昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択されました

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2023/1/25

 2022年12月7日~19日、カナダのモントリオールにて生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部が開催され、19日に「昆明・モントリオール生物多様性枠組(Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework)」※1が採択されました。

 本枠組では、「自然と共生する世界」を2050年ビジョンとし、2050年までの4つの長期目標と、2050年ビジョンに向けた2030年ミッション及び23のターゲットを掲げています。ターゲットは3項目から構成され、企業の事業活動に関連する事項も多く含まれています。例えばターゲット3では、2030年までに陸域及び海域の少なくとも30%を保全・管理することが求められています(30by30)。保全・管理対象にはOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)も含まれており※2、日本ではターゲット3の目標達成においてOECMが重要な役割を担うことが考えられます。OECMとは保護地域以外で生物多様性保全に資する地域のことを指し※3、一定の基準を満たした社有林等も含まれることから、目標達成には企業の協力が欠かせません。またターゲット15では、事業活動による生物多様性への依存・影響並びに生物多様性に関するリスクの評価・開示を求める旨が記載されています。

 本枠組は、2020年までの国際目標であった「生物多様性戦略計画2011-2020及び愛知目標(以下、愛知目標と記載)」の後継として位置づけられるものです。愛知目標では、本枠組と共通の2050年ビジョンを掲げ20のターゲットを設定しましたが、完全に達成されたターゲットはありませんでした。この理由としては、多数の条約締約国で愛知目標に沿った国家戦略が策定されたものの、策定された国家戦略が目標達成には不十分なレベルであったことが挙げられています※5。本枠組に沿った日本の次期生物多様性国家戦略は現在検討中です。戦略内容は日本における生物多様性に関する取組の方向性を示すことから、今後さらに注目されることが考えられます。

 本枠組の採択により企業への生物多様性関連の情報開示要請等はさらに加速されることが予想されます。日本企業は今後策定される生物多様性国家戦略や欧州等の国際動向を把握しながら、開示要請に対して速やかに対応していく必要があります。

 

※1:Secretariat of the Convention on Biological Diversity(2022)Decision Adopted by the Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity 15/4. Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework

参考ページ:https://www.cbd.int/doc/decisions/cop-15/cop-15-dec-04-en.pdf

※2:Secretariat of the Convention on Biological Diversity(2022)Decision Adopted by the Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity 15/5. Monitoring Framework for the Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework

参考ページ:https://www.cbd.int/doc/decisions/cop-15/cop-15-dec-05-en.pdf

※3:環境省(2022)30by30ロードマップ

参照ページ:https://www.env.go.jp/content/900518835.pdf

※4:環境省(2022)昆明・モントリオール生物多様性枠組(暫定訳)

参照ページ:https://www.env.go.jp/content/000097720.pdf

※5:Secretariat of the Convention on Biological Diversity(2020)Global Biodiversity Outlook 5

参照ページ:https://www.cbd.int/gbo5

執筆コンサルタントプロフィール

宇田川 理奈
製品安全・環境本部 研究員

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