産学連携で切り開くレジリエンス社会の未来
~2025年度 有識者懇談会~
東京海上ディーアール株式会社は、2015年から京都大学と産学連携組織 株式会社H3(エイチスリー)を通じて、防災・減災分野における産学連携の取組を継続してきました。10年の節目を迎えるにあたり、これまでの歩みや環境変化を振り返りつつ、今後のレジリエントな社会の構築に向けた課題や取組をテーマとして、有識者懇談会を開催しました。
本座談会では、ゲストとして京都大学防災研究所の牧紀男教授、東京海上ホールディングスの小野高宏氏(防災コンソーシアムCORE事務局代表)をお迎えして、2011年東日本大震災以降の環境変化を踏まえ、これからの防災・減災のあり方について語り合いました。
参加者紹介
牧 紀男
京都大学防災研究所 社会防災研究部門都市防災計画研究分野 教授
防災戦略・計画策定、災害対応・応急復旧、復興計画等を専門とし、被災地自治体の情報処理、復興計画策定、災害対応検証の支援を行う。また多くの自治体の防災計画、事前復興計画策定に関わっている。2023年、「自然災害後のすまいのマネジメントに関する一連の建築計画研究」にて日本建築学会賞(論文)を受賞。主な著作に、『平成災害復興誌ー新たなる再建スキームをめざして ー』(慶応義塾大学出版会、2023)、『復興の防災計画-巨大災害に備える-』(鹿島出版会、2013)、『災害の住宅誌―人々の移動とすまい―』(鹿島出版会、2011)、『組織の危機管理入門―リスクにどう立ち向えばいいのか―』(京大人気講義シリーズ、丸善、2008、共著)など。博士(工学)。
小野 高宏
東京海上ホールディングス株式会社ビジネスデザイン部
防災コンソーシアムCORE事務局代表
国際防災、BCP、保険・リスクマネジメント分野を専門とし、経済産業省やアジア防災センターにおいて、防災分野の政策立案等にも従事。防災DX官民共創協議会(BDX)副理事長。東北大学災害科学国際研究所 災害評価・低減研究部門津波工学研究分野 特任教授(客員)。博士(工学)。
佐藤 一郎
東京海上ディーアール株式会社
企業財産本部 本部長
大手建設会社勤務を経て、2002年東京海上ディーアール(以下、TdR)入社。企業保有資産や投資事業・インフラ事業等に係る災害リスク定量評価・コンサルティング、保険引受やリスク管理に係るモデル開発および技術開発に従事。2015年4月より現職。博士(工学)。
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※本企画における発言は、各個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません
座談会参加者(中央・牧教授、右・小野氏、左・佐藤)
第1部:防災・災害マネジメントの変遷・環境変化
はじめに
佐藤
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。弊社TdRでは、2015年11月から京都大学防災研究所の各先生方と、研究テーマやプロジェクトの課題について産学連携での双方向での様々な取組をさせていただきました。現在も継続していますが、ちょうど10年を迎えた節目ということで、これまでの環境変化などを俯瞰しつつ、「産学連携で切り開くレジリエンスビジネスの未来」をテーマに座談会を開催させていただきます。
牧教授
京都大学防災研究所の牧と申します。災害対応や復旧・復興、それに伴う計画策定の在り方など、防災政策全般を研究テーマとしております。本日はよろしくお願いいたします。
小野氏
東京海上ホールディングスの小野でございます。2010年頃にTdR(当時は「TRC-東京海上日動リスクコンサルティング」)にて、BCPや危機管理を担当する部門に在籍しており、その前は経済産業省やアジア防災センターなどに出向しておりました。3年ほど前に東京海上に戻ってきて、防災ビジネス全般を担当しております。よろしくお願いいたします。
2011年 東日本大震災以後の環境変化
佐藤
2011年の東日本大震災は一つの大きな節目でしたが、2000年代から今に至るまで振返ってみれば、社会やお客様の関心やニーズ、技術の進化、そして、リスク意識やガバナンスの在り方など、取り巻く環境が大きく変化したと実感しています。また近年は、DX文脈でも防災が語られることが非常に増えてきたと感じます。
こちらの年表(図1)は、過去の主な災害と、各分野での研究開発や施策の変遷をまとめたもの(注1)です。この年表を見ながら、特に2011年以降、それぞれのお立場で最も感じた変化について伺えますでしょうか。
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注1)京都大学防災研究所と共同で受託した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)『国家レジリエンス(防災・減災)の強化』防災分野の研究開発の全体俯瞰に関する調査研究」で整理した内容を一部参考にして、TdRにてまとめたもの。
図1 防災分野の技術施策・研究開発・外部環境等のの変遷
牧教授
大きく二つございます。
一つは、気候変動に伴う極端気象への対応です。流域治水という考え方が象徴的ですが、これが大きな研究テーマとなってきました。今までは、水は河川区域の中で抑えるということでしたので、その外側にある建築や都市領域の外乱や荷重として、水が取り上げられることは少なかった。地震の場合は、地上に存在するあらゆるものは、地震の揺れなどに曝露されたままであり、地盤や建築物、その集合体としての社会システムが、地震でどういった影響を受けるのか、という評価が大きな関心事でした。しかし、水害については、堤防の中で基本的には収まっているので、積極的に考えることはしてこなかった。
しかし、流域治水、分かりやすく言うと、河川堤防から外に水が溢れる前提で、しかも一地域や一組織だけでなく流域に関わる関係者が連携して、土地利用や建築物の設計など、何らかの形で水リスクとともに社会を構成しなさい、ということになった。これは大変大きな変化だと思います。
もう一つは、東日本大震災の後、復興ということが大きなテーマになったことです。起きた後の社会の立ち直り、広義に捉えるとBCPも含まれるかもしれませんが、地域の災害復興に関する恒久的な法律が東日本大震災の後に制定されたことが大きい変化でした。そして、仙台防災枠組のプライオリティ4の中で「より良い復興~ビルドバックベター」という概念が、防災対策の中で取り上げられるようになりました。この二つが2011年以降の大変大きな変化だと思っています。
京都大学防災研究所 牧教授
佐藤
気候変動の流れから水害リスクについては、至る所で聞かれるようになりました。ただ、難しさも同時にあるというところですね。ありがとうございます。小野さん、いかがでしょうか。
小野氏
たくさんあるのですが、やはり牧先生と同じく気候変動ですね。2018年そして2019年は、損害保険業界にとって大きな節目となりました。自然災害による保険金のお支払いが2年続けて1兆円を超えることになりました。被災された皆さまへ迅速かつ適正な保険金のお支払いをすることは言うまでもなく、そもそものリスクをどう低減していくか、ということを真剣に考えるターニングポイントになったと思います。
もう一つは、コロナもあったじゃないですか。私は、コロナ以降、「元通りに戻る」とはどういうことなのか、世の中が迷っているような気がしています。「バック・トゥ・ニューノーマル」とよく言いますよね。最近の能登半島地震の復興の在り方も、牧先生が仰っているように、ただ被災前に戻すことだけが選択肢ではない。
従来の「元に戻す」、から、「新しいところに戻っていく」、という発想が、気候変動や自然災害、パンデミックでも、前提となりつつある。以前とはニーズや志向も全く異なる方向にシフトすることもあり得る時代になってきている。ただ、「どんな状態にありたいか(戻りたいか)」を丁寧に考えなければいけないという観点で、世の中が難しい局面になってきていると感じています。
佐藤
確かに、原形復旧という概念そのものが問われていますね。国の災害復旧事業も、原形復旧が原則になっていますが...
牧教授
公共土木施設については、迅速性や公平性の観点で「原形復旧」が基本になります。あまり使われることはありませんが、災害対策基本法には「改良復旧」という機能向上をともなう復旧についても記載されています。しかし、人口減少社会においては逆に、被災や今後の状況に合わせて施設の性能を変える、場合によっては被災前よりも機能を下げた状態に戻す、といった議論も本来はあってもよいはずです。災害対策基本法に「管理者は速やかに復旧する」と書いてあるので、将来的に人が住み続けるのか否か、といった議論なく元通りに直す、という対応になり易いところがあります。
これは東日本大震災の際に課題となりましたが、能登半島地震でもさらに議論されています。法律上は元に戻すことが原則ですが、「バック・トゥ・ニューノーマル」という発想や考え方は、検討すべき課題ですね。
佐藤
本来、各地域の被災状況も異なりますし、将来の地域の在り方も変わってくる、そういった状況やニーズに適した復旧復興があるべきですが、時間も財源も有限であり、なかなか難しい問題ですね
牧教授
今の話は、公共施設の話でしたが、民間企業においても、似たような課題があるのではないでしょうか。一般的には、復旧のために保険金を充当する、という考えになりますが、特に自然災害の場合には、事前に補償範囲や条件をしっかり確認・認識しておかないと、場合によって困ることがあるのではないでしょうか。
小野氏
民間の場合でも大局的には似たような課題があります。特に自然災害の場合には、早期の復旧に損害保険が重要な役割を果たすことは間違いありませんが、被害や損失の全てを保険金で賄って元通りにできるとは限りません。経済的な面だけでなく、取引先やサプライヤも含めたオペレーション上のリソース制約やレピュテーションなど、対応すべき領域が多岐にわたります。
佐藤
巨大自然災害は、広域同時多発的に影響や被害を及ぼすため、発災直後から官民問わずリソースが枯渇します。公共でも民間でも、想定される災害に応じて、被災後に何が不足するのか、守るべきものは何か、そして、その後の復旧・復興に向けた、資金調達や事業や地域社会の在り方、について事前に戦略的に考えて合意形成をして備えておく事が重要ということですね。
日本の防災・災害マネジメントについて
佐藤
災害というとマイナス面がクローズアップされがちで、海外から見ると日本は災害多発国で危ない国だという安直な感覚を持たれやすい側面もあります。一方で、過去の経験や高い技術をベースに、日本全体の防災・災害対策が世界的にも高いレベルに達しているとも思います。日本の防災施策や取組で高く評価できる点があるとすれば、どのようなものでしょうか。
牧教授
やはり災害後の復旧から復興について、先ほど述べた法制度のような枠組を持っているというのは、災害が多かった日本の大変大きな特徴だと思います。仙台防災枠組でビルドバックベターを先導してプライオリティアクションに入れたのも日本ですから。
もう一つは、南海トラフや日本海溝の海底に地震観測網を入れているということです。緊急地震速報、アーリーワーニングは、アメリカも今やろうとしていますし、台湾も始めていますが、日本が最先端を走っているのは間違いありません。地震は予知できませんから、発災直前に少しでも時間を稼ぐ事に意義がある。これを可能とする緊急地震速報を全国に実装しているのは、世界に冠たる日本の技術ではないでしょうか。
佐藤
阪神・淡路大震災の前は、旧科学技術庁(防災科研)や総務省(消防庁)、気象庁と、地震観測の管轄が分かれていたところ、1995年の阪神大震災以降、連携しつつ地震観測網を増やしていった。一般には、省庁連携は難しいところがあると思うのですが、あの甚大な都市災害を経て、世界でも最高レベルの観測網ができてきたのだと思います。その観測網のお陰で分かってきたこともとても多いですよね。
地震については、耐震・構造設計されていないノンエンジニアード建築物や非構造部材など、一部課題は残っていますが、構造設計されている一般の建築物の耐震性は相当に上がってきており、大きな被害は減ってきていると思います。
牧教授
そうですね。技術的に解決できた問題は多いけれど、既存不適格の建物をどう社会的に解決するのかというところが、残された大きな課題ですね。技術的な答えは分かっているのですが、一般社会に導入していくところがなかなか難しい。
法の遵守と金融の役割
小野氏
アジア防災センターや国際防災の会議に出ると、日本は建築基準法を遵守することを浸透させていることが凄い、と言われることがあります。フィリピンなどの海外の地震国も基準はしっかり作るのですが、それを守らせることが難しい、という課題があるようですね。
一方で、日本の建設会社や技術者は優秀ですし、基準を遵守することも浸透しているのですが、それが逆に強固なスタンダードになってしまって、状況や文脈に応じた柔軟な対応や、幅のある対応が難しくなっているような感じも持っています。
佐藤
法律やそれを遵守させる行政の仕組みがしっかりしていることで社会全体の安全性レベルは上がることは間違いないですね。しかし、法律は一つの基準であって、本来は、リスクに応じた柔軟な対応や設計をする、といった考え方も重要だと思いますが、基準ありきになってしまって、そういったリスクベースの考え方が日本でなかなか普及しない、ということに対して課題感を感じることはありますね。
牧教授
日本も1995年の阪神・淡路大震災前までは、建築基準法の遵守が十分に浸透していない、という状況がありました。完了検査の実施率は、5割を切っていた。特に関西の実施率が低かったという報告があります。
2000年の建築基準法の改正で中間検査の導入などがあったのですが、一番大きかったのは、建築確認済証や検査済証がないと金融機関がお金を貸してくれなくなったことです。中古市場で流通しなくなってしまうので、建築確認済証・検査済証がないと困るわけですね。それで、完了検査の実施率が大きく改善していった。そこが大変大きかったですね。
小野氏
住宅ローンが組まれている場合は、金融機関が住宅ローンの申込者に対し火災保険の契約を求めたり、保険金請求権に質権を設定することがあります。このように火災保険も間接的に完了検査の実施率に寄与しています。
牧教授
金融や保険による市場規律がガバナンスに間接的に果たした役割は大きいですよね。
佐藤
TdRでは、不動産やインフラ投資・取引におけるデューデリジェンスとして、エンジニアリングレポート(ER)や自然災害PMLの評価を実施しています。近年では再生可能エネルギー向けのデューデリジェンスも増えていますが、その内容や結果次第では取引に大きく影響してきます。第三者の立場からのリスクの「目利き」の重要性がこれからより高まっていくことを実感しています。
第2部:レジリエントな社会の実現に向けた課題
今後に向けた課題
佐藤
第1部では環境変化についていろいろ興味深いお話をお伺いしました。第2部では、それを踏まえて、今後の10年を見据えた課題に目を向けていきたいと思います。
日本の防災や災害マネジメントは非常に高いレベルにあるとのお話しもありました。一方、今後において、取組の強化が必要なこととして、どのようなことが挙げられるでしょうか。
牧教授
やはり水害への対応ですね。水害リスクのコントロールには、土地利用も大きく関係するので、立地適正化計画などで、何とかリスクを減らそうとしていますが、市場原理の中でインセンティブがなかなか働かない。
立地適正化計画は、水害リスクだけでなく、人口減少への対応でもありますが、個人の私権・財産権の制約にもなるので、「ここに住んじゃダメだよ」という規制までに持っていくのは、なかなか難しいですよね。
佐藤
立地適正化計画のベースとなっているコンパクトシティや、コンパクト・プラス・ネットワークといったコンセプトや考え方は、地域住民の皆さまへ浸透してきた感じはありますでしょうか。
牧教授
津波については、特に和歌山県南部では沿岸部から高台に移っていく動きはあります。ただ、現在住んでいる人ではなく、新しく家を購入する方がそうしているという状況です。
水害については、東京も大阪も名古屋も、大河川の氾濫原に街ができていますから、そこからの移転は現実的に難しいですね。立地適正化計画では、土砂災害についてはリスクが高い地域(レッドゾーン)は、居住誘導区域から外すことが明確に定められています。一方、水害については、浸水想定区域に入っているから、というだけでその地域を居住誘導区域から外すことは難しい。
佐藤
欧米のように土地利用と水害リスクの関係が明確になっている訳ではないので、判断や線引きが難しく、そこで止まってしまうということも課題ですね。
牧教授
都市や建築の側からすると、自治体が公表しているハザードマップは避難用の浸水想定で1000年に1回といった最悪想定となっています。しかし、経済活動の観点でも多面的に判断できるように、目的に合わせた水害リスク情報が出てこないと難しいかなと思います。
佐藤
まさにその通りですね。それから、地震は建築基準法や耐震改修促進法などクライテリアが明確で、資金調達や工事中の施設利用などの課題が解決すれば、民間の施設管理者での対応はしやすい。一方で、水害は、河川や堤防を所有する公共とのリスク分担の問題でもあり、さらに、技術や法的にも、土木と建築の両分野に跨るなど、関係者や関係基準が複雑に絡み合うところも難しさの一つと思います。
小野氏
今後の取組強化という観点では、「これが起きると次はこれが起きる」という相互依存性を、デジタルなどを使って把握することに関心を持っています。
災害は非定常で不確実なものですが、社会を支えるインフラが途絶したりすることでどのような影響が波及していくのか。たとえば、道路が陥没したり、インフラが老朽化により損壊したり、といったことが、その後にどう影響していくのか、まで、把握できるようになると、その影響の大きさや蓋然性から、どこを対策すればよいかが、が分かってくる。さらに、AIの活用により、自社の事業活動への将来的な影響度まで把握できるようになるのではないか、と思います。
そして、災害への対策をした場合としなかった場合、についても、将来想定シナリオとして可視化できるようになる。そうすると、企業経営者や施設所有者の意思決定が将来に与える影響も可視化されるようになるかもしれない。複雑な社会の相互依存性がデジタルの力で少しでも可視化できるようになれば、災害の影響把握も進化して、意思決定の高度化にもつながっていくと思います。
佐藤
非常に重要な視点ですね。災害自体は非定常でしょっちゅう起きるわけでもないところが難しいですが、かつてに比べると、観測情報だけでなくリモートセンシングやSNSなどのソーシャルセンサ―も含めて多くの情報が取れる時代になってきています。そして、情報の取得だけでなく処理についてもAIの活用により、より高度かつ即時の利用が可能になりつつあります。
まだ研究途上の技術も多く課題もあるとは思いますが、将来的にそれらの技術利用の巧拙が災害対応や意思決定の質を左右するかもしれない。最後は人間が判断するにしても、有事の際にどのような情報に基づいて最善の判断をしたのか?が問われる時代になるかもしれません。
小野氏
応急対応もそうですが、事前対策というところにも繋がることですよね。訓練も含めて。
デジタル技術と災害対応の標準化
牧教授
今後の10年ということで言うと、デジタル技術は大変進んできて、色々なコンソーシアムができています。ただ、ユーザーに近い領域の検討が弱いというか、「これ何に使うの?」というところが、まだ十分に明確化されていないものが多い。
内閣府の総合防災情報システム(SOBO-WEB)も運用開始されましたが、どうしても被害情報の収集に偏っている印象です。第1部で言い忘れましたが、この10年で一つ大きな進化の一つに、日本版EEI(災害対応基本共有情報)が定義されたことが挙げられます。
災害時には大きく二つの情報システムが利用されます。一つは被害情報の共有や可視化を目的とし、主として災害対策本部で使う情報システム。もう一つは被災者支援で罹災証明発行や被災者台帳管理を目的としたもの。しかし、システムを個別に作っても、災害対応の標準化が進んでいないと、対応が変わるたびにシステムを改修していくことになってしまう。システムありきでなく、「何のためにどう使うのか」という上流工程、ユーザーの目線で技術を上手く使っていくための議論をもっとしていかないといけないと思います。
佐藤
災害対応標準化の重要性の理解は進み、日本版EEIも整備され、だいぶ前には進んでいるけれども、災害対応実務の観点からは、まだ課題が多い、ということですね。
牧教授
ISUTも発災後に各地に展開していますし、SOBO-WEBの導入も進んでいますが、運用面での更なる定着が今後の10年の課題と思います。防災庁の発足により、運用がさらに定着し、被害情報の収集共有だけでなく、効率的な災害対応が促進されることを期待したいと思います。
プロテクションギャップの拡大
佐藤
第一部で、2018年、2019年の保険業界の保険金支払いが2年連続で1兆円を超え、業界として災害リスク低減に真剣に向き合うターニングポイントになった、というお話がありました。また、自然災害に留まらず、国際的にも、プロテクションギャップの拡大に対する議論が高まっていると感じます。
小野さん、BCPや保険など様々に携わられてきた視点から、プロテクションギャップの拡大に対して、どのように向き合っていくべきか、コメントいただけますでしょうか。
小野氏
プロテクションギャップという言葉自体は、流行り言葉のようになっているところもありますね。もちろん、IAIS(保険監督者国際機構)もレポートを出しており、保険業界として取り組むべき課題なのは大前提ではあります。
ギャップの定義ですが、分母と分子があって、分母が実際の損害額、分子が保険でカバーされている額とすると、100%保険が付保されていたらギャップはゼロになります。ただ、分子を分母に近づけることだけが選択肢ではない、ということですね。分母、つまり損害自体を減らすということも選択肢となるわけです。
また、分子である保険もリスクシェアリングの手段の一つですが、100%が常に最適であるとは限らない訳ですね。レジリエントな組織でリスクをコントロールできているのであれば、経済合理性の判断により、30%をリスクファイナンスでカバーできていればよい、という判断もあり得るのだと思います。
また、リスクをゼロにすると事業機会も失われるので、バランスが重要です。ハードだけでなくソフトのBCPも含め、事前対策と有事対応、リスクコントロールとリスクファイナンス、このバランスをどう取るか。仙台防災枠組やG20でも事前対策が強調されていますが、それぞれに応じたリスクと対策の効果を把握し、自律的にリスクを減らす行動につなげることが必要です。そのためには、TdRがやっているようなリスクの適切な把握やアセスメントが重要となりますね。
東京海上ホールディングス 小野氏
佐藤
プロテクションギャップは、海外新興国などを含め、気候変動などによる災害損失の伸びに対して、インフラ整備や土地利用政策や公的セーフティネットが追いつかず、結果として補償されない損失が増えていく、という文脈で使われる言葉ですね。ただ、リスク対応の手段は多様ですので、ギャップという言葉に引き摺られすぎないようにしないといけないですね。
日本は欧米に比べて利益保険の加入率が低いなど、日本固有の課題もあります。ただ、分子を100%にすればよい、という問題では決してない。ギャップというと、ゼロにしなきゃいけないという誤解を招きかねないというのは、その通りだと思いました。
牧教授
日本の場合には、首都直下や南海トラフのような巨大地震では、そもそも、保険の補償だけでは追いつかないですよね。保険・再保険市場だけでなく、キャットボンドなどで資本市場への移転も含めてあらゆる手段を考えていくべき、という議論がありますね。また、首都直下や南海トラフでは、損失規模も大きく、そもそもの分母を減らさないといけません。
小野氏
おっしゃる通りですね。リスク低減と残余のリスクを補償をする保険を代表とするリスクファイナンス。このバランスが重要です。そのためには先ほど述べたようにリスクアセスメントが重要となります。
すこし余談になりますが、カリフォルニアでは山火事による損失が深刻化して、一部の保険会社が撤退する状況になっています。また撤退しないにしてもリスクに応じて保険料が高額になり結果として保険に入りたくても入れない人が出てきます。当局はこの状況を改善すべく様々な手を打っている状況です。リスクの自己負担や市場原理と、社会性を持つ持続的な保険制度の在り方が問われている事例だと思います。
牧教授
文化や制度の違いも大きいですね。洪水で言うと、アメリカは国の洪水保険制度があります。ハリケーン・カトリーナの後に訪れたミシシッピ州で「防潮堤を作らないんですか?」と聞いたら、「いや、そんなことしたら眺めが悪いよ。保険でまた直せばいいんだよ」と地域の方がおっしゃっていました。ハリケーンは避難できますから避難すればいい、家が壊れたら保険で直せばいいと。
一方で、今度はニューオーリンズの人を東京や名古屋のスーパー堤防に連れて行ったら、「日本はすごくいいね、ハード対策がしっかりしている」と言っていました。ハードとソフト、自助と公助、ファイナンスとコントロール、このバランスやミックスについては、地域や国に根差した文化や考え方の違いも影響してくるところだと思います。
テクノロジーへの期待
佐藤
ここまで、これからの10年を見据えた課題についてお伺いしました。その解決に向けて、テクノロジーの進化が果たす役割や期待について、お伺いしたいと思います。牧先生、いかがでしょうか。
牧教授
やはり地震と気候災害の一番の違いは、予測・予知ができるということだと思います。テクノロジーという観点からすると、1週間前からどんどんと時間を遡って、どんどん精度が良くなってこうなりますよということで災害への備えができる。観測手段も増えて解析の技術も進化しているので、技術的に可能になってきています。この点で、テクノロジーが課題解決に果たす役割は大きいのかな、と思います。
意思決定のためには、確率情報も重要です。自分の家を守るという財産保護の観点、避難をして命を守るという人命安全の観点、生活を守るという経済活動維持の観点、それぞれに応じた許容ラインが異なるはずですが、確率的なリスク情報に基づけば、その意思決定も可能になります。
今後は、気候変動の不確実性、2度上昇、4度上昇といった将来の環境変化を考慮したシミュレーションも可能になってきます。「今後この街をどうしていったらいいのか」という合意形成の前提となるシミュレーションもかなり高精度で信頼できる形でできてくると思います。
地震よりも、気象災害の方が、そういった信頼できるデータに基づく街づくりや将来構想、発災前後の情報提供などでテクノロジーが貢献できる余地は大きいと思いますね。
佐藤
発災前のリードタイムという観点ですね。地震も緊急地震速報で数秒前に覚知できますが、特に台風や気象災害のリードタイムは長いので、テクノロジーが貢献できる余地が大きいというお話が一つありました。
日本は、シングルボイス原則(情報発信源を信頼ある機関に一元化すること)に基づき気象庁が予報や予測の中心になっていることは間違いないですが、少しずつ民間開放も進んでいます。またデータのオープン化や可読性が進むことで二次利用やアプリ開発などの市場形成が促進されていくことも期待されます。この辺りは、アメリカなどはさらに進んでいるのですが、いずれにしても、データのオープン化と民間技術の活用が今後の大きなテーマになることは間違いないですね。
リスク評価のところは、本当にご指摘の通りだと思います。リスク評価は、TdRの本業でもありますが、地域全体の集積リスクを把握することと、個別地点のリスクを把握すること、でそれぞれ難しさに違いがあります。また地域間や災害種別間の比較可能性を重視するのか、対策前後の効果測定の説明性を重視するのか、によっても異なります。
特に水災害は、地形や河道、堤防等の固有情報を踏まえた地先の確率リスク情報を算出することがコスト面でも難しい状況となっています。もちろん、国が公表している浸水想定区域図と同じレベルのシミュレーションができれば良いのですが、民間のリスクマネジメントを目的とした場合には、そこまで、コストや情報収集の手間を掛けることが難しい。また、国の浸水想定も、それぞれの河川管理者が管轄する河川や流域をターゲットに個別に解析されていて、日本全体で統一的に比較できるような条件設定になっていない。国交省の多段階浸水想定も主要河川のみが対象となっています。
そういうことで、TdRでは、水災害の専業モデル会社である英国のFathom社(スイス再保険傘下)とパートナー契約を結び、APIでデータを取り入れて確率的にリスク評価できるような体制を構築しています。もちろん、TdRとしての研究や開発も続けており、京都大学防災研究所の先生方とも共同研究などで多数ご一緒させて頂いており、確率モデルの説明性向上にも努めています。
牧教授
日本は中小河川も多くデータ入手も難しいですし、内水氾濫に影響する下水道のデータは、行政しか持っていませんからね。
佐藤
事前のリスク評価ではなくリアルタイム予測の分野になりますが、東京23区を対象とした内水氾濫予測システムのS-uiPS(注2)が公開されていますね。
内水氾濫は、雨の降り方だけでなく、下水道や土地利用など相当に緻密にモデル化しないと正確な評価が難しいとされています。民間のリスクマネジメントで、毎回そのレベルのコストは掛けられないので、結果の説明性と、解析コストのトレードオフは難しい課題ですね。
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注2)早稲田大学・東京大学のチームにより開発された東京23区の浸水を街区レベルで約20分先まで予測するシステム。2022年9月の一般公開が予告されていたが気象業務法との関係などにより、2025年12月時点では限定公開となっている。
小野氏
リアルタイム予測という点では、浸水センサーの情報を取り入れた予測についても期待があります。
牧教授
京都に福知山市というところがあるんですけど、そこでは地域の方が、「これまでの経験からどこから水がつくと地域が危険になるか」ということを知っているんですね。。そこにセンサーを付けて、ピーっと鳴ったら逃げましょうというタイムラインみたいなものを地域レベルで整備しています。
佐藤
福知山市は何回か水害があった地域ですよね。
牧教授
水害常襲地域と言いますね。そういうところはやはり意識も高く、地域の方が一番よく知っていて、自分たちで、とても安価なセンサーなんですけど、自分たちでここに置くと決められました。
水害は、人命安全の観点では逃げることが選択肢となります。そうすると、例えば、建築基準法は人命安全という公共の福祉という観点から、建物安全性を規定することはできるんですが、水害については人命安全の観点で一律に法規制をかけることは難しいんですよね。ですので、自助も重要になってきます。
課題の解決に向けて
佐藤
最後になります。地震は引き続き日本企業でもトップリスクに上がることが多く、企業側でやれることはだいぶやってきています。BCPでも地震シナリオは必ず入っています。一方、ここまでの議論のとおり、風水害は頻度が高く、気候変動でさらに頻発化するリスクでありながら、なかなか対策が進まない、という話がありました。
こちら(図2)は、TdRで、民間領域で水災対策が進まない要因を、議論用に整理をしたものです。現時点で、技術だけでなく、制度設計、市場原理とインセンティブの関係などでも難しい課題があるわけですが、これからを見据えた研究開発や技術開発についてご意見頂けますでしょうか。
なぜ企業の浸水対策が進まないのか?
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リスク認知が進んでいない(分かり難い)
- 洪水・浸水リスクは、リスク源が多様であり、影響範囲や被害形態がイメージし難い
(地震リスクは南海トラフ巨大地震など、イメージしやすい) - 蓋然性の情報が不足している
(地震は、地震動予測地図が存在。水害は多段階浸水想定の整備が始まった段階)
- 洪水・浸水リスクは、リスク源が多様であり、影響範囲や被害形態がイメージし難い
- 具体的な対策目標の設定が難しい
- 浸水被害の程度に応じた対策の標準化が浸透していない
(地震対策は、耐震補強など実績のある明確な対応策が存在) - 敷地が大きい場合の対策箇所が多く優先度付けが難しい。また規模によって民間事業者の対応範囲を超える場合がある
- 浸水想定区域図が人命安全確保目的中心で、とくに大きな想定浸水深が提示される場合に思考停止に陥りやすい
- 浸水被害の程度に応じた対策の標準化が浸透していない
- 投資効果が見えづらい
- 浸水対策へのROI(投資対効果)が不明瞭
- 将来気候、浸水経路や被害形態(物的損害、泥やカビの影響)、運用体制(可搬式防水壁など)等、影響因子が多く、対策効果の不確実性が高い
- マルチステークホルダー連携が必須
- 洪水(河川氾濫)対策は、行政(河川管理者)・自治体・地域などとの調整が前提となる場合がある(流域治水、立地適正化計画など)
- 企業単独では対策が完結しない
(地震対策は建物や設備への直接対応が可能)
- 企業単独では対策が完結しない
- 連携のコストや時間的負担が企業にとってハードルとなる
- 洪水(河川氾濫)対策は、行政(河川管理者)・自治体・地域などとの調整が前提となる場合がある(流域治水、立地適正化計画など)
- 建築と土木分野の分断
- 治水による安全確保が前提で、従来は、建築・都市分野の行政レベルから浸水リスクを考慮する機会が限定的
- 私権制限を伴う建築・土地利用規制の難しさ
- 「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」などを参考にするにしても、水防ライン(浸水深・浸水継続時間)の設定が難しい
- 流域治水など土木・建築・都市等との分野横断の取組の重要性が最近になって認識されつつあるが、民間に浸透していない
- 治水による安全確保が前提で、従来は、建築・都市分野の行政レベルから浸水リスクを考慮する機会が限定的
- 外部不経済(コスト)の内部化の仕組み作りの難しさ
- サステナビリティ情報開示(TCFD、SSBJ、etc.)の考え方や制度の枠組みが整いつつあるが、民間企業への浸透はこれから
- リスクと機会の戦略レベルでの開示と、オペレーショナルレベルの施設リスク管理の活動との連携が難しい
- 経営層の関与(認識)が弱い、組織の壁、などにより、防災対策の重要性が伝わりにくい
- サステナビリティ情報開示(TCFD、SSBJ、etc.)の考え方や制度の枠組みが整いつつあるが、民間企業への浸透はこれから
図2 企業の浸水対策が進まない理由の構造
牧教授
先ほど申し上げた通り、気象災害については、人命安全の観点からは、まず逃げましょうということです。企業としても第一義的には生命の安全確保になると思いますが、そういった規模の水害が発生する蓋然性や確率は必ずしも高くはない。となると、生命の安全を脅かすほどではないが、より発生の頻度が高い事業継続や地域の経済活動に影響を及ぼすレベルの水害の影響をどう考えるか、どう対処するか、ということが大変重要になってくる、ということだと思います。
企業としても対策の必要性については理解されているのだと思いますが、たとえば、この前聞いたのは、雨が降るという予測が出るたびに、吸水性ポリマーを使用した土のう(水のう)をぐるっと囲むそうです。それで、本当に雨が降ったら、吸水して膨らんで浸水は防げるのですが、再利用はできないので、また準備しなけれならないのですが、それに結構なお金がかかってしまう、とおっしゃっていました。
繰り返しになりますが、堤防など人命にかかわる部分は、国が主導できますが、企業の事業継続や収益性に関わるリスクに対して、国が強制力をもって「絶対にやりなさい」ということが難しい。
その点では、個々のお家、個々の建物、個々のビジネスを守るミティゲーション(被害を出さない対策)の一番の推進役はもしかすると保険業界かもしれません。
海外ですと、地震なども含めて、損害保険会社が本業として技術者を中心とする組織を有していて一定のプレゼンスがありますよね。実験施設やラボを持っている保険会社もあります。日本は、行政が高いレベルにありますが、海外だと必ずしもそうでは無かったり、一律の基準が存在しないために、保険業界主導の基準や目線ができたりしている。そして、その目線作りに科学的、技術的根拠を持たせられるように、技術者や研究者が組織的かつ持続的に研究開発を進めている。こういった流れを日本でも作っていただきたいですよね。
佐藤
日本では、阪神大震災以降の危機管理から、2000年代に入って事業継続マネジメントの概念が浸透し、その中で、想定する災害のレベルをどうするか、という考え方も変遷をたどって来たと思います。東日本大震災を経験し、南海トラフの地震や津波でも、規模に大きな幅があることが理解されるようになった。設計エンジニアリングで、L1、L2という考え方がありますが、同じように段階的に災害レベルを考えることが、事業継続やリスクマネジメントの中でも普通になって来た。
そこに強制力のある法律は存在しませんので、TdRとして、個々企業の資産配置・分散状況や事業形態、取引先との関係などの文脈に応じて、想定される災害に対して何を守るべきか、ということをアセスメントして対策の指南を多くの企業に対して実施してきました。
牧先生の仰る通り、水害リスクへの対処も段階的に目的別に考えていく必要があります。特に事業継続や企業経営に関係するレベルは、国主導ではなく民間で考えて行かなければならない。ただ、歴史的に、土地利用と水害リスクが密接に関係してきた欧州と異なり、土木や治水でがっちり守られてきた期間が長すぎて、水害のリスクへの備えや意識が薄かったところに、急に「実はリスクがあるよ。しかもこれからリスクは増えていくよ」と突きつけられちゃった状況ですね。
しかしながら、だからこそ中長期的な目線ももちながら、少しずつ課題を解決していくように、TdRとしてもしっかりと技術開発やソリューション開発を進めて行きたい。もちろん、損害保険会社グループの一員としての、社会的責任ということもありますが、ビジネスに直結する経営課題であるわけですので、目先のことだけでなく、将来の課題についてもしっかりと向き合って、着実に取り組んでいくことを続けていきたいと思います。
東京海上ディーアール 佐藤
さいごに
佐藤
時間もそろそろですので、最後のまとめに入りたいと思います。本日は、多岐にわたり大変貴重なお話しをしていただきました。簡単に解決できないからこそ社会課題と言われるわけですので、こういう立場や業界を越えた横の繋がりや連携が、よりこれから重要になるのかなと思っております。当社・当社グループへの期待など、コメントありましたら、最後にお願いいたします。
牧教授
大学というのは、やはり研究、アカデミックな成果を追い求めているんですけども、我々は防災研究所ですので、その成果が社会に生かされてこそだと思います。
これまでも、色々な分野でTdRさんとご一緒させていただき、レベルの高い成果を一緒に共有できたことは大変良いことであったと思います。
それと、TdRさん含めた東京海上グループへの期待ですが、先ほど申し上げましたように、災害、特に気候関連災害のミティゲーションに対して社会的責任だけでなく、経済インセンティブもあると思います。しかし、短期的には解決しない課題も多いからこそ、課題解決に向けた研究開発にもしっかり目を向けて産業界のリスク低減の技術や仕組み作りをリードしていくような役割を、東京海上グループさんが果たされるといいのではないかなという風に思っております。
佐藤
ありがとうございます。小野さん、いかがでしょうか。
小野氏
保険会社グループということで、保険をどんどん進化させて社会のニーズについていく、あるいは、先取りしていかないといけない、と思っています。
そして、損害保険会社グループこその強みとして、現場での保険金お支払いとか、保険引受や更新、TdRさんでやっているリスクアセスメントやリスクエンジニアリングといった現場感のあるお客様接点で得られる情報やノウハウがとても重要になってくると思います。
そういったアセットを、京大防災研の先生方とも連携して、課題解決に繋がるような深掘りをして、また、それを現場に戻して実装していく、そういった循環があると、社会のレジリエンスによりいっそう貢献できるんじゃないか、と思いますね。
佐藤
大変ありがとうございます。今日は長い間、多岐にわたりコメントや意見をいただきましてありがとうございました。
TdRは、設立以来、リスクコントロール・リスクファイナンスのコアとなるエンジニアリングやモデリングを中心に発展を遂げてきました。危機管理・BCPから気候レジリエンスなど、さらに領域が広がっていく中で、お客様の災害対応を高度化するべく、京大防災研の先生方を中心としたアカデミアの皆さまと連携して参りました。
これからも、過去の実績や京大防災研の先生方との取組の成果も活かしつつ、さらにそれを加速してレジリエントな社会の実現に貢献していきたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
牧教授
ありがとうございました。
小野氏
ありがとうございました。
編集後記
本座談会では、2011年東日本大震災以降の災害マネジメントを巡る環境変化を振り返り、今後10年のレジリエンス向上に向けた課題と方向性について議論しました。
気候変動に伴う水害リスクの増大、復興における「ニューノーマル」の概念、保険や金融の役割、そしてデジタル技術の活用など、多岐にわたるテーマが取り上げられました。
そして、産業や社会の減災防災・ミティゲーションを推進していくリード役として、TdRや東京海上グループへの期待が示され、産学連携での研究開発を通じて、現場の知見とアカデミックな研究を循環させ、社会のレジリエンス向上に貢献していくことの重要性が確認されました。
東京海上ディーアールは、今後も、お客様の信頼を原点におき、安全と安心に関する事業活動・調査研究を通じて、リスク・不確実性に強い社会の発展に貢献してまいります。
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