建築物敷地内への電動キックボードの設置と建築基準法への抵触について

  • 不動産リスク

2024/4/16

 令和5年7月1日に改正道路交通法が施行され、最高速度が自転車と同等であるなど一定の要件を満たす電動キックボード等(以下、電動キックボードといいます)は、特定小型原動機付自転車と位置付けられています。電動キックボードは運転免許がなくても運転することができ、1年足らずの期間で首都圏をはじめ各地で急速に利用が拡大し、建築物の敷地内にも多く設置されています。サイクルポートの設置位置次第では、建築基準法(以下、建基法といいます)の規定に抵触する恐れがあるため、共同住宅を例に注意点を紹介します。

 共同住宅でよくみられる建基法抵触事例としては、『ベランダ下部利用』『避難通路への干渉』の2点があげられます。
 ベランダ下部は一般に床面積に算入されていないため、当該部分を利用する際には、事前に増築確認申請が必要となることが多くあります。手続きが必要であることを知らずにサイクルポートを設置してしまい、申請の手続きを行っていない場合は、建基法第99条第1項第1号の規定により、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。また、手続きの要否にかかわらず、床面積が増加することで、建基法の各種規定に適合しなくなる可能性もあります。
 3階建以上の場合等は、敷地内の所定の位置に原則幅員1.5m以上の敷地内の通路の確保が建基法により求められます。敷地内の通路は、有事の際に避難するための通路として確保が求められるものであり、適切な維持管理が必要となります。確保ができていない場合は、人災につながる可能性があるとともに、建基法第98条第1項第2号の規定により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処される可能性があります。

 今回は共同住宅に事例を絞って紹介しましたが、事務所等でも、「手続きを経ずに公開空地への設置」、「附置義務である駐車場を減じて設置」等の事例もあります。また、今回は電動キックボードについて記載しましたが、レンタサイクルや自動販売機の設置等でもおおよそ同様のことがいえます。通常の建物管理とは異なる視点が必要であり、専門的知識を要するため建物所有者・管理者では判断が難しい場合もあることが考えられます。そのため、外部の専門家の意見を取り付けるなど、慎重な対応が求められます。

 

執筆コンサルタントプロフィール

山田 佑樹
不動産リスクソリューション本部 主任研究員

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