バリューチェーンを整理する。可視化する。

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コラム

2026/2/19

ある日、海外の生産委託先でトラブル(火災、洪水、地震、テロなど)が発生。「影響を受ける製品ラインは?」「代替生産できる拠点は?」こうした問いに答えるため、各部署から情報を集めるだけで数時間。顧客への連絡が遅れ、信頼関係に傷がついてしまった――。

実は、こうした問題を抱える企業は少なくありません。なぜこのような問題が起きるのでしょうか。
現代のビジネスでは、一つの製品が顧客に届くまでに、数多くの拠点や部署が関わっています。

1.バリューチェーンが見えない企業の実態

バリューチェーンの一例(当社作成)

製造業であれば、複数の部品工場、組立工場、品質検査部門、物流拠点が連携します。サービス業でも、本社、各支店、サービスセンター、バックオフィス部門など、多くの拠点・部署の協力が不可欠です。しかしながら、自社のバリューチェーンを理解している企業は多くありません。
中小企業白書(2022年)においても「バリューチェーンについての情報収集・分析を行っていないと回答した企業の割合が25.3%」と報告されています。

中小企業白書(2022年)第2-2-81図から引用

多くの企業では情報が各部署に分散しており、全体像を把握している人がいないことで、無駄な業務や回答の遅れが発生します。

【ケース】国内外に多数の生産委託先を持つ製造業A

状況:
●物流部門には日々、営業・生産管理・調達から拠点情報の問い合わせ
●担当者は毎回、複数部署に確認して回答(1件あたり平均30分〜1時間)
●生産委託先の拠点情報が散在、更新状況もバラバラ

転機:
東南アジアの協力工場で火災が発生。

●「影響を受ける製品は?」→ 各部署に確認中…
●「代替生産できる拠点は?」→ 委託先の生産可能品目や認証取得状況が不明…
●「顧客への影響は?」→ 物流ルートの把握に時間が…

結果、状況把握に8時間を要し、顧客への初動連絡が大幅に遅延。
この経験から、
A社は「バリューチェーンの可視化」に本格的に取り組むことを決断しました。

2.解決への2つのステップ:バリューチェーンの「整理」と「可視化」

このような状況に陥らないための対策として、2つのステップが必要です。

ステップ1:散在する情報を「整理」する
まず、各部署がバラバラに持っている拠点情報を3つの視点から統合します。

視点

情報

部門横断の情報

製造、品質管理、営業、調達など各部署が持つ情報を一元化

各拠点の状況

所在地、機能・役割、設備能力、認証取得状況などの基本情報

多層的な連携関係

直接の取引先だけでなく、その先の協力拠点や関連部署までのつながり 

ステップ2:誰もが理解できる形に「可視化」する
整理した情報を、地図のように直感的に理解できる形で可視化します。
各部署が管理するExcelなどのデータでは、情報は「点」でしか把握できません。可視化することで、拠点間の「つながり」「距離感」「全体像」が一目で分かるようになります。

これらの視点で情報を整理し、可視化することで、以下のようなメリットが得られます。

【日常業務】業務効率化と戦略検討
  Before:
  ●  拠点情報の問い合わせ対応に毎日2時間
  ●「あの工場の担当部署は?」を調べるだけで30分
  ●「生産体制の見直しを」と言われても、現状把握に1カ月
  After:
  ●  可視化された地図で即座に確認、問い合わせ対応時間を大幅に削減
  ●  新入社員も全体像を短期間で理解、オンボーディング期間が短縮
  ●  委託先拠点の配置、機能、連携関係を俯瞰、戦略立案の基礎データが常に最新
   ▷「A製品の委託先はどこ?」→地図上で即座に確認
   ▷ 「この地域に新拠点を作るべきか?」→既存拠点との関係性を即座に分析

______________________

【有事対応】リスク管理の効率化・高度化
  Before:
  ●   トラブル発生時、影響範囲の特定に半日以上
  ●   各拠点の機能が重複していることに気づかない
  After:
  
●   トラブル発生時、影響範囲を数分で特定、初動対応が迅速に
  ●  「この地域に拠点が集中している」「この拠点は単一障害点だ」といったリスクを可視化
  ●   BCPの実効性が向上、経営層への報告資料作成時間も短縮

3.まとめ:バリューチェーンの理解が、企業の「無形資産」になる

本コラムでは、バリューチェーンを広く把握する重要性とその方法についてご紹介しました。
複雑化するビジネス環境において、バリューチェーンを可視化し、従業員一人ひとりが理解することは、企業の競争力を支える重要な要素です。

可視化によって得られる経営価値:
✓ 全社的なリスクマネジメント:拠点情報を統合し、事業継続性を高める
✓ 経営判断の迅速化:拠点戦略に必要な情報を一元管理
✓ 組織知の蓄積:属人的な情報を組織の資産として可視化・共有
✓ データドリブン経営:勘や経験だけでなく、データに基づく意思決定を実現

当社サービスのChainableは、バリューチェーンを整理し、各担当者が直感的に理解できる「地図」として可視化します。自社の工場、物流拠点、サポート部門、その他、バリューチェーンの全体像を、組織横断で共有できる基盤を構築します。
自社のバリューチェーンを組織横断で共有し、有事の対応力向上だけでなく、業務効率化と戦略的意思決定を支援します。
詳しくはYouTube紹介動画をご覧ください。

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執筆コンサルタントプロフィール

松本 虎衛門
企業財産本部 研究員

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