ロードキル(動物との衝突)のリスク ~ドライバーが知っておきたい いつ・どこで・どう防ぐか~

  • 交通リスク

コラム

2026/6/30

はじめに

薄暗い山道や早朝の自動車専用道路、出勤・帰宅時の市街地の道路等で、突然動物が道路を横切ることがあります。気付いたときには避けようがなく、「動物と衝突」という事態に至ることも少なくありません。

このような車と動物の衝突事故は「ロードキル」と呼ばれ、国内で毎年多数発生し、自動車走行上の安全性や道路管理上の問題となっているほか、近年では動物・自然生態系の保全の観点からも問題視されています1

国土交通省の統計によると、年間のロードキル件数は、国道で7.6万件、高速道路で5.1万件にのぼります(図1)。ロードキルは車両損害のみに留まらず、死亡・重傷等の重大事故につながるおそれもあります。

本稿では、動物との衝突リスクが高まる時期・時間帯・場所を整理し、その対応策をまとめます。

図1 ロードキル発生状況(2024年度)※2より弊社作成

 いつが危ないのか <季節や時期の傾向>

(1)発生頻度のピーク

ロードキル自体は一年中発生しますが、発生頻度が高まる季節があります。野生動物の活動が活発になる初夏や秋です。これは、餌を求めて移動範囲が広がることや繁殖・子育ての時期が重なること等が主な要因と考えられます。

(2)地域ごとに異なる「危ない季節」

生息する動物の種類によって、危険な時期が異なる点にも注意が必要です。タヌキ、シカ、イノシシ等、動物それぞれに異なる繁殖期や独り立ちの時期があり、その前後に移動が増加します。一概に「この月が危ない」とは言えませんが、地域に生息する動物の行動パターンを踏まえ、繁殖期や分散期(独り立ちの時期)に注意することが重要です。

2 何時頃が危ないのか <リスクが高まる時間帯>

(1)薄暮の時間帯は要注意

警察庁は、夕方の薄暮の時間帯を「事故が最も多く発生する時間帯」として注意喚起しています。動物との衝突も例外ではありません。野生動物の多くは日没前後に行動が活発になり、道路を横切るなどの行動が増えます。ドライバーの視認性・視界が悪化する時間帯と重なるため、ロードキルが発生しやすくなります。

(2)それ以外で注意したい時間帯

また、次の点にも注意が必要です。例えば、シカは本来、日出前と日没直後に活動的になる薄明薄暮性の動物ですが、人間を避けるため夜間にも広く活動する傾向があり、夜間の衝突も多くなっています3

さらに早朝は、ドライバーの眠気や焦りにより、周囲への注意力が低下しがちな時間帯です。このため、動物が飛び出した際、発見からブレーキまでの反応に遅れが生じやすく、衝突のリスクが高まります。

時間帯ごとのリスク
時間帯 リスク 動物の活動 その他
薄明~早朝 活動多い 視界悪い
朝~昼 活動やや少ない 視界良好
夕方~薄暮 最も高い 活動ピーク 交通量多・視界悪化
夜~深夜 活動多い 交通量少・視界悪い

3 どこで起きやすいのか <道路環境と周囲の状況>

動物が生息している地域では、どこでもロードキルが発生する可能性があります。このため、地方だけでなく都市部やその周辺でも油断はできません。

国土交通省では、ロードキル対策の一つとして、ロードキルの危険がある道路に「動物が飛び出すおそれあり」の警戒標識を設置しています。標識には、その地域に生息する動物の絵柄が表示されています(図2)。

次のような場所では、動物の出現を前提とした運転が求められます。

  • 道路脇に森、藪、草むらが続く山間部
  • 川沿い、田畑、里山等に近い道路
  • 「動物が飛び出すおそれあり」の警戒標識が設置されている区間
  • カーブや起伏が多く見通しが悪い(動物からも車が見えにくい)道路

図2 警戒標識 「動物が飛び出すおそれあり」の例※4

4 動物の種類による注意点

(1)エゾシカ

北海道のほぼ全域に生息しており、近年、その個体数は増加傾向にあります5。北海道警察公表のエゾシカが関係する交通事故の発生状況6によると、方面別では、札幌(41.6%)、釧路(26.1%)での発生が多くなっています。月別では10月(22.8%)、11月(18.0%)が多く、この2か月で40%以上、時間帯別では1820時(28.8%)、1618時(22.5%)が多く、これらの時間帯で50%以上を占めています。

シカのような大型動物との接触は重大な事故につながるおそれがあるため、北海道で車を運転する際は、これらの点に注意が必要です。

(2)ニホンジカ

北海道から沖縄まで日本全土に広く分布しています。910月に繁殖期を迎え、56月にかけて出産します7。繁殖期には移動範囲の拡大に伴う道路横断の増加が考えられ、夕方から夜間の走行には注意が必要です。また、出産・子育て期には、採食活動が活発化するため、郊外や山間部を走行する際には注意が必要です。春には、妊娠した身重のシカが素早く逃げることができず犠牲になるケースが多いという調査結果もあります8

(3)タヌキ

国土交通省の統計(図1)によると、直轄国道におけるロードキルの動物別内訳では、タヌキ(29%)が最も多くなっています。他の研究9、※10によると、タヌキのロードキルの月別発生ピークは10月となっており、その理由は、若齢個体の分散時期が秋頃に当たるためと考えられています。また、春にも第二のピークがあり、その理由として、育児期間における親・子タヌキの行動の活発化と考えられています。このようにタヌキのロードキルは、これら二つの時期に多く確認されています。

(4)ネコ

前出の調査・研究9によると、2021年における千葉県内の動物種類別ロードキルでは、ネコが最も多く、67%以上を占めており、その発生時期のピークは7月、第二のピークは秋となっています。ネコの繁殖期は年二回あり、繁殖期と子ネコの離乳時期が重なることが、その要因と考えられています。さらに、首都高速においても、鳥類に次いでネコが多い状況です。一方、同県における別の研究11によると、場所別(土地利用別)のロードキルでは、市街地(59.1%)が最も多くなっています。

動物種類別のロードキル注意点
動物の種類 注意したい時期 その他
エゾシカ 10~11月 16~20時、札幌・釧路方面で多い
ニホンジカ 9~10月・春(妊娠期) 夕方~夜に多い
タヌキ 10月・春(第二のピーク) 国道の動物別ロードキルで最多
ネコ 7月・秋(第二のピーク) 首都高速で鳥類に次いで多い

5 ドライバーにできる対応策 <今日からできること>

(1)事前の心構えと情報の確認

走行経路における山間部や「動物が飛び出すおそれあり」の警戒標識の有無について、あらかじめ意識しておきます。高速道路では、道路情報板等でロードキル多発の注意喚起が行われることがあるため、日頃からこうした情報に注意を払うことが重要です。夜間や早朝にロードキルのおそれのある区間を通行する場合は、例えば、普段より10分早く出発し、速度を5~10km/h程度控えて走行するなど「早めに出発して時間に余裕を持つ。速度を落として走る」と決めておきます。これらを意識することが行動変容を促しリスクの低減につながります。

(2)見えにくい時間帯の走り方

暗くなる前に早めにライトを点灯し、対向車や前走車がいない区間ではハイビームを積極的に使用する、又はこまめにライトを切り替えるようにします。これにより、道路脇の動物の動きや目の反射を発見しやすくなります。

夕暮れから夜、そして早朝の運転では、「動物が活動する時間帯」であることを意識し、見通しの悪いカーブや森林の切れ目等では特に速度を落とします。また、直ちにブレーキ操作できるよう、アクセルから足を離しブレーキペダルに添えるなどの運転姿勢を整えておきます。

(3)動物を見かけたときの対応

道路脇に動物の姿が見えた場合は、一頭だけでなく続いて現れる可能性を考え、十分に減速します。シカ等は群れで行動することが多く、先頭の一頭の後に数頭が続くことも少なくありません。

動物が飛び出してきた場合、急ハンドルで避けると対向車線へのはみ出しやガードレールとの衝突等、二次事故の危険が高まるため、ブレーキによって速度を落とすことを優先します。普段から、路肩のスペースや後続車との距離を意識しておくと、いざというときに対応の選択肢が広がります。

シカの群れ(北海道釧路方面 2026年4月 弊社撮影)

(4)もし動物に衝突してしまったら

対策を講じていても衝突してしまうことがあります。その際は、まず、自分と同乗者、そして他の車の安全確保を優先し、安全な場所に停車してハザードランプを点灯させます。このとき、動物には近づかないようにします。安易に近づくと、動物が暴れ出す危険があります。その後、道路管理者や警察に連絡し、地域のルールに従って対応します。

なお、これらの事故に遭った場合に備え、自動車保険の補償内容について確認しておくようにしましょう。

おわりに

動物との衝突は「運が悪かった出来事」ではありません。発生しやすい時期、時間帯、場所に一定の傾向がある事故です。完全に防ぐことは難しいものの、ドライバーがその特徴を理解し、危険な時間帯には速度を控え余裕をもって運転する、早めにライトを点灯するなどの対策を講じることで衝突のリスクを減らすことができます。

安全運転は、人だけでなく道路を横切る動物の命を守る行動でもあります。次に危険な場所や危険な時間帯を運転する際には、ここに挙げた対策の中から、まずは実践できるものを一つでも取り入れることが重要です。それがロードキルを減らす第一歩につながります。

本稿で取り上げたロードキル以外にも、ドライバーへの注意喚起・教育は定期的に実施していく必要があります。弊社では、専門講師による講習会実施や、Eラーニング学習サービスの提供も行っています。ぜひお気軽にお問合せください。

関連する情報はこちら

「山道での運転」(安全運転ほっとNEWS 2025年10月号)
※リンク先は東京海上日動火災保険株式会社のウェブサイトです。別ウィンドウで開きます。

脚注

※1 国土技術政策総合研究所「ロードキル防止技術に関する研究」国総研資料第152号(2004年3月) https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0152.htm
※2 国土交通省「落下物処理の実施状況(令和6年度)」および「高速道路会社の落下物処理件数(令和6年度)」 https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/ijikanri/pdf/rakkabutu.pdf
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/ijikanri/pdf/rakkabutu_nexco.pdf
※3 群馬県安中市「野生動物に注意しましょう!」(2021年9月)https://www.city.annaka.lg.jp/page/10872.html
※4 国土交通省「道路分野のネイチャーポジティブ今後の方向性」(2025年6月) https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001895947.pdf
※5 北海道庁環境生活部「エゾシカについて」(2026年3月) https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/est/index.html
※6 北海道警察本部「エゾシカが関係する交通事故の発生状況(令和7年中)」 https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/koutuu/sika_jiko/sika_jiko.pdf
※7 環境省自然環境局「認定鳥獣捕獲等事業者講習テキスト第14版」(2026年1月) https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/download.html
※8 環境省関東地方環境事務所「ロードキル問題について(富士山麓でのロードキルの実態)」(2023年2月) https://kanto.env.go.jp/blog/page_00090.html
※9 千葉県立長生高校「ロードキル発生件数の月次推移の分析とその再現性の確認」(2023年8月) https://cms2.chiba-c.ed.jp/chosei-h/wysiwyg/file/download/129/1792
※10 千葉中央博自然誌報告「千葉県南東部における哺乳類のロードキルの状況」(2008年3月) https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/cms/wp-content/uploads/2024/01/journal_10-1_3ochiai.pdf
※11 茨城大学教育学部紀要「千葉県銚子市におけるロードキルの実態と被害軽減策の提案」(2016年3月)https://rose-ibadai.repo.nii.ac.jp/records/17554#

執筆コンサルタントプロフィール

塩入 英明
運輸・モビリティ本部 エキスパートリスクコンサルタント

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