動物カフェとペットサロンはどの用途地域で建築可能か

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コラム

2024/8/20

 コロナ禍以降においても、ペット産業は堅調に拡大しています。
 経済産業省のHP(※1)によると、ペット用品の年間販売額はコロナ禍で特に増加し、加えて、ペットサロン、ペットホテル、ドッグラン施設、動物カフェなど、ペット産業に関連する施設は様々な形で広がりを見せています。
 本コラムではペットサロン、動物カフェが建築基準法上どの用途に該当し、どの用途地域内であれば建築・テナント入居が可能かを整理していきます。
 ポイントは、「動物関連施設×住居系用途地域」は注意、という点です。

1.    ペットサロンについて
 ペットサロンとは、主にトリミングやグルーミングを行う施設になります。トリミングとは「毛のカット」であり、グルーミングは「シャンプーや爪切りなど全身のお手入れ」です。
 ペットサロンは、人間に置き換えると美容院が近しい施設といえます。

【用途】ペットサロンは、人対象の美容院と同じ「サービス業を営む店舗」に該当しない(※2)
 人のための美容院は建築基準法上、住居系用途地域でも建築可能な「理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗(以下、理髪店等のサービス業を営む店舗)」に該当します。その他エステティックサロン、ネイルサロンなどの美容系施設も該当します。
 そのため、ペットサロンも同様に「理髪店等のサービス業を営む店舗」と思いがちですが、実は該当しません。

 建築基準法でいう美容院とは、人を対象とした施設であり、ペットサロンは該当しません。建築基準法は動物愛護管理法と異なり、そもそも人を対象とした法律です。例えば、犬小屋は人が入らないので建築物には該当しませんし、また、人が常時滞在すれば居室に該当しますが、動物が常時いるだけでは居室に該当しません。
 ペットサロンは、ペットのお手入れというサービスの提供施設です。しかし建築基準法での「理髪店等のサービス業を営む店舗」とは、近隣住民の日常生活に必要不可欠なサービスを指しますので、ペットサロンはこれに該当しないと考えられます。
 具体的に、建築確認申請書の用途区分を適用するならば、「08460物品販売業を営む店舗以外の店舗」に該当します。

【用途地域】ペットサロンは、1低層、2低層、1中高、田園住居では建築できない
 「理髪店等のサービス業を営む店舗」に該当する場合は、建築基準法別表第2(い)(ろ)(は)(ち)に限定列記された用途であり、近隣住民に不可欠な施設として、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、田園住居地域に建築可能です。
 しかし、ペットサロンは「理髪店等のサービス業を営む店舗」に該当せず、これらの用途地域内では建築不可となります。

2.    動物カフェについて
 動物カフェは、動物とのふれあいサービスと飲食を提供する施設です。最近では、フクロウ、ウサギと触れ合えるカフェなど、バリエーションは増えつつあります。

【用途】動物カフェは複合用途として捉え、それぞれで検討が必要(※3)
 動物カフェの運営形態・サービス形態を分解すると、以下の3つになります。
 ① 飲食サービスを提供する部分
 ② 動物と触れ合えるサービスを提供する部分
 ③ 動物の飼養・保管をする部分

 建築基準法に記載された用途では、直接的に動物カフェに該当するものが存在しないため、要素ごとに用途を当てはめる必要があります。

 ① 飲食サービスを提供する部分
 →「食堂もしくは喫茶店」又は「飲食店」に該当

 ② 動物と触れ合えるサービスを提供する部分
 →「物品販売業を営む店舗以外の店舗」に該当し、ペットサロンと同様「理髪店等のサービス業を営む店舗」には該当しない

 ③ 動物の飼養・保管をする部分
 →①②に付属する「畜舎」に該当

 「理髪店等のサービス業を営む店舗」に該当しないため、用途地域の制限が厳しいところが大きなポイントです。動物カフェは特に、近隣住民だけではなく不特定多数の人が広範囲から訪れる可能性があることからも、「理髪店等のサービス業を営む店舗」に該当しないことは妥当と考えられます。
 また、畜舎といえば養鶏場や牛舎が思い浮かびますが、飼養(餌を与え育てる)や保管を行えば、畜舎に該当します。畜舎も一般的なイメージの通り、住居系用途地域での建築制限は厳しいです。
 以上の3つの用途の複合用途と捉え、用途地域の適合性判断においては、それぞれの用途ごとに適合するかを確認する必要があります。
 
【用途地域】動物カフェは、1低層、2低層、1中高、田園住居で建築不可、2中高も注意
 動物カフェもペットサロンと同様、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、田園住居地域に建築することができず、テナントの入居も困難になります。また、畜舎にも該当するため、畜舎部分の床面積が15㎡を超える場合は、第2種中高層住居専用地域においても建築不可のため、併せて注意が必要となります。

3.    最後に
 動物関連施設は年々増えつつありますが、実は用途地域による建築制限が厳しいため、思わぬ法令違反となりがちです。また、どうしても、鳴き声や臭気により近隣の住環境へ与える影響も少なくありません。
 動物関連施設は他にも、動物病院、ペットホテル、屋内ドッグランなどが挙げられます。建築時およびテナント入居時には十分な確認、必要に応じて行政庁との協議が必要です。

 

参考文献
※1 経済産業省HPより 「ペット産業の動向 -コロナ禍でも堅調なペット関連産業-」
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20220311hitokoto.html
※2日本建築行政会議、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2022年度版」P227
※3日本建築行政会議、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2022年度版」P231

執筆コンサルタントプロフィール

代谷 直也
不動産リスクソリューション本部 主任研究員

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