紅麹問題を発端とした機能性表示食品を巡る制度改正の動きについて

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コラム

2024/6/6

 2024年3月、紅麹を使用した健康食品を摂取した複数人において腎疾患等が発生し、一部の紅麹原料に意図せぬ成分が混入している可能性があることが明らかになりました。このニュースは健康食品に関連する深刻な健康被害として世間に衝撃を与え、現在も原因物質の究明や被害者への対応等が続けられています。また、当該紅麹は食品原料としても幅広く使用されており、多くの企業が対応に追われました。

 

 一連の事態を受けて、消費者庁は「機能性表示食品を巡る検討会」を設置し、機能性表示食品制度の改正の検討が開始されました(※1)。今回健康被害の訴えがあった製品は、機能性表示食品であり、いわゆるGMP(Good Manufacturing Practice)に基づく製造管理や被害発生時の事業者による報告が義務化されていなかった点が問題視されたためです。
 機能性表示食品制度とは、食品の機能性を消費者に訴求する機会の拡大を目指し、2015年に開始された制度で、事業者は、科学的根拠等の必要事項を消費者庁長官に届け出ることで、国の審査を経ず自らの責任で食品に機能性を表示することが可能です(※2)。また、GMPとは、製造に関わる全工程(原料受入れから最終製品の出荷まで)における製造管理および品質管理の基準のことで、日本では医薬品の製造において認証の取得が義務付けられています(※3)。

 検討会は、4月から5月までに計6回開催され、5月末に公表された報告書では、サプリメント形状の加工食品におけるGMPに基づく製造工程管理の義務化、行政機関(消費者庁および都道府県知事等)への健康被害情報の速やかな報告の義務化といった提言が示されました(※4)。

 今後は、検討会の提言を踏まえ、「食品表示基準」や「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」等の改正が行われる見込みです。機能性表示食品の製造業者は、自社製品の製造管理や健康被害情報入手時の対応の見直しが求められます。また、検討会では機能性表示食品に関する表示や周知方法の見直しも言及されており、消費者においても健康食品に関する正しい知識を身に着けることが求められています。

<参照URL>
※1 消費者庁ホームページ「機能性表示食品を巡る検討会」参照。
https://www.caa.go.jp/notice/other/caution_001/review_meeting_001 
※2 消費者庁ホームページ「機能性表示食品について」参照。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims 
※3 厚生労働省「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」参照。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6647&dataType=0&pageNo=1 
※4 消費者庁ホームページ「機能性表示食品を巡る検討会 報告書」参照。https://www.caa.go.jp/notice/other/caution_001/review_meeting_001/assets/consumer_safety_cms206_240527_01.pdf
 

執筆コンサルタントプロフィール

中川 奈菜
製品安全・環境本部 主任研究員

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