建物の区分所有等に関する法律(マンション法)の見直しに関する要綱案とマンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)について

  • 不動産リスク

2024/3/15

 2024年1月16日開催の区分所有法制部会第17回会議において、区分所有法制の見直しに関する要綱案が示されました。その中で、建替え決議を円滑化するための仕組みとして、建替え決議の多数決要件の緩和(現行法では、多数決割合を区分所有者及び議決権の各5分の4以上)が行われる方向で検討されています。具体的には、以下の客観的事由のいずれかに該当する場合に、多数決割合を区分所有者及び議決権の各4分の3以上とすることとしています※1。

①    地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和25年法律第201号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして政省令等で定める基準に適合していないこと
②    火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして政省令等によって定める基準に適合していないこと
③    外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剥離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に該当すること
④    給水、排水その他の配管設備の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に該当すること
⑤    高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第14条第5項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして政省令等によって定める基準に適合していないこと

 5つの客観的事由については、マンションの建替え等の円滑化に関する法律に記載があります。このマンションの建替え等の円滑化に関する法律も2021年12月に改正されており、その背景には、老朽化が顕著なマンションが急増することが想定され、マンションの再生に向けた取り組みが課題とされているためです。国土交通省の説明会資料によれば、今後、築40年以上のマンションは2022年末の約125.7万戸から10年後には約260.8万戸、20年後には約445.0万戸となると推定されています※2。

※2 国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト 説明会関連 説明会資料より抜粋

 そこで国は、老朽化が顕著なマンションの再生のさらなる円滑化のために、除却の必要性に係る認定対象を2020年に拡大(2021年12月施行)し、従来の耐震性が基準に満たないマンションのみだったものから、耐震性があっても老朽化が著しいマンションを対象とすることし、その基準を前述の②~⑤と定めました。要除却認定マンションの建替えにより新たに建築されるマンションは、容積率制限の緩和の特例を受けられる可能性があります。なお、2021年12月~2022年度末時点の要除却認定の実績のうち、2021年に拡大された基準の②~⑤による認定は3件となっています※3。
 
 要除却認定の手続きは、管理組合等が申請し特定行政庁が認定を行います。マンションの調査・判定については、一級建築士等の資格を有する者が行うことと定められており、申請にあたっては、管理組合の総会で認定申請の決議を得ることが必要となります。また、要除却認定を受けると、マンションの区分所有者に除却の努力義務が課されるため、各区分所有者が十分に理解いただいたうえで進めていく必要があります。
 調査を実施するためには、建物の図面等が必要なため、新築、増築時等の確認申請書類の保存及びデータ化や、改修部分の図面の保存または再作成及びデータ化等を実施することが望まれます。また、調査を実施しない場合にも、マンションの適切な維持管理を実施するためには不可欠であるため、これらの資料が適切に管理・保管されていることを改めてご確認いただくことが重要です。


※1 法務省 法制審議会-区分所有法制部会
https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00004

※2 今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめWEB説明会
2.マンションを取り巻く現状
https://2021mansionkan-web.com/wp-content/uploads/2023/10/02_001632565.pdf

※3 3-2.マンションの建替え等の円滑化に向けて
https://2021mansionkan-web.com/wp-content/uploads/2023/10/04_001632567.pdf


参考
国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト
https://2021mansionkan-web.com/

 

執筆コンサルタントプロフィール

山田 佑樹
不動産リスクソリューション本部 主任研究員

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