共同住宅等(※1)の用途を対象とした東京都独自のルールであり、その目的は、「共同住宅等の居住環境の悪化を防ぎ、かつ、災害時の避難手段の確保を図るため」とされています。

【図】弊社作成

従来の都安条例第19条では、各住戸の1室を「7㎡以上の居室」とした上で、”採光・通風・避難”を確保するための「①道路に直接面する窓(第19条第1項二号イ)」又は「②窓先空地※2に直接面する窓(第19条第1項二号ロ)」を設けることが規定されています。

なお、道路に対して間口が小さく奥行きのある敷地等では「①道路に直接面する窓」が確保できない住戸ができるため、東京都内の共同住宅等のほとんどの場合で「②窓先空地に直接面する窓」が設けられています。

また、窓先空地は“採光・通風・避難”を期待する空地であることから、当該空地内に植栽や工作物、駐輪場、駐車場等の設置が認められていません。よって、窓先空地は竣工後も“空地”として維持し続けるように、物件の利用上・管理上も継続的な注意が必要となります。

【図】弊社作成

2.窓先空地の見直しとは?(改正概要)

前述の通り、従来の窓先空地は“採光・通風・避難”の3要素が期待されていましたが、“採光・通風”+“避難”の2つに分けて考えることを可能としたものが今回の見直し内容の主たる部分になります。

【図】弊社作成

本見直しにより、「避難階以外の階において、各住戸等から直通階段まで安全に避難できる避難経路(以下「代替の避難経路」という)」を別に確保することが可能になりました。これにより、従来の「窓先空地」ではなく、“採光・通風”のみを期待する「窓先の空間」とし、当該「窓先の空間」の下部(窓の下端より下)には工作物等の設置が、また植栽については高さに関わらず「窓先の空間」内への設置ができるようになりました。

なお、本見直しは、従来の“採光・通風・避難”の3要素を期待する「窓先空地」による規定は残したまま、新たに「窓先の空間+代替の避難経路」という手段を追加したものになります。

3.代替の避難経路とは?

代替の避難経路は、「各住戸等の避難上有効なバルコニー又は器具等から直通階段まで安全に避難できる経路」とされており、「屋内の場合」と「屋外の場合」のそれぞれの場合の要件が決められているため、順にご紹介します。

■屋内の場合(代替の避難経路)

屋内とする場合は、次の①~③に適合させる必要があります。

① 幅員1.2m以上であること

② 屋内の他の部分と区画(耐火構造の壁又は遮煙性能付き防火設備)されていること(※3)

③ 直通階段から道路等までを幅員2m以上(※住戸等の床面積の合計が200㎡以下:1.5m以上)の屋外通路とすること

  ※直通階段が屋内の廊下等を経由して屋外へ出る場合は、屋外通路(第19条)は不要

【注意】専有部(住戸やテナント、事務所等)は代替の避難経路とすることができない

屋内の場合の例(下図)では、各住戸から避難上有効なバルコニーを経由して、下階の屋内廊下等から屋内階段(直通階段)へ避難するものになります。

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

■屋外の場合(代替の避難経路)

屋外とする場合は、次の①~⑤に適合させる必要があります。

① 外気に開放された部分であること

② 屋外の代替の避難経路の床は耐火構造又は準耐火構造とすること

③ 通路幅は幅員60cm以上で、手摺等を設置すること

【注意】通路に門扉等を設置する場合は、開放時の有効幅員を60cm以上とする

【注意】通路に隔て板を設置する場合は、突き破り可能で有効幅員を60cm以上とする

④ 屋内部分と区画(耐火構造の床・壁又は遮煙性能付き防火設備)されていること

⑤ 直通階段から道路等までを幅員2m以上(※住戸等の床面積の合計が200㎡以下:1.5m以上)の屋外通路とすること

※直通階段が屋内の廊下等を経由して屋外へ出る場合は、屋外通路(第19条)は不要

屋外の場合の例(下図)では、各住戸から避難上有効なバルコニーを経由して、屋外通路等から屋外階段(直通階段)へ避難するものになります。

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

4.窓先の空間とは?

「窓先の空間」は、「代替の避難経路」を別途確保することにより、居住環境の悪化を防ぐために設ける“採光・通風”上有効な空間であり、窓先の空間に直接面する窓の下端より下部であれば、工作物や建築物等を設置することができます。

なお、植栽については、“採光・通風”に影響がないものとして、高さに関わらず「窓先の空間」内に設置が可能とされています。

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

【図】弊社作成

5.「窓先空地」・「窓先の空間」の幅員算定方法の見直し(第19条第5項)

本改正では、「窓先空地」の幅員の算定方法の変更に加え、「窓先の空間」の幅員の算定方法、「窓先空地」と「窓先の空間」を併用する場合の考え方について規定されたため、順にご紹介します。

■「窓先空地」及び「窓先空地からの屋外通路(第2項)」の幅員算定方法の変更

下記の通り、変更後の算定方法では算定対象とする住戸等を分割して考えることが可能となるため、物件によっては窓先空地の幅員を小さくすることが可能となります。

【変更前】:原則すべての住戸等の床面積による(道路に直接面する窓のある住戸は除く)

※下図:「A~C+E~G」の位置の全ての住戸が対象

【変更後】:当該窓先空地に直接面する窓を有する住戸等及び当該窓先空地と屋外通路により接続する窓先空地に直接面する窓を有する住戸等の床面積による

※下図:左側は「A~C」の位置の住戸が対象、右側は「E~G」の位置の住戸が対象

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

■「窓先の空間」及び「直通階段からの屋外通路(第4項)」の幅員算定方法

「窓先の空間」及び「直通階段からの屋外通路」の算定方法については、原則は、「すべての窓先の空間に直接面する窓を有する住戸等の床面積の合計により算出すること」とされていますが、“明らかに採光・通風上関係性がない窓先の空間”が有る場合は、分割して算定することが可能となります。

下図のように、左側と右側に分かれている場合は判断が容易ですが、敷地形状や建物形状が不整形の場合は、“明らかに採光・通風上関係性がない窓先の空間”の範囲は所管の特定行政庁と協議することが望ましいと考えます。

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

■「窓先空地」と「窓先の空間」を併用する場合の算定方法

下図のように、平面的に「窓先空地」に面する住戸部分と「窓先の空間」に面する住戸部分が分かれている場合については、それぞれの空地・空間が背負う住戸等の床面積の合計によって算出します。

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

また、下図のように、1,2階住戸は「窓先空地」に面しているが、3~5階住戸は「窓先の空間」に面しているという場合については、下記のように算定することになります。

【1,2階】:「窓先空地」及び「窓先空地からの屋外通路(第2項)の幅員算定

⇒1~5階の住戸等の床面積の合計により算定

※1,2階住戸のための「窓先空地」ではあるものの、3~5階住戸の窓も「窓先空地」に面する窓に該当するため、3~5階部分も考慮する必要があります。

【3~5階】:「窓先の空間」及び「直通階段からの屋外通路(第4項)」の幅員算定

⇒3~5階の住戸等の床面積の合計により算定

【図】東京都都市整備局HP(東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言))より引用

6.まとめ

本改正により、共同住宅+店舗(低層階)等の新築計画においては、避難階地上部の自由度が高まるため、「窓先の空間+代替の避難経路」による計画が増えていくものと考えられます。ただし、「窓先の空間+代替の避難経路」は避難階に適用ができない規定であるため、従来の「窓先空地」は、今後も東京都内の共同住宅等にとっては切っても切れない関係になりそうです。

また、既存建築物に対する「窓先の空間+代替の避難経路」適用については、代替の避難経路の確保が困難であるため、ハードルが高いものと思われます。しかしながら、本改正内容のうちの「窓先空地の幅員算定方法(都安条例第19条第5項+技術的助言)」については、緩和方向の変更点であるため、既存建築物の不適合状態の救済となり得るものと思います。なお、既存建築物への見直し内容(改正内容)は適用可能とされていますが、必要に応じて所管の特定行政庁との協議が必要となります。

弊社では、法人のお客様向けに物件の遵法性調査を実施しておりますので、お気軽にお問合せ下さい。

<補足>

※1:共同住宅等:都安条例第9条に定められている「共同住宅、寄宿舎又は下宿」に加え、都安条例第73条にて準用することが規定されている「児童福祉施設等(居住若しくは寄宿の用に供する老人ホーム、母子生活支援施設等に限る)」を含む用途

※2:窓先空地:下表により住戸等の床面積の合計に応じて定められた幅員以上の「通路その他の避難上有効な空地」又は「特別避難階段若しくは地上に通ずる90cm以上の専用の屋外階段に避難上有効に連絡する下階の屋上部分」

【表】弊社作成

※3:屋内の代替避難経路に、「①スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの」及び「②令第126条の3の規定に適合する排煙設備」を設け、「③壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料」とした場合で、避難上支障がないものとなる部分についてはこの限りではない。ただし、当該措置の範囲については、防火区画された範囲が対象となるため、注意が必要である。

<参考文献>

・東京都建築安全条例とその解説(改訂三十六版)・一般社団法人東京建築士会発行:書籍

・東京都建築安全条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言):東京都都市整備局HP

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/2025-03-31-114139-462

・東京都建築安全条例第19条の運用の明確化について(技術的助言):東京都都市整備局HP

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_topics_h30_pdf_topi022_topi022_4

・「東京都建築安全条例の見直しの考え方(案)」への意見募集結果:東京都都市整備局HP

https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/07_01_585

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執筆コンサルタントプロフィール

澁谷 和馬
不動産リスクソリューション本部 上級主任研究員

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