住宅等の採光面積緩和に伴う「納戸→居室」への表記変更について

  • 不動産リスク

コラム

2024/7/23

【1.建築基準法改正の概要】
 2023年4月1日施行の建築基準法の改正により、住宅等の居室について必要な採光面積が緩和されました。従来、住宅の居室は床面積の1/7以上の採光面積が必要でしたが、法改正により床面照度50lx以上の照明を居室内に設置することを条件に、床面積の1/10以上の採光面積を確保できれば建築基準法に適合することになりました。本コラムでは、現在納戸と表記されている部屋を居室に変更できる場合について解説します。

【2.間取図の表記ルール】
 建築基準法で居室として認められていない部屋は「不動産の表示に関する公正競争規約」により、居室であると誤認されるおそれのある表示をすることができず、「納戸」、「サービスルーム」、「DEN」(以下、納戸等)と表示をする必要があります。そのため、リビング+洋室1+洋室2+納戸の場合は、3LDKではなく2SLDKや2LDK+Sと表示しなければなりません。賃貸物件の検索サイトで3LDKと検索しても、2SLDKの物件は検索にヒットせず3LDKを探している人の目に留まりにくい状況となっています。

【3.納戸→居室への表記変更】
 住宅の必要採光面積が緩和されたことにより、納戸等として使用している部屋で、採光面積が必要採光面積の1/10以上1/7未満となっている場合は、床面照度50lx以上の照明を設置することで、居室と表現できる可能性があります。設置が必要な照明の種類や形状については特段定められておらず、「白熱灯」、「LED」や「天井埋め込み」、「吊り下げ」等、どのような種類の照明を設置しても良いとされています。また、調光タイプの照明であっても、最大照度時に50lxを確保すれば良いため、該当する照明の設置は、比較的容易に行うことが可能です。なお、採光計算における採光補正係数の算定基準については、従来から変更はありません。

【4.納戸居室化のメリット】
 今まで納戸等と表示していた部屋を居室に変更できれば、居室数増加による賃料アップが期待できます。また、賃貸物件の検索サイトでは、2SLDKよりも3LDKでの検索数の方が多いため、ヒット率の向上が期待できます。さらに、採光規定が適用されない用途(事務所等)から住宅に用途変更する場合、必要な採光面積を確保するための工事が負担となり断念するケースが見られますが、今回の法改正により、このような工事が不要になる可能性もあります。

【5.居室化検討の際の留意事項】
 居室化検討に当たっては、必要採光面積が確保されていない部屋を居室として使用してしまうと違反建築物となるため、一級建築士等の有識者による詳細な確認を推奨します。例えば、開放廊下に目隠しルーバーの設置をしている場合や、採光を確保する窓の正面に、駐輪場の増築等をしている場合は、採光面積の計算を設計当時から変更する必要があるため注意が必要です。納戸から居室への変更についてお困りの際は、弊社までお気軽にお問い合わせください。

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執筆コンサルタントプロフィール

山田佑樹、德田大樹
不動産リスクソリューション第四ユニット 主任研究員

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