「男女の賃金差異」公表の義務化について

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2022/8/10

 女性活躍推進法の制度改正により、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、男女の賃金差異の把握及び公表が義務化されました(2022年7月8日施行)。初回の公表は、制度改正施行後に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に行うことが求められています。そのため、公表に向けた準備が今から必要となります。

 男女の賃金差異は、「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者i 」「全ての労働者」の3つの区分ごとに、以下の方法により算出します。定義や算出方法の詳細は、厚生労働省のホームページii をご覧ください。

 男女間で賃金格差が生まれる要因は、役職(昇進・昇格)や勤続年数によるものが大きいと考えられています。格差縮小のためには、女性の管理職登用や、出産や育児で退職せずに働き続けられる職場づくりを進める必要がありますが、取組成果が男女間の賃金格差縮小に寄与するには時間がかかります。
 また、比較可能な企業情報の提供という目的から、本公表は法律で示された共通の算出方法に則る必要があります。しかし、企業の設立年や業種、女性活躍の取組の開始時期などにより、他社と比較すると数値が劣る場合もあります。
 そこで、効果的な補足説明によって、数値の背景にある自社の強みや女性活躍の取組を示すことが重要になります。例えば、女性の新卒採用を強化した結果、相対的に賃金水準の低い女性労働者が増えたことで男女賃金格差が前年度より拡大したといった説明や、複数年にわたる数値変化を示すことで取組の成果を表すなど、改善に向けて取り組んでいることを伝えることが望ましいと考えられます。
 男女間の賃金格差については、2023年度以降、女性管理職比率や男性育児休業取得率とあわせて、有価証券報告書での開示義務化が明らかにされています。本項目の公表が注目を集める今、単なる数値の公表ではなく、背景にある人材戦略や女性活躍推進の成果を示す機会として活用してはいかがでしょうか。

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i  パートタイム労働者(一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(正規雇用労働者)に比べて短い労働者)及び有期雇用労働者(事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者)

ii  厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html 

iii  厚生労働省 女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000970984.pdf

 

執筆コンサルタントプロフィール

柳川 美保
製品安全・環境本部 シニアコンサルタント

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