冬に台風襲来!? 爆弾低気圧とは

  • 自然災害

2024/3/1

 日本の強風災害の主要因が台風であることは間違いありません。しかし、台風が上陸することが少ない冬から春にかけて、「冬の台風」とも呼ばれる爆弾低気圧 i が日本周辺を襲うことがあります。本稿ではその特徴から対策までをまとめています。

爆弾低気圧のメカニズムと特徴

 台風は熱帯で発生した低気圧が、高い海水温をエネルギー源として発達した熱帯低気圧です。一方、爆弾低気圧は暖気と寒気のぶつかる場所で温度差をエネルギー源として急発達する温帯低気圧です。
 台風は概ね同心円状の気圧分布を持つことに対し、爆弾低気圧は前線を持ち、複雑な気圧分布で、広範囲に渡って等圧線が混みあう場合があることが特徴です。このため、広範囲で強風、豪雨や大雪、気温の急激な変化などをもたらします。
 また、台風は遠い南海上ででき、日本へ北上してくるまでに時間的余裕がありますが、爆弾低気圧は、日本付近で急速に発達し強風をもたらすために、しばしば台風よりも時間の余裕がない場合があります(表 1)。
 特に、日本海側は、直接台風が上陸することが多い太平洋側に比べ、日本海上でも発達がみられる爆弾低気圧の影響が相対的に増すことになります。

過去の爆弾低気圧による被害

 過去の爆弾低気圧による被害で頻繁にみられるのが、停電などインフラへの影響と、通行止めや運休など交通への影響です。これらは直接資産を損ねるというよりは、事業中断への影響が大きい、ということになるでしょう。
 また、台風と同じように、強風が海岸に吹き寄せることによっておこる高潮被害もしばしばみられます。表 2は被害の大きかった過去事例3件です。過去事例からは、台風よりも、ことによっては広範囲に渡る全国的な影響があることが見て取れます。

将来はどうなる?

 このような爆弾低気圧は、今後気候変動によってどのような影響を受けるのでしょうか。将来予測シミュレーション研究によると、日本周辺での爆弾低気圧総数は大きく変わらないものの、強い爆弾低気圧の割合が増え、分布としては、太平洋側では頻度が下がる一方、日本海側では頻度が高くなる可能性が示唆されています iii
 強い爆弾低気圧が増えるということは、中長期的に現在よりも被害が増えるということになります。特に日本海側に拠点や設備のある事業者においては、対策が重要になってくるでしょう。

爆弾低気圧への備え。「急発達」ワードに要注意!

 爆弾低気圧への備えは、上述のような影響がある可能性を平時から認識し、予報が出た場合にどのように対処するか危機管理計画を策定しておくことが重要です。施設設備の保護のみならず、事業継続計画、従業員の安全確保、避難計画も含まれます。
 爆弾低気圧への備えは、台風対策と大きな違いはありませんが、急発達するために予報がでてから短時間で対策が必要なこと、冬季の発生が多いため、雪対策の必要があることに留意が必要です。また、台風の場合は盛んに報道されますが、爆弾低気圧についてはそれほど注目度が高くないことや、気象庁は「爆弾低気圧」とは呼ばず、「急発達する低気圧」と呼ぶことから、普段天気予報を見聞きしているときに「急発達」というワードが出てきたら要警戒です。

 以上、冬の台風とも呼ばれる爆弾低気圧についてまとめました。本稿が爆弾低気圧による災害を減らす一助になれば幸いです。


i 「爆弾低気圧」という呼称について:気象庁は採用していませんが、一般的にも、また気象学の専門家も用いていることから本稿では採用しています。爆弾低気圧とは 爆弾低気圧とは | 爆弾低気圧情報データベース (kyushu-u.ac.jp)
ii  爆弾低気圧データより 期間を指定して検索 | 爆弾低気圧データ | 爆弾低気圧情報データベース (kyushu-u.ac.jp)
iii  大規模アンサンブル気候予測データを用いた爆弾低気圧の将来変化 (jst.go.jp)

執筆コンサルタントプロフィール

大垣内 るみ
企業財産本部 上級主任研究員

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