蓄電池システムの安全国際規格(運用中の変更・中古蓄電池の使用)が発行されました

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2024/2/1

 近年、電気自動車(EV)など多くの製品で蓄電池の利用が進んでいます。一方で、中古となった蓄電池の取扱いについては、できるだけ長く使い、環境への負荷を減らす「蓄電池の再利用」が期待されており、様々な企業が蓄電池の再利用や再資源化に関するビジネスを展開しています。しかしながら、EVなどで使用された蓄電池は製品ごとに劣化状態や充電率がそれぞれ異なり、安全性を評価せずに再利用すると火災事故などを招く危険性があります。

 このように蓄電池の再利用は安全性の問題があり容易ではありませんでしたが、このほど再利用蓄電池の安全性に関する国際規格が制定され、この規格を活用することで「蓄電池の安全な再利用」が可能となりました(※1)。

 本規格は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(以下、「NITE」)が原案を策定し、日本からIEC(国際電気標準会議)(※2)に提案した「定置用蓄電池システムの安全性:計画外変更の実施」に関する国際規格(IEC 62933-5-3)で、①運用中の蓄電池システム(※3)に変更を加える場合と②蓄電池システムに中古蓄電池を使う場合の安全の確保を目的としています。

 特に上記②は、EVなどで使用された蓄電池を定置用蓄電設備で再利用する際の安全性や性能、運用法などを評価するものであるため、本規格により中古蓄電池を寿命まで安全に蓄電池システムで再利用することが可能となり、EVで使用された車載蓄電池の再利用が進むことが考えられます。また、中古蓄電池の価値が高まることで蓄電池システムの普及が促進されると考えられます。

 今後、本規格の国内での活用を促進するため対応する日本産業規格(JIS)が制定されると考えられますので、企業においては蓄電池システムの事故を防止するためにも引き続き情報収集を行い、安全な蓄電池の再利用を行うよう心がけることが望まれます。

※1 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)HP 「世界初!蓄電池システムの安全国際規格(運用中の変更・中古蓄電池の使用)が発行!」https://www.nite.go.jp/gcet/nlab/information/prs231130_00001.html

※2 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)。電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関。

※3 蓄電池とは電気を蓄えておける電池のことで、蓄電池システムとは蓄電池に貯蔵した電気を必要に応じて利用できるシステムのことです。

 

執筆コンサルタントプロフィール

丸茂 耕太
製品安全・環境本部 エキスパートコンサルタント

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