EC市場拡大に伴う製品安全リスク

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2022/10/11

 新型コロナウイルス感染症拡大によるライフスタイルの変化も相まって、EC(電子商取引)※1市場は大きく拡大を続けています。下表は、日本におけるEC市場規模、各分野の伸長率を表したものですが、物販系の売上市場規模では、2020年から2021年にかけて8.61%の伸長率を示すなど、大きく成長していることがわかります。

(インターネット通販での重大製品事故の増加)

 ECビジネスは、売り手にとっては実店舗がなくても商品の販売が可能となり、出品のハードルも低いことから、従来の市場から締め出されてきた違反商品も流通する可能性があり、実際に当該市場経由での製品事故が数多く確認されています。以下のグラフは、製品入手経路別の重大製品事故発生割合とインターネット通販による製品事故割合を示していますが、インターネット通販による製品事故が年々増加傾向にあります。

 また、ECを通じて、海外の販売事業者が消費者へ直接商品を販売する機会が増えていますが(越境EC)、当該取引で重大製品事故が発生した際の問題が顕在化しています。

 重大製品事故が発生した場合、消費生活用製品安全法(以下、“消安法”)に基づき輸入業者または製造業者は消費者庁へ報告する義務がありますが、越境ECにおいては消費者が海外販売業者から直接商品を購入するため、日本国内に報告義務者が存在せず、消費者庁に製品事故が報告されないケースが出てきています。

 この場合、NITE※2による十分な調査が行えず、事故の再発防止が図れないことに加え、リコールが必要な場合も、消安法に基づく危害防止命令を発動できないおそれがあります。

(行政、ECモール運営事業者による課題解決のための取組)

 このような、EC市場における製品事故に関する課題に対し、行政ではECモール運営事業者と連携して次のような取組を行っています※3

-販売事業者の法令遵守状況の確認(ネットパトロール)

-連絡会合を通じた製品安全4法※4や違反事案に関する情報共有

―消費者の生命または身体に対して特に危害を及ぼすおそれのある製品のリコールや注意喚起の協力依頼、販売停止の要請 など

 今後の状況次第では、関連法制度の見直しも想定されます。特に、ECモール運営事業者は販売者(出品者)に代わって責任を負うことも考えられることから、⼀部の規制対象製品に係る販売前の書類審査や販売されている製品の監視を行う等、自社の製品安全に関わる取組を見直し、消費者への危害防止を図るための取組を推進することが期待されます。

 

※1 「Electronic Commerce」の略称。商品やサービスをインターネット上で売買するビジネスモデルを指す。

※2 独立行政法人 製品評価技術基盤機構:製品に関する事故の原因調査や安全テストを行い、事故原因や事故の可能性を明らかにし、製造事業者や消費者に情報提供を行うことで事故防止を図っている。

※3 参考:経済産業省 インターネット取引における製品安全に関する検討会「インターネット取引における製品安全に関する提言(令和2年6月1日)」

※4 「電気用品安全法」「ガス事業法」「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」「消費生活用製品安全法」のことを指し、当該法律で規制される製品は、国の定めた技術上の基準に適合していることを表すPSマーク表示の貼付が義務付けられています。

執筆コンサルタントプロフィール

山元 雅信 
製品安全・環境本部 エキスパートコンサルタント

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