2024年4月17日に発生した豊後水道の地震と過去の歴史地震について
- 自然災害
2024/5/9
はじめに
2024年4月17日深夜に豊後水道を震源とする地震が発生し、愛媛県、高知県を中心に大きな揺れが観測されました。今回の震源域となった豊後水道を含む安芸灘~日向灘~豊後水道では過去にも大きな地震が発生しています。
本コラムでは、今回発生した地震の概要と被害状況について報告するとともに、同地域での過去の歴史地震についても触れ、今後の備えについて考えます。
地震の概要と被害状況
4月17日23時14分、豊後水道を震源とするマグニチュード(以下「M」と記載します)6.6、震源の深さ39 kmの地震が発生しました。気象庁によると[1]、この地震により、愛媛県愛南町と高知県宿毛市で震度6弱、愛媛県宇和島市で震度5強を観測したほか、中部地方・伊豆諸島から九州までの広い範囲で震度1以上の揺れを観測しました。この地震は、東西方向に張力軸を持つ正断層型の地震であり、震源の深さ等各種条件から、沈み込む海洋プレートの内部で発生した地震(スラブ内地震)と考えられます(図1)。
最大地震発生直後より活発な地震活動が継続し、地震調査研究推進本部および気象庁によると[2]、5月1日15時までの間に、震度1以上の地震が66回(内、震度6弱が1回)発生しています。
内閣府のまとめによると[3]、この地震で6人が軽傷と報告されているほか、一部市町では、断水の発生が報告されました。
図1:プレート境界とその周辺で発生する地震のメカニズム。気象庁資料より引用[1]。本地震は「プレート内で発生する地震」に、南海トラフ巨大地震は「プレート境界で発生する地震」に該当する。

安芸灘~伊予灘~豊後水道において発生した過去の歴史地震とその被害
今回の震源域である、安芸灘~伊予灘~豊後水道(図2)では、過去多くの地震が発生しています(表1)[4]。1600年以降、約420年間に7回発生しており、死者や負傷者を伴う被害が記録されています。
最近では、1905年と2001年に発生しており、それぞれ「1905年(明治38年)芸予地震」、「2001年(平成13年)芸予地震」と呼ばれています。1905年芸予地震ではM7.2の地震が発生、広島県広島市、呉市、愛媛県松山市を中心に、死者を伴う被害が報告されました。また、M6規模の余震が3回発生したことも報告されています。2001年芸予地震ではM6.7の地震が発生し、広島県河内町(現:東広島市)、大崎町(現:大崎上島町)、熊野町で震度6弱を観測、死者2人、負傷者261人のほか、住宅被害が発生しました。
図2:安芸灘~伊予灘~豊後水道とその周辺の領域図。地震調査研究推進本部資料より引用[4]。

表1: 1600年以降、安芸灘~伊予灘~豊後水道で発生した著名な地震一覧。地震調査研究推進本部の調査結果[4]を元に弊社作成。

南海トラフ巨大地震との関係は?
中国・四国地方での地震というと、南海トラフ巨大地震との関係性が心配になりますが、政府の地震調査研究推進本部では[2]、今回の地震により南海トラフ沿いの巨大地震発生可能性が平常時より高まったという発表はされていません。
また、「地震の概要と被害状況」でも記載した通り、本地震はスラブ内地震というタイプで、想定される南海トラフ地震のプレート境界型地震とは発生場所やメカニズムの異なるタイプです(前掲図1)。したがって、本地震が南海トラフ巨大地震へ直接つながるような地震であるとは考えられておりません。
今後の備え
地震調査研究推進本部では、「安芸灘~伊予灘~豊後水道の沈み込んだプレート内のやや深い地震」について、深さ約30~120km、発生頻度約67年に1回、地震規模M6.7~7.4とし、今後30年以内に地震が発生する確率は40%程度と評価しています[4]。今回の規模よりも一回り大きな規模の地震の発生が示唆されており、引き続きの警戒が必要と言えます。
当該地域周辺では、南海トラフ、日向灘、九州中央部、南西諸島周辺における地震ハザードも危惧されています。特に、南海トラフや日向灘での地震は、プレート境界型地震と呼ばれる巨大地震であり、大津波を伴う甚大な被害が予想されています。南海トラフにおいては、直近発生した大地震(昭和東南海・昭和南海地震)より約80年が経過しており、日ごろから国や自治体が公表するハザードマップや被害想定、避難場所を確認しておき、地震の発生に備えておくことが重要です。
参考文献
[1] 気象庁「令和6年4月17日23時14分頃の豊後水道の地震について」
[2] 地震調査研究推進本部・地震調査委員会「2024年4月17日豊後水道の地震の評価」
[3] 内閣府「豊後水道を震源とする地震に関する被害状況等について 2024年4月18日7時30分現在」
[4] 地震調査研究推進本部・地震調査委員会「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)」
執筆コンサルタントプロフィール
- 山本 龍典
- 企業財産本部 リスクソリューションユニット 主任研究員