HACCP義務化に伴う事業者の対応
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2018/12/3
平成30年6月、15年ぶりに食品衛生法が改正され、全ての食品等事業者で「HACCPに基づく衛生管理」または「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が義務化されました。東京五輪を控え、日本の食品衛生管理を国際標準化し、異物混入や食中毒の防止等、食品の安全性の向上を図ることを主な目的とし、事業者の規模にかかわらず義務化の対象とされています。
■ 認証の取得は任意
今回の義務化では「HACCPに基づく衛生管理」または「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が求められていますが、HACCP認証の取得までは求められていません。
HACCPに沿った衛生管理で重要なのは、「重要管理点(CCP)とその管理基準を決め、その基準が守られているかを監視し、記録する」ことです。CCPの監視をするために機器の購入が必要になる可能性がありますが、校正された温度計やタイマー等、比較的手に入りやすいもので済む場合が多いでしょう。
■ 導入に当たっては手引書を参考に
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象事業者は、
・小規模な製造・加工事業者
・併設店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者(豆腐店、菓子店等)
・提供食品が多岐にわたり、変更が多い業種(飲食店、そうざい製造等)
などが想定されています。
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の導入に当たっては、各業界団体が作成している手引書を参考にすることができます。手引書は厚生労働省のサイトで公表されており、どなたでも利用可能です。
■ 導入に当たって想定される悩み
導入に当たっての悩みとして、以下のようなものが想定されます。
・HACCPに沿った衛生管理の導入に当たって、何から手を付けてよいのかわからない
・手引書と自社の製法が異なるためどうしたらよいかわからない
・手引書には「加熱は○○℃○○分、または同等以上の条件」と書いてあるが、何をもって同等以上としたらよいかがわからない など
また、導入後には以下のような悩みが出てくることが予想されます。
・衛生管理計画を作ったもののHACCPの7原則に沿ったものかどうかが判断できない
・記録(チェック表)が形式的なチェックになってしまう
・管理マニュアルはできたが現場の衛生管理を改善するにはどうしたらよいかわからない など
これらの悩みについては、HACCPへの理解や専門的な知識が必要な点もあるため、社内外の専門家に相談することをお勧めします。
■おわりに
HACCPの考え方を導入することで、安全な食品を安定的に製造することや、製造の効率化にもつなげられるだけでなく、HACCP計画書の内容を従業員教育や教育担当者の育成等に活用するなど、人材育成を含めた経営全体へのよい影響が期待できます。
今回の義務化を活用して、自社の体質強化につなげてみてはいかがでしょうか。
執筆コンサルタントプロフィール
- 木本 博之
- 製品安全・環境本部 シニアコンサルタント