EU製造物責任指令の改正について

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コラム

2025/2/6

 欧州連合(European Union:以下「EU」)は、EUの製造物責任法の原則にあたる「製造物責任指令(Product Liability Directive:以下「PLD」)」を全面的に改正した新たなPLDを公表し、2024年12月8日に発効しました※1。
 EU加盟国は、2026年12月9日までに国内法への反映を求められ、同日以降に市場で販売される製品は改正PLDの適用対象となります。
 今回の改正では全面的な内容の見直し※2が行われていますが、主な改正点には「製品の定義の拡大」、「損害の補償範囲の拡大」、「責任主体の範囲の拡大」などがあります。
 以下、これらの事項について解説します。

【製品の定義の拡大】
 EU市場に投入されている限り、すべての製品はその種類に関係なく、改正PLDの適用対象となります。従来の製品に加え、ガスや水といった原材料のほか、アプリケーション、オペレーティング システム、AIシステムなど、すべての種類のソフトウェアが適用対象となる製品に含まれることとなりました。

【損害の補償範囲の拡大】
 改正PLDでは、従来の損害の補償範囲であった「人的損害(人身傷害)」、「物的損害(財物に生じた損害)」に加え、「データの破壊または破損」が追加されました。
 また、人的損害には精神的損害も含むことが明確化されました。

【責任主体の範囲の拡大】
 被害者が損害賠償を請求できる相手は、主に欠陥のある製品の製造事業者となります。しかしながら、製造事業者がEUに拠点を置いていないケースも数多くあります。
 このような場合には、被害者はEUに拠点を置く以下の事業者に損害賠償請求を行うことができるようになりました。
  ①    輸入事業者または製造事業者の認定代理人
  ②    上記①がいない場合は、フルフィルメントサービス提供事業者※3
 なお、被害者はEU内における責任主体がどの事業者であるかを知るために、製品の販売事業者に対して責任主体に関する情報開示を要求することができ、情報開示の結果、EU内における責任主体がいないことが判明した場合、または情報開示の要求から1か月以内に回答がない場合は、被害者は販売事業者に補償を求めることができます。

 以上のとおり、今回のPLDの改正はEU市場において製品を流通させる事業者にとって大きな影響があると考えられるため、EU加盟国の各国国内法についても注視することが望まれます。

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 ※1 European Union「Directive (EU) 2024/2853 of the European Parliament and of the Council of 23 October 2024 on liability for defective products and repealing Council Directive 85/374/EEC」

 ※2 European Commission「Liability for defective products」
https://single-market-economy.ec.europa.eu/single-market/goods/free-movement-sectors/liability-defective-products_en

 ※3フルフィルメントサービス:ECサイトやネットショップの運営者に代わって、商品の受注から発送、顧客対応までの一連の業務を代行するサービス。

 

執筆コンサルタントプロフィール

丸茂 耕太
製品安全・環境本部 エキスパートコンサルタント

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