海外から直接販売される製品の安全対策が強化されます

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コラム

2025/10/3

 近年のインターネット取引の拡大に伴い、海外事業者が日本国内の消費者に製品を直接販売する機会が増加しています。しかし、このような取引では製品の安全性に対する法的責任を有すべき国内の製造・輸入事業者が存在しないという課題が指摘されています。こうした課題に対処するべく、2025年12月25日に改正製品安全4法1が施行され、安全対策が強化されます。本稿では、法改正のポイントを紹介します。

■ 海外事業者の規制対象化(国内管理人の選任)
 海外事業者が取引デジタルプラットフォーム(以下「取引DPF」)を利用するなどして国内の輸入事業者を介さずに国内消費者にPSマーク対象製品を直接販売する場合、当該海外事業者は「特定輸入事業者」と位置づけられ、国に対して事業開始の届出が必要となり、販売する製品の技術基準への適合等が義務付けられることとなります。また、国内における責任者(国内管理人)を選任することが求められるようになります。
 国内管理人は、例えば消安法では「日本国内においてその輸入に係る特定製品4による一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生及び拡大を防止するために必要な措置をとらせるための者」と定義され、海外事業者の日本国内における代理人ということになります。国内管理人は検査記録の写しの保存義務や、報告徴収・立入検査等への対応義務の対象となり、日本国内における特定製品等PSマーク対象製品の安全性の確保に一定の責任を有するものと位置づけられます。国内管理人は経済産業省に対し、特定輸入事業者との連絡体制を定期的に報告することや、特定輸入事業者と契約を解除する場合に事前に報告することが求められます。

1 国内管理人の義務等5

    

2 国内管理人を選定するケース5

■ 取引DPF提供者に対する出品削除要請等の創設
 取引DPFにおいて提供されるPSマーク対象製品について、国内消費者に危険が及ぶおそれがあると認められ、かつ、その製品の出品者によってリコール等の必要な措置が講じられることが期待できないとき、国は取引DPF提供者に対し、当該製品の出品削除を要請できるようになります。対象となる取引DPFとしては、インターネットモールやインターネットオークションが想定されています。

■ 届出事項の公表制度の創設
 従来は、届出事項に関わる情報は国に請求することで入手することができました。本改正により、事業者が届出した場合、届出事業者の氏名、住所、特定製品等の型式の区分、国内管理人の氏名(特定輸入事業者のみ)等が公表されることとなります。つまり、これまで情報請求をしなければ事業者について知ることができなかったのが、本改正により届出事項が一般に公表されるため、消費者が事業者についていつでも簡単に知ることができるようになります。

■ 法令等違反行為者の公表制度の創設
 改正製品安全4法や当該法律に基づく命令等に違反する行為を行った者の氏名等について、公表することができる制度が創設されます。

 本改正により、海外事業者が日本国内の消費者に直接販売する場合、国内管理人の選任が義務化されます。国内の事業者が国内管理人として選任されると、報告徴収・立入検査等への対応など、製品の安全性に関して一定の法的責任を負うことになり、定められた義務を怠り、適切な対応をしていなかった場合、罰則を受ける可能性があるほか、製品事故発生時には被害者からクレームや賠償請求を受ける可能性もあります。また、国内管理人に限らず、事業者は、製品安全4法や法に基づく命令に違反した場合、氏名等が公表される可能性があり、レピュテーションリスクにつながるおそれがあります。PSマーク対象製品の製造・輸入事業者および国内管理人となる事業者において、本改正内容を含めた関連法令の理解や海外事業者との責任分担の明確化、社内の製品安全管理体制の整備などの安全対策を進めることが望まれます。

関連サービスページ

製品安全4法:消費生活用製品安全法(以下「消安法」)、電気用品安全法、ガス事業法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律の総称。
 取引デジタルプラットフォーム:オンラインショッピングサイトやオークションサイト、クラウドサービスなどのインターネットを通じて商品やサービスの取引などを行うようなオンライン基盤のこと。
製品安全4法で規制されている製品(対象製品は以下参照)。
https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/system/07.html
消費生活用製品のうち、構造、材質、使用状況等からみて、一般消費者の生命又は身体に対して特に危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品(対象製品は以下参照)。
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/act_outline.html
 経済産業省「改正製品安全4法による、新たな規制の対象者、対象製品等の具体的な内容について」(https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/pdf/2025Jan_block_setumei.pdf

執筆コンサルタントプロフィール

千田 遵
製品安全・環境本部 主任研究員

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