台湾東部沖地震(0403花蓮地震)と台湾の耐震基準の変遷

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2024/4/11

 2024年4月3日午前8時58分(台湾時間午前7時58分)台湾東部沖で地震が発生しました。被災された皆様には心よりお悔やみとお見舞い申し上げます。

 今回の地震では花蓮県を中心に多数の建物が倒壊し、台湾の中央通訊社によると2024年4月10日午後7時時点で死者16名、負傷者1155名の被害が確認されています。台湾も日本と同じく、地震が頻繁に発生する環太平洋火山帯に位置し、これまで度重なる大地震に見舞われてきました。そして、大きな被害を受けるたびに建物の耐震基準は見直されています。

【耐震基準の主な変遷(2000年まで)】

※一覧は著者作成
※台湾の変遷については参照資料1),2),3)を基に作成

 日本の耐震基準の大きな転換期は、基準が大改正された1981年で、それ以前に建てられた建物は『耐震診断』という手法を用い、構造検証することが求められています。(一部の建物は耐震診断が義務付けられています。)同様に、台湾の耐震基準でも、基準が移された1997年および集集地震が発生した1999年が転換期で、それ以前に建てられた建物に対して耐震診断を実施することが台湾政府から推奨されています。台湾では大地震のたびにビルが倒壊して被害が広がる事態を繰り返していますが、その多くが旧基準により設計されたものです。
 

 2024年4月3日の台湾東部沖地震発生以降、報道では数多くの被災建物について報告されていますが、今後、詳細な調査により、1999年の耐震基準の有効性等について改めて検証されていくものと思われます。日系企業も多数、現地に進出し事業活動を行っていますが、拠点の選定においては耐震基準の変遷を念頭に1999年以降に設計された建築物を選定する、更には駐在員の住居選定についても留意することが望まれます。 

 弊社ではこれまでも台湾での地震被災調査を実施しておりますが、進出企業の事業所の耐震性評価や台湾を含めグローバルに展開する企業の地震PML(最大予想損害額)評価、M&Aに伴う建物関連のDD(デューデリジェンス)等も手掛けております。これらの調査は構造図等の資料が揃っていれば、日本からの出張ベースでの対応が可能ですので、お問い合わせください。

参照資料:
1)日本建築学会 『1999年台湾・集集地震 第1編 災害調査報告』(2000年11月)
2)日本建築学会 『2016年台湾・美濃地震災害調査報告書』(2017年8月)
3)日経BP『日経アーキテクチャー』(1999年10月18日号)

【耐震診断・耐震補強PDF
【地震後の建物被災度調査PDF

執筆コンサルタントプロフィール

木村 江里
不動産リスクソリューション本部 上級主任研究員

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