CDP質問書への回答が企業にもたらすメリットとは

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2022/6/8

 これまでCDP(※1)が気候変動質問書の回答要請を行っていた日本企業は500社でしたが、2022年、プライム市場全社1,841社に拡大されました。全企業に共通の基本設問だけでも優に100問を超える質問書で、質問の解説となるガイダンス文書は約260ページのボリュームです。プライム市場全社への回答要請拡大を機に、初めて回答する企業が多いなか、回答のハードルの高さを感じている企業は少なくないでしょう。

 CDPのスコアは、環境スチュワードシップの向上を目指して、下位から「情報開示レベル(D-、D)」、「認識レベル(C-、C)」、「マネジメントレベル(B-、B)」、「リーダーシップレベル(A-、A)」という4つのレベルと8つのスコアで成り立っています。「情報開示レベル」は最下位レベルですが、現状を把握して情報開示を行っている企業という評価です。一方、回答しない企業に対しては、スコア「F」が付与され、CDPウェブサイトやCDP年次レポートにおいて企業名とともに公開されるため、情報開示姿勢が消極的だと評価されるリスクにも注意が必要です。

 CDP質問書の構成(下表)は、これまでサステナビリティ・レポート等で企業が開示していたGHG削減目標やGHG排出量データだけでなく、ガバナンスや事業戦略、リスクと機会の特定評価も含めた企業としての気候変動対応の全体がカバーされており、実際にCDPの質問に回答することで、自社として「出来ていること」、「出来ていないこと」の把握に役立つ構成となっています。CDPからの質問を最初に一読したのみでは何を問われているのか理解に時間を要するかもしれませんが、まずは自社の取り組みチェックシートとして一通り回答を入れてみると、その過程自体が経営企画部門、サステナビリティ部門、あるいはリスク管理部門などの関連部門との連携をスタートする機会ともなります。今年は「情報開示レベル」のスコアになったとしても、「出来ていないこと」が可視化されることで、気候変動対応の取り組みを進めやすくなり、翌年以降、スコアアップを目指すことができます。
 また、CDP質問書はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った質問内容になっており、CDP質問書への回答を通じて、自社の気候変動対応の向上だけでなく、コーポレートガバナンス・コードで求められている情報開示の充実も図ることができます。このようなメリットをふまえると、企業にとっては、今回、回答要請を受けたことをチャンスと捉えることができるのではないでしょうか。

 (※1)CDP:企業等に対して、気候変動、水、森林に関する対応状況について質問書で回答を求め、回答結果に対して評価を与える非政府組織。発足当時は「Carbon Disclosure Project」が正式名称でしたが、2013年に略称であった「CDP」を正式名称としています。

 

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執筆コンサルタントプロフィール

大熊 弥生
製品安全・環境本部 主席研究員

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