乳幼児用玩具が消費生活用製品安全法の子供用特定製品に指定されます
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2025/3/6
2024年12月13日、「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」(以下、「改正法」)の施行に伴う整備政令および期日令が公布されました 1。
すでに子供用製品分野では、乳幼児用ベッドが消費生活用製品安全法で特別特定製品として規制対象に指定されていますが、今回公布された整備政令および期日令では、新たに「乳幼児用玩具(積み木、ボール、ぬいぐるみ等、3歳未満の子供が生活の中で使用することを意図して設計された製品)」が、子供用特定製品に指定されています。
改正法の施行日は2025年12月25日であり、施行後、技術基準に適合した旨の表示や、対象年齢等の使用上の注意に関する表示がない子供用特定製品は、販売できなくなります。
2025年1月31日には、本制度の関係省令が公布され、子供用特定製品の技術上の基準、使用に適した年齢に関する基準、使用に関して注意を促すための文言、子供PSCマーク 2等が示されました 3。
以下、今回の法改正のポイントをご紹介します。
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■ 規制概要
・子供用特定製品の製造又は輸入事業者において、以下の対応が義務付けられます。
① 国が定める技術基準への適合
② 製品への対象年齢・使用上の注意等の表示
・上記義務を履行している旨を示す表示(※)のない製品は、販売不可となります。
※ 上記義務の履行を示すマークとして、下図のPSCマークが新設されました 4。子供用特定製品の製造又は輸入事業者においては、法令に従って技術基準への適合を確認し、下記PSCマークを製品に表示する対応が求められます。

■ 技術基準
本改正において、乳幼児用玩具の技術基準が、「経済産業省関係特定製品の技術上の基準等に関する省令」へ新たに規定されます。乳幼児用玩具においては、誤飲・窒息等の事故が発生していることから、「飲み込んだり、吸い込んだりしない大きさであること」、「玩具の容器包装は、口及び鼻を覆うことによる窒息のおそれがないこと」といった、誤飲・窒息による事故発生を防止する観点での基準も盛り込まれています。
■ 注意表示
乳幼児用玩具においては、下表のとおり、使用年齢基準に沿った対象年齢を定め、対象年齢を含む注意表示を行うことが義務化されます。
表:乳幼児用玩具(注釈3の省令をもとに弊社にて作成) |
<使用年齢基準> |
一 使用に適した年齢は、合理的な根拠に基づくものであること。 二 使用に適した年齢は、届出に係る型式の特定製品に係る広告において意図されている使用に適した年齢に矛盾しないこと。 三 使用に適した年齢の下限は、類似する他の製品に設定された使用に適した年齢の下限を上回らないこと。 四 使用に適した年齢の下限は、子供用特定製品の機能、寸法その他の特徴から、一般消費者が合理的に推測できる年齢の下限を上回らないこと。 |
<注意表示>
対象の区分 | 使用に関して注意を促すための文言 | |
全てのもの
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一 |
使用に適した年齢 |
二 |
保護者が見守る旨 |
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水の中で使用することを意図した玩具 |
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乳幼児が立つことができる深さの水の中で使用する旨 |
ゴム製の風船
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一 |
膨らんでいない風船や割れた風船を吸い込まないようにする旨 |
二 |
膨らんでいない風船は乳幼児の手の届かないところに保管する旨 |
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三 |
破れた風船は速やかに廃棄する旨 |
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出生後十八月以上の乳幼児が使用することを意図したもの(引っ張り玩具を除く。)であって、長さが300ミリメートルを超える乳幼児に絡まる可能性のないひもを含むもの |
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ひもで頸部を圧迫する可能性があり、出生後十八月未満の乳幼児に使わせない旨 |
出生後十八月以上の乳幼児が使用することを意図したものであって、長さが220ミリメートルを超え、300ミリメートル以下の乳幼児に絡まる可能性のあるひもを含むもの |
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ひもで頸部を圧迫する可能性があり、出生後十八月未満の乳幼児に使わせない旨 |
出生後十八月以上の乳幼児が使用することを意図したものであって、長さが300ミリメートルを超える電線を含むもの |
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電線で頸部を圧迫する可能性があり、乱暴な使用をしない旨 |
揺りかご、ベッド又は乳母車に張り渡すよう意図されたもの |
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つりひもなどにからまって負傷することがないように、乳幼児が周囲を手でつかむことにより立ち上がることができるようになったら玩具を取り外す旨 |
揺りかご、ベッド若しくは乳母車に取り付けること又は壁若しくは天井からベッドの上に吊り下げることを意図したものであって、乳幼児に絡まる可能性のあるひもを含むもの |
一 |
ひもが乳幼児の手の届かない範囲にあるよう固定する旨 |
二 |
つりひもなどに絡まって負傷することがないように、乳幼児が周囲を手でつかむことにより立ち上がることができるようになったら取り外す旨 | |
ヘルメット、帽子、ゴーグル等の保護具を模したもの |
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保護機能がない旨 |
以上のとおり、改正法施行日以降、PSCマークの表示がない乳幼児用玩具は販売できなくなるため、該当する製品を取り扱う事業者においては、改正法の内容を確認の上、技術基準への適合検査や製品への表示追加等の事前準備を進めることが求められます。
子供用特定製品を取り扱う事業者の皆様にとって、改正法に則った製品を製造・販売することは、製品の安全性を担保するうえで何よりも重要です。そのうえで、法令対応のみでは対策が行き届きにくい、個々の製品特性に起因して想定される特有のリスクを適切に把握するためにも、製品リスクアセスメント等を個別に実施し、社内独自の基準を以てリスク低減に取り組んでいくことが望まれます。
1 経済産業省 HP「消費生活用製品安全法等の関係政令が閣議決定されました」
(https://www.meti.go.jp/press/2024/12/20241210001/20241210001.html)
2 PSCマーク:国の定めた技術上の基準に適合したことを証明するマーク。「PSC」は、「Product(製品)」「Safety(安全)」「Consumer(消費者)」をそれぞれ表す。
3 経済産業省 HP「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律の施行に伴う経済産業省関係省令の整備に関する省令が公布されました」
(https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/pdf/syourei_shoann.pdf)
4 経済産業省 資料「消費生活用製品安全法等の改正内容について」
(meti.go.jp/product_safety/consumer/pdf/seido_kaisei_shoann.pdf)
執筆コンサルタントプロフィール
- 早川 舞
- 製品安全・環境本部 主任研究員