2024年10月に施行される改正景品表示法が企業に与える影響について

  • 製品・サービス

コラム

2024/7/1

 2023年5月10日、「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」が国会で可決され、「不当景品類及び不当表示防止法」(以下「景品表示法」)が改正されました。改正景品表示法は同年5月17日に公布され、2024年10月1日から施行されます※1。
 本改正は、表示等を行う事業者の自主的な取組の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等を図るものとなっています。景品表示法に違反する優良誤認表示※2等の不当表示を行ったとみなされた場合、事業者は、消費者庁から措置命令や課徴金納付命令を受けるおそれがあります。また、これらの命令が出された場合には消費者庁のウェブサイトで公表されるため、レピュテーション上の問題も生じえます。
 本コラムでは、改正内容のポイントをご紹介します。

  1. 事業者の自主的な取組の促進
    ◆    確約手続の導入
    優良誤認表示等の違反行為の疑いのある表示等をした事業者が、当該違反の疑いに対し是正措置計画を自主的に作成・申請し、内閣総理大臣(消費者庁)から認定を受けた場合、当該行為について、措置命令や課徴金納付命令の適用を受けないことになります。
    ◆    課徴金制度における返金措置の弾力化
    違反行為のある表示等を行った商品やサービスを購入した消費者に対して一定の返金を行った場合、課徴金額から当該金額が減額される返金措置がありますが、返金方法として金銭による返金に加え、第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)も可能となります。

  2. 違反行為に対する抑止力の強化
    ◆    課徴金制度の見直し
    事業者が品目別に売上額データを整理していないなど、課徴金を計算するための基礎事実が把握できない場合に、合理的な方法により推計することができる規定が整備されます。また、10年以内に違反行為を繰り返した事業者に対して課徴金の額を1.5倍にする規定が新設されます。
    ◆    罰則規定の拡充
    優良誤認表示・有利誤認表示※3に対し、直罰(100万円以下の罰金)※4が新設されます。

  3. 円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等
    ◆    適格消費者団体※5による開示要請規定の導入
    事業者が現在進行形で行っている表示について、優良誤認表示行為に該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合に、適格消費者団体が事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるようになります。加えて、事業者は当該要請に応ずる努力義務を負う旨の規定が新設されます。

 本改正での課徴金制度の見直しや罰則規定の拡充、適格消費者団体による開示要請規定の導入により、企業のリスクが増す可能性があります。企業は、自社の商品・サービスに関する広告等の表示(ウェブページ、商品パッケージ、販促資料等)が不当表示に当たらないよう、表示内容の検討やチェックの体制・プロセスを再確認することが求められます。検討・作成した表示内容のチェックは、第三者による確認も有効です。
 また、本改正での確約手続の導入により、万一不当表示の疑いが判明した場合でも、その後適切に対応できればリスクを回避できる可能性があります。このため企業は、不当表示等の疑いが判明した場合のプロセスについても再確認することが必要となります。


※1 消費者庁ホームページ 確約手続等を導入する法改正について(概要)(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/assets/representation_cms216_240418_05.pdf
※2 優良誤認表示とは一般消費者に対し、自社の商品・サービスの品質や規格等について、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者の商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝したりするなど不当に顧客を誘引する表示をすることを指す。
※3 有利誤認表示とは一般消費者に対し、自社の商品・サービスの価格やその他取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者の商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝したりするなど不当に顧客を誘引する表示を指す。
※4 直罰とは違法行為があった場合に、行政命令等を出して自主的な改善を促すといった過程を経ることなく、即時に罰則を適用することを指す。
※5 消費者庁ホームページ 適格消費者団体・特定適格消費者団体とは(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/collective_litigation_system/about_qualified_consumer_organization

                

執筆コンサルタントプロフィール

千田 遵
製品安全・環境本部 主任研究員

コラムトップへ戻る