火災を受けた建物の火害調査・火害診断について

  • 火災・爆発
  • 不動産リスク

2024/2/28

 総務省消防庁により令和5年11月29日に発表された「令和4年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によると、令和4年の建物火災件数は20,167件、1日当たりおおよそ55件の火災が発生したことになります。建物が受ける災害のうち、火災は発生頻度が高く、また、地域性が関係なく誰にでも起こりうる災害のため、火災保険に加入される方も多いです。しかしながら「木造は火災に弱い」「鉄筋コンクリート造は火災に強い」と考えてはいないでしょうか。

 確かに、鉄筋コンクリート造や鉄骨造は木造に比べると火災に強く、焼失することはありませんが、火災により長時間にわたって高熱に晒されると、建物の構造躯体に影響を及ぼすことがあります。構造躯体の被害の一例としては、コンクリート・鉄骨の材料強度低下や、鉄骨部材変形・接合部ボルト破断等が挙げられますが、外観目視確認ではその被害が分かりづらいため、「崩れていないから問題ないだろう」とそのまま建物を使用してしまうと、その後徐々に損傷が進行、また、地震時に所要の強度を発揮できず地震被害が拡大する可能性があります。

 したがって、鉄筋コンクリート造や鉄骨造であっても、火災後に適切な調査を行う必要があり、その方法として「火害(※2)調査・火害診断」が用いられます。一般社団法人 日本建築学会が発行している「建物の火害診断および補修・補強方法 指針・同解説」に基づき調査することが一般的ですが、調査の第一段階として受熱温度を推定することが重要となります。
 受熱温度は、火災現場に残っているものから推定します。例えば、煤(すす)が付着している場合は300℃以下、その煤が焼失している場合は500℃以上。また、エアコンカバー等が軟化・融解している場合は(プラスチックの融点は組成の違いによりばらつきがありますが)100~200℃程度となります。火災後清掃してしまうと、これらの推定材料がなくなってしまうため、火害調査は基本的に清掃前に実施する必要があります。

 火害調査は、一次調査(目視による調査)を実施し、必要に応じて二次調査(測定を伴う調査)、補修・補強へと進めていきます。甚大な被害ではない限り、適切な補修・補強を行うことで建物を使用し続けることができます。「崩れていないから大丈夫」と自己判断せず、まずは専門家へご相談ください。

 ※1 受熱温度:火災の熱により温度上昇した部材または材料の最高温度
 ※2 火害(かがい):建物の内外装材料および構成部材の火災による劣化または喪失

火害調査・火害診断・補修補強設計(リンク)PDF

執筆コンサルタントプロフィール

木村 江里
不動産リスクソリューション本部 上級主任研究員

コンサルタント紹介を見る

メールマガジンを申し込む

コラムトップへ戻る